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父と娘の珍介護道中(日記的エッセイ2010〜2022)  時々、母のこと、故郷のこと、自分のこと EP2

エピソード2
「そのうちより今のうち」〜魚屋さんのおばさんが語る母の話に泣きべそ

2010-11-24

今日は気温が低いという予報だったけど、日中は汗ばむほど暖かかった。
例によって父の療養先へ行き、リハビリの自主トレのお手伝い。
立ち上がりの練習5回と、平行棒歩行をつかまらずに5往復、階段の昇り降り1往復。少しずつ安定しているようだ。

2010-12-03

一日中ヘンなお天気でしたが、今日も今日とて実家方面へ。
かなりの渋滞で、2時間以上かかってしまった。
到着時はすごーく暖かかったので、実家の空気の入れ替えがラク。
もうこの季節の木造の家は本当に寒いので、いつもは凍死しそうになっているけど、今日は窓全開で2時間ほどいても快適、快適。
23度だったのだそう。どうなってんだろ?

ま、おかげで父に頼まれた年賀状の仕事もはかどった。
去年までは、父がひとりで、失敗しぃしぃ、パソコンでやってた。
療養中のことでもあるし、
年賀状は一度お休みにしてもいいんじゃないかな、と、思ったけど、
そうは言わずにおいた。
一度やめてしまうとつながりが断たれちゃうようで、不安だったり、寂しかったりするんだろうなと思って。

いくつかデザインのパターンを作って父とどれにするかの打ち合わせ。
印刷はまた来週です。

2010-12-10

今日は東名がすいていて、ようやくぶっ飛ばして実家に(笑)。
家の主はちょっと留守にしているけれど、
庭の山茶花と千両、万両がきれいな花と実をつけていた。
季節が来れば花を咲かせ、実を結ぶ。
植物が記憶しているサイクル、生命力ってすごいですね。

父は今日は腰の具合が相当悪いようで、
起き上がるときに「痛くて涙が出る」と本当にツラそう。
なので、本日の自主トレはお休みに。
庭の草木と同じように、季節が来たら、あら不思議、
痛みも何もかも治っていたというふうになればいいのになぁ。
とにかくパワーを送り続けることにします。

2010-12-16

父に頼まれた年賀状印刷がようやくフィニッシュ。
今年出す人、出さない人をチェックしてる最中に、
頭がこんがらがって操作を誤ったらしく、
いくつか住所録を削除してしまい、めっちゃ焦りました(笑)。
その修復も完了。ハ~~ッ。

その後父の療養先へ。
いつも必ず行くお茶の時間に食堂に行っているのに、
今日はベッドから立つ気力もなくなるほど腰の痛みが悪化している様子。
ツラそうな顔を見るのがツラかった。

「お正月帰れないかも」なんて、これまで絶対にしなかった弱気な発言までしていたので、
「いやいや、大丈夫だよ」と、実家の動線のことなど、
いろんな「大丈夫なこと」を並べ立ててめいっぱい励ました。

なんと明日が83歳の誕生日。来年は年男ですね。
父は、ザックリな私とまったく違って、気候でもなんでも、
頭で科学的にとらえて理解する人なので、温度計、湿度計をプレゼント。これは珍しく本気で喜んでくれた。早速、「ああ、室温23度、湿度は45%なんだね。まぁまぁいい方でしょう」と言っておりました(笑)。

2010-12-26

腰の調子が悪い父の様子が気になって仕方なかったので、
朝一で東名ぶっ飛ばして見舞いに。
父は椅子に座るのが痛くてツラいらしく、食事をするのも大変そうだ。
でも、あれこれ気晴らしになるような話をしているうちに、少し笑顔が戻ってきた。
お正月は、なんとか無事に楽しく、家でゆっくりしてほしいと願うばかりです。

午後は、同級生の家がやってる魚屋さん(大磯にはまだけっこうあるんです)へ。
うっかり返し忘れていた前回頼んだときの大皿(お刺身を買うとそれに乗せてくれるのです)を返しがてら、お正月のお刺し身を注文。
母と仲良しだったおばさんが、思い出話を懐かしそうにしてくれたもんだから、
急に母恋しさが募り、ちょっと泣きべそをかいてしまった。

母はよく、ばってら(酢〆の鯖で作る押し寿司。上に白くて薄い昆布が乗っている)を作ってくれた。
それがもう抜群に美味しかった。
その作り方の元を、じつはこの魚屋さんのおばさんが教えてくれたことが判明。
おばさん自身も、近所に住む京都出身の方に教わったのだそう。

「お互いに作っては、ああした方がいい、こうした方がいいと、徐々に改良を重ねて、一緒にレシピを完成させたのよ」と。
母自身も食いしん坊でしたが、美味しいものを家族にも食べさせたい一心で、
そうやって一生懸命考えてくれてたんだなと思い、
今さらながらにありがとうの気持ちでいっぱいになった。

お手伝いをしながら自然と覚えた母の味はたくさんあるけど、
ばってらは相当高度なワザ。
大きくなったら教わろうと思ってて、結局、正確なレシピを聞き損ねた。
今日おばさんに聞いた話を元に、
来年は一度、見様見まねで作ってみようと思いました。

当たり前にあるものが、じつは当たり前じゃない。
「そのうちより今のうち」と一青窈さんが歌っていた気がするけど、
本当にそうですね。

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