腸内オデッセイ〜はじめての大腸内視鏡検査と、誕生日
人生で初めて、大腸内視鏡の検査を受けました。
思いのほか大変だったこと、勉強になったこと、自分の中に起こった変化など、備忘録を兼ねて書き残しておきたいと思います。
これから同じ検査を受ける方の参考になることがあれば、うれしいです。
検査を受けたきっかけは、自治体の健康診断。
「要精密検査」とのことで紹介状を書いてもらい、何の予備知識もないまま近所の胃腸科を受診しました。
たまたま人気の病院だったようで、なんと3ヶ月待ちとのこと。
血液検査の結果に異常があったり、自覚症状があったりする場合は、早めてもらえることもあるそうです。
季節が巡り、ようやく検査日が近づいてきて、詳しい説明を聞きにいきます。
看護師さんの話を聞いて、食事制限の内容に少し驚きました。
4日前から繊維質のものや脂っこいもの、乳製品もNGなのだそう。
魚は白身、お肉は脂身の少ないモモやヒレをいただきます。
納豆、玄米、葉物野菜や根菜など、毎日食べているものも控えるべき食材リストに入っていて、ちょっと口さみしい数日間。
バナナ、プリン、くず湯、ウィダーインゼリーなどが心強い味方になってくれました。
(食事制限の内容は、病院によって差があるようです)
検査前日は3食、病院で購入したレトルトの「検査食」をいただきます。
食べやすいよう工夫されていて、味は美味しいのですが、とにかく量が足りなくて、お腹が空きます。
自分が作ったごはんを家族が目の前で食べる様子を見ながら、レトルトのお粥をちびちび啜るのは、ちょっぴり切ない体験でした・・・
当日は、朝から絶食。
2リットルの腸管洗浄液を2時間かけて飲んでいくのですが、これがかなりしんどかったです。
何とか飲み干し、ぐったりと布団に倒れ込みました。
ご飯を食べていないからか、脱水のためかわかりませんが、寒気がしてきたので水分をとり、体を温めるために少しだけ散歩します。
予約時間は夕方。それまでは、許されているノンシュガーの飴をなめたり、甘い香りをつけた紅茶をちびちび飲んだりして飢えをしのぎます。
病院に着いたら、検査着に着替え。
水分を点滴してもらいつつ、横になって順番を待ちます。
どうやら、私の前の方が長引いている様子。
静かな控え室で横たわっていると、途切れ途切れに会話が漏れ聞こえてきます。
「大きなポリープ、3つとりましたからね」
「今日摂っていいのは水分だけ。
明日から重湯や、牛乳にひたした食パンでお腹の様子を見てください。
1週間はウォーキングも、湯船に入るのもだめですよ。
できるだけ静かに過ごしてください」
などと看護師さんが注意事項を読み上げるのを聞いて、ドキドキしてきます。
明日は私の誕生日で、しかも楽しみにしていたロックバンドのライブがあるのです。
スタンディングで、わりと早い番号が当たったので、きっと前方で飛んだり跳ねたり踊ったりしてしまう。
ウォーキングがダメなのに、ロックのライブなんて絶対無理じゃん……
ポリープがあったらどうしよう、と緊張しながら、検査室へ移動。
ロボットみたいな動きをしている私を心配した看護師さんが、
「大丈夫ですからね。何かあったら、我慢しないですぐに教えてくださいね」
とやさしく声をかけてくれます。
準備を整えながら子どもの話など雑談をしてくれて、リラックスさせようとしてくれる思いやりが沁みます。
鎮静剤を入れてもらい、頭がぽーっとしてきたところで先生がやってきて、部屋が暗くなり、検査が始まりました。
「つらくないようにするからね〜」とニコニコ笑いながら、検査を進めていく先生。
目の前にモニターがあり、寝ながらカメラの映像を確認できるレイアウトになっています。
「おおお、最初の関門、S状結腸が長いな」と言われて、心拍数が上がります。
「S字ナントカって、長いと何か問題があるんですか?」
「んー、草食動物はS状結腸が長いよね」と先生。
何となくほっこり……
「ほら、見てごらん、これが小腸の絨毛だよ。ニョロニョロがいっぱいいるみたいだねー」と楽しそうな先生。
「うわあ、こんなにはっきり見えるんですね」
「うん。うちのカメラは性能がいいからね、150倍に拡大できるの」と先生。
自分のお腹の中にニョロニョロの草原みたいな場所があって、日々見えないところで活躍していることも奇跡だし、その様子を撮影してモニターで見せてくれるオリンパスの最先端技術もすごい。
時間をかけて丁寧に見てもらった結果、ポリープも大きな異常もないとの診断に、ほっとひと安心しました。
「思っていたより、全然痛くなかったです」と伝えると、
「痛いと、もう大腸の検査はイヤ!ってなっちゃうでしょ。そうならないよう、ゆっくり、丁寧にやるようにしているの。日本人は大腸癌で亡くなる人が多いから、積極的に検査してほしいと思って」と先生。
この時点で、既に午後8時。
朝から1日、診察や検査で疲れているはずなのに、ニコニコやさしい先生のお顔を見て、3ヶ月待ってもこの病院で検査を受けたいという患者さんが途切れない理由が、わかる気がしました。
鎮静剤の効き目が収まり、ふらつかずに歩けることを確認して、帰宅。
出かける前に自分で作っておいたポトフの、滋味深く美味しかったこと!
好きなものを、制限なく食べられるって幸せだなあ。
検査の順番を待っている3ヶ月間、深刻に思い悩んだわけではありませんが、
「もし病気だったら子どもの世話はどうなるだろう」とか、
「時間が限られているとしたら、本当にやりたいことは何だろう」なんて、ふと考える機会が増えました。
さいわい、腸は元気だということがわかったので、誕生日からはじまる1年は、神さまにもらった時間と思い、今日の自分にできることを精いっぱい、毎日丁寧にやり尽くしていきたいです。
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