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2022年上半期 展覧会まとめ

私の人生は、芸術文化なしにはありえない。

昨年は仕事に全力を尽くしすぎて(それはそれで偉かったけど)芸術文化に触れる時間がだいぶ減ってしまったのが悔しかった。だから今年からは、毎月1回は展覧会へ行き、小説を数冊読み、映画を20〜25本観るというルールを定めた(こういうのは量ではなく質だと分かっているけど、私にはまずこの量が必要だと感じている)。

以下は各月足を運んだ展覧会についてのレポート。

●1月
「奇想のモード 装うことの狂気、またはシュルレアリスム」

@東京都庭園美術館

マルジェラやスキャパレリ、ダリやマン・レイなどの作品が並んでいた。シュルレアリスムについていまいちよく分かっていなかったのだけど、ちょうどこの時期に映画界のシュルレアリストであるルイス・ブニュエルの特集上映があり、あわせてみることで少し理解できた気がする。いや、やっぱり理解というにはまだ足りていない。ただ、この突飛で自由な芸術を心からかっこいいと思った。

●2月
「イスラーム王朝とムスリムの世界」

@東京国立博物館

イスラーム教の経典であるコーランがいくつか展示されていた。アラビア文字なのでまったく読めないのだけど、文字そのものが現代アートとして成り立つほどの美しさ、力強さを持つのだと知る。同時期にムスリム映画祭があった。アルジェリア戦争時を生きる女性を描いた映画『ラシーダ』は、女性たちの連帯が描かれていて、フェミニズム映画としても素晴らしかった。とはいえ戦争の理不尽さにとても心を痛めた。ちょうどこの2月にロシアとウクライナの戦争がはじまってしまった。きっと同じような酷いことがいたるところで起こっているのだろう。大国だからこんなに話題になってるだけで、普段気にかけることのないどこか遠い国では日常茶飯事かもしれない。あまりの事態にしばらく悪夢を見続け、精神的に疲弊した。でもなんで私が疲れたなんて言えるだろう?もっと辛いのは、悪夢のような事態が現実で起こってしまっている当事者たち。

●3月
「フェルメールと17世紀オランダ絵画展」

@東京都美術館

私にとって17世紀美術といえば断然ローマのバロックなのだけど、今回《窓辺で手紙を読む女》の修復版がくるということでオランダ美術と向き合った。なるほど、ローマのバロックに比べてずいぶん質素だ。生活に寄り添っていて、窓から差し込む柔らかい光が美しい。ローマのバロック美術の特徴として挙げられるようなダイナミックさはまるでないけど、日本人の多くがフェルメールに魅了されてきた理由がなんとなく分かる気がした。ちなみに私は《窓辺で手紙を読む女》については修復前派。

●4月
「宝石 地球がうみだすキセキ」

@国立科学博物館

春になって(私は大の春嫌い)自信というものが完全に消え失せていた。心に余裕がなくて死にかけていた。だから4月は少しでも元気になるようなパワフルな展覧会を選んだ。宝石だ。赤、青、緑、透明。ひとえに赤と言っても、血のように赤黒いものからローズのように明るいものもある。様々な色の宝石がこの世には存在する。私はどの色が好きだろう。この展示でとりわけ惹かれたのはどれも水色だった。特にブルー・トパーズやアクアマリン。透明感のある水色だ。私は赤が似合う女になりたいとずっと思ってきて、身につける宝石も赤ばかりだったけど、どうやら目にいれたいのは水色らしい。

●5月
「大英博物館 北斎 —国内の肉筆画の名品とともに—」

@サントリー美術館

6歳から絵を描きはじめた北斎は、(たしか)70歳になってようやく“絵が描けるようになった”と自己評価できるようになり、さらにそこからも成長するだろうと信じた画家だということを知った。私は今年25歳になり、周りがどんどん人生の大きな選択をこのタイミングでしていくなかで、何も変わらずにいる自分に焦っていたけど、北斎のこの芸術人生を知って、まだまだこれからだとかなり楽になれた。でも一番面白く愛おしいエピソードはやっぱり北斎75〜90歳の画号が「画狂老人卍」であったこと。Twitterハンドルネームの先駆けすぎる。

●6月
「ガブリエル・シャネル展」

@三菱一号館美術館

シャネルはそのファッション性の高さだけでなく、社会にもたらした影響(とりわけ女性の社会進出など)の大きさから、いくつもの伝記やドキュメンタリーがつくられてきた。今回の展示は、まずシャネルの作品ありきであって、語り尽くされてきたシャネルの人生については二の次くらいのようだった。シャネルは黒、白、ベージュのほか赤を好んで取り入れた。赤は血の色。からだの内側に流れている色。その赤を表面に持ってこようとした。今回の展示品のなかで最も印象的だったのはこの赤いドレス。「色彩が主導権を握る」とエリック・ロメールが言ったものだけど、まさにそれを再確認した。

https://highsnobiety.jp/p/chanel-manifeste-de-mode/

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