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《対談レポ》NY在住日本人僧侶と保育士が考える、保育者が学ぶべき平和のエッセンス

こんにちは。

元保育園施設長の御林友希(みはやしゆき)です。保育業界に輝き!をという想いのもと、日々発信をしております。

10月13日にInstragramでライブトークをさせていただいたNY在住の日本人僧侶である中垣顕實(なかがきけんじつ)さん。業界は全く違うのですが、”平和”という共通テーマで、今回、対談させていただきました。

お聞かせいただいた”平和”にこめられたメッセージが、あまりにも考え深かったので、ぜひ文字としても、皆さんにもっとお伝えできればと思い、noteを書かせていただいております。(✳︎動画は文章最後にリンクあります)

ちょっと本題に入る前に、保育業界を輝かせるために、私がなぜLIVEトークや日々発信を始めたのか?ということを、まずもってお伝えしたいと思っております。

■意外性→創造性

平和対談として、僧侶である中垣さんとライブトークをさせていただいた時、正直、お坊さんと保育って、え?って繋がるの?そう思われた方も多いんじゃないかなと思います。職業が全然違いますが、今回は、平和という共通テーマで深めさせていただきました。自分が身を置いた経験のある”保育業界”は、正直にお話しすると、まだまだ”意外性”が足りないと思うのです。

意外性というのは、保育の枠組みを飛び越えるということ。保育の教科書に載っていないことこそを、自ら学び掴みにいき、自分ごととして実践に落とす。外の世界から保育を眺めることで、今ある素敵な価値を発見できたり、新しい価値をもっと創り出せたり・・・この過程に、創造性というものが生まれてくると思うのです。

そんなきっかけになればと思って、日々発信を始めています。

■学び続ける保育者

先生が先生ではない。ということを先日のnote記事でも書かせていただきました。
保育士は、子どもたちに”教える”職業でしょうか。私の答えはnoです。保育者も子どもも対等だし、むしろ、子どもから教わることが多い職業じゃないかと思っています。
学びの機会を提供する職業と言えるのであれば、やっぱり保育者自身がそれ以上に、学び続ける必要があると思います。 
そして、本当のプロは外にいる...その感覚ってすごく重要。
子供たちに、”本物”に触れてもらうために、教育者である以上、その道のプロから学ぶというスタンスが少なからず必要だと感じます。
私も含め、保育士という資格を持ち続ける以上、進化していきたいし、その学びの機会の一助となれば、それ以上嬉しいことはないです。

■世界の共通目標を保育の世界にも〜SDGsの視点から

貧困、教育、差別、環境など2030年までに世界的に解決していこうというターゲットとして、SDGs(持続可能な開発目標)という17項目が掲げられています。日本でもスーツにバッジをつけている方を見たり、最近では新聞やニュースに取り上げられるようになってきましたよね。保育業界ではどうでしょうか。まだまだこのターゲットを保育者が学ぶ機会があるかと言ったら少ない気もしています。保育には全く関係のないことでしょうか。私はそうは思いません。SDGsの目標が達成するためのたった一つの解決は、教育であるとも言われてたりします。世界視点で教育者が学び、子ども達に伝える。保育園、幼稚園は、教育の一番最初の入り口として、その使命がある、とみんなで思っていきたいです。今回は、平和ということで、SDGs16番を踏まえて、平和ってなんだろう?を私たちからちゃんと言葉にして、考えていきます。


■NY在住、日本人のフリーランス僧侶、中垣さんのご紹介と出会い。

中垣顕實(なかがき・けんじつ)さん(愛称:TKさん)。ニューヨーク在住の浄土真宗(西本願寺)僧侶。ニューヨーク平和PRFファンデーション(Heiwa Peace and Reconciliation Foundation of New York Ltd.) の創始者、会長を務める。現在、ひろしま平和大使、長崎平和特派員、ニューヨーク仏教連盟前会長(現在は副会長)、NYインターフェイス・センター名誉理事(前副会長)、ニューヨーク市警察コミュニティ・リエーゾンとして活動。ニューヨーク本願寺仏教会前住職、NY日系人会前理事などを務めた。          ◎著書:マンハッタン坊主つれづれ日記ニュ-ヨ-ク坊主、インドを歩く 卍とハーケンクロイツ―卍に隠された十字架と聖徳の光 (日本語版)(英語版)

中垣さん(TKさん)とは、私が9年前NYへ留学させていただいた時に出会わせていただきました。私の留学理由は、あるNPO団体でどうしても働いてみたい!と思ったからでした。当時、NYの道路がゴミで溢れていた中、ゴミ拾いを始めた日本人女性、日野紀子さん(という方がいて、その方が立ち上げたNPO(NY de Volunteer)です。
(↑ご紹介させていただいた日野紀子さんもぜひご紹介させていただきたいので、ぜひこちらのyahoo!記事もご覧くださいませ!

NY de Volunteerが運営をしていた”9.11の同時多発テロの祈祷式典(灯籠流し)”でありがたくも運営を任せていただき、そこでご祈祷を先導されていらっしゃったのが中垣さんでした。もう9年前ですが、式典ではいろんな宗教の方が集まり、灯籠を流し、平和を祈る姿には、心が震えたことを今でも覚えています。

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■違うが当たり前

プロフィールで気になったのは、インターフェイスっていう言葉。interfaceは、コンピュータの世界でよく使われたりするらしいが”異質なものの接点、接続部分”という意味だが、こちらの単語ではなく、interfaithと書いて、”異宗教間の”という意味。仏教を飛び越えて、多様な宗教で集まり、共通のキーワードで対話していくという言葉。人種のサラダボールと言われる、NYならではですよね。中垣さん曰く、日本では珍しく思うかもしれないが、NYではこれが”違うのが当たり前”。その”違い”を理解し、受け入れた上で、対話していくのが重要といいます。日本の仏教も宗派がいろいろありますが、宗派が違う同士一緒に集まることって珍しい気がします。NYでは、人種を超えて対話するということが当然とされているのですね。interfaithの集まりでもカルチャーや宗教の考え方が違えば、それぞれのスタンスも全然違うと言います。だからこそ、お互いの共通項を見出して対話する(Interfaithでは、社会問題などを共通テーマとする)ということで、理解を深め合っているそう。「違った意見が出た時はどうするの?」という私の疑問には、まずは、正しさを決めることなく、そのまま受容する。違いを違いと認めあうことが大切。そこから、解決方法を一緒に導き出す・・・というプロセスがとても大事、と語ってくださいました。

■平和って?(フォロワーさん事前インタビュー)

視聴者さんからの事前にご意見をいただき、”平和って何?”というお考えを集めさせていただきました。

30代女性の方からは、言葉にすると意外と難しい!というご意見もありました。本当そうですよね。イメージはあっても言語化するって、アウトプットの機会がないとできなかったりします。正解はないからこそ、自分自身の意見をアウトプットしてみること、めちゃ大事だと最近感じてます。

いただいたご意見を下記ご紹介。

①違いを否定せず、リスペクトしてうまく共存すること
②思いやりと感謝が心にある状態
③感情や出来事に振り回されず、生きられること

どれも深い言葉ですよね。子どもたちにも事前にインタビューさせていただきました。
①4歳児:わかんない〜笑(息子)
②6歳児:戦争しないこと。
③小学校2年生:助け合うこと、いじわるしない
④小学校2年生:川が茶色くなくてゴミを捨てない
⑤小学校4年生:何事もなく、幸だって思えること

年長さん(5歳、6歳)くらいから平和という言葉とイメージが一致してくるのかな・・・と思ったりしました。もし保育士の方で子ども達に聞いてみたよ、という方がいらっしゃったら教えていただきたいです。小学生の意見もなるほどと思いました。”地球環境をよりよくする”という視座の高さもすごい!ちなみに、私がノートに書いてみた”平和って?”は、”自分自身の思いやりと、相手への思いやり”でした。皆さんはいかがですか?

中垣さんが言います。日本は、世界的な統計としても平和だと言える国。紛争下にいる国の子ども達に同じ質問をしたら「ご飯を食べること」「家があること」という意見も出てくるだろう、と。

■中垣さんが伝える”平和”の真意

平和って?の中垣さんのご意見を伺いました。言語学を専攻されていた中垣さんは、まずは、言葉の本質をお伝えしてくださいました。平和の”平”は平等という意味。いただいた命の価値は、大人も子どもも、人種も文化も関係なく、生きとしいけるもの全部変わらないということ。

そして、平和の”和”は、”口”という文字と、”のぎへん(禾)”が入っています。和は、本来”口”で対話をすることが基本となっている。対話することで、禾(植物)が育っていく=上に向かって伸びていく・・・という意味がそもそもに入っていると言います。

私が、和というと、日本は、周りと合わせる、空気を和ませる、空気を読むみたいな雰囲気も見受けられるような気がします。空気を読むことで、自分の意見を言いづらい・・・いう風土もありそうですね・・とお伝えしたところ、本来”口で語る”ことが和の意味。議論する、対話してこそ、お互いの理解が深まると。

■和の心は、7世紀から!

「和を以て貴しとなす」

この言葉を聞いたこともあるという方もいらっしゃると思います。

和を何より大事にしなさい。というこの言葉。先ほど”和”の言葉の意味を書きましたが、”言葉にする。対話する”ことから始まる調”和”、平”和”という意味ですね。

この言葉は、7世紀に、かの有名な聖徳太子が制定された「十七条憲法」の第一条として書かれている文章なんですって!平和の”和”という言葉が、日本で一番最初の憲法と言われてる十七条憲法で、一番最初に書かれている。これって、すごくないですか・・!日本にはその和の心や魂が伝えられ、備わってきたんです。

■「和を以て貴しとなす」の続きがあった!

私は、これも初めて知ったのですが、以和為貴(和を以て貴しとなす)・・・の対句があるんです。

無忤為宗(さからうことなきを宗となす)

無忤為宗というのは、シンプルに言えば、「非暴力(暴力なき)が大事です」ということ。忤(さからう)=暴力、武力、傷つける、という意味があります。

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ですので、”さからうことなき”ということは、武器をを捨てましょう、ということ。”他の方から何か言われて、物申さない。ただただ言われたままに従う”という意味ではないとおっしゃいます。武器とは、いわゆる戦闘で使うような銃やナイフだけではない。相手を傷つける言葉も心もその武器の一つ。最近ではSNSなどでアウトプットができるようになったとは言え、心ない言葉で相手を傷つけてしまうことも目に余るようなりました。もう一度、”非暴力=武器を持たない”意味を立ち止まって考えたいものです。

中垣さんはこう言います。

「力づくでは、平和は生まれません。平和のために、闘うこともあってはいけません。
そして、恨みを恨みではらさない。
これが仏教の教えです」

■和=空気を読むこと?

日本は、和を大事にする風潮がある。

和というと、中には、”話を乱さないために空気を読むこと”、”周りと合わせて、でしゃばらない”というイメージもある人もいらっしゃるのでは?と質問させていただきました。

これは、間違った解釈だと言われます。

本来の、和の意味は、先ほどもお伝えしたように、”口”=話すこと、から始まっている。空気を読んで、己を押し隠すことではない。

相手を思いやることと、空気を読むことは違うと言います。海外では、自分の意見を伝えてなんぼの世界。

”思いやりの心を持って、自分の意見を伝えることを恐れず、話し合い、そこから何ができるかを導き出していく”

これが、本当の和。7世紀から受け継がれてきたこの心構えを誇りに思い、行動にうつしていきたいものです。

■平和ボケで止めておかず発信者になろう!

日本は、平和ボケという言葉もある。(もちろん、日々心が痛む悲しいニュースや事件もあり、平和と一概には言えない生きにくい世の中という側面もあることを理解した上でお話いたします。)

その”平和ボケ”と自分たちのことを言うくらいなら、今の時代SNSもあることだし、日本から、”平和”を伝えて、どうやったら平和を築いて行けるかを、実際に世界へ向けてアクションしていくとどうだろう?とおっしゃっていました。そのためにも虫の目鳥の目のように、日本という島国を、もっと世界レベルで見てみようという。ヒロシマ、ナガサキの原爆も、海外から見たら、”日本”という国が、唯一の被爆国と見ている。遠くの歴史のこと、遠くの土地のことではなく、世界レベルで見たときに、いかにその出来事も自分ごとにするか、が重要ではないか、と。

世界には6人に1人が紛争化にいるとの統計もあります。もし、平和が当たり前という感覚を持っているのであれば、外に出ていろんな世界を見るべき。外に出て、実情を自ら知っていくことが、平和への気づきの第一歩。

「日本がリードできることはたくさんある」

NYで、日々いろんな宗教、人種、カルチャーと接していらっしゃる中垣さんだからこそ説得力がある言葉でしたので、ご紹介させていただきます。

■保育における平和の第一歩とは?

では、保育において、平和を伝えるとしたら、その第一歩とはなんでしょうか?中垣さんは言います。子どもたちにとって、仲良くすることが平和と考えるのであれば、まず第一歩として、

\挨拶から始めよう!/

この挨拶。先ほどお伝えした平和の”和”ともリンクしているんです。口で伝える最初の言葉だからです。

どんな人にも、100%の笑顔で挨拶をする。例え、相手の挨拶が返ってこなくても、それはそれでいいんです。気にしないこと。give&takeじゃなく、自らgiveをし続けること、takeは求めない。このスタンスが大事。仲良くすると言っても、みんなが仲良しなんて難しい。誰だって、嫌いな人、苦手な人ってもいると思います。それは、きっと子どもも大人もおんなじで。嫌いな人を無理やり好きになろうってのも難しい。でも、苦手な人ほど、挨拶を自ら”こんにちは!”と声かけしてみよう!

10回くらい挨拶してると、そのうち1回くらいは返事してくれるようになって、いつの間にか心の距離も縮まっていることも。

誰に対しても、自ら心を開く。ここから始めるということなんですね。

■最後に・・・愛を伝える一番大事なもの。

実は、Instagramライブ後に中垣さんから教えていただいたお話がすごく心を打たれたので、こちらもご紹介。

中垣さんが通われた学校で昔、このような教えがあったそうです。
赤ちゃんの目の前に、母親の像をおき、見てもらう。その母親の体の一部を一つずつ消していくというもの(実験)らしいのですが、赤ちゃんが、母の体の部位を削られて泣いたところはどこだったと思いますか?

それは、目だったんです。

子ども達が愛を感じる最も大事なのところは、目。

つまり眼差しだ、ということを伝えられてました。

今、保育園でもコロナ禍で、マスクをしていて保育をしているところが多く、愛情表現や表情をどう伝えていくべきか、という課題が上がってますよね。もちろん、口元の笑顔も重要ですが、この眼差しという言葉を聞いて、まずは、目から120%の愛を語る、ということをプロとして、心がけていきたいですよね。

この対話を通じて、少しでも気づきになることがあればいいなと思います。

中垣さん✖️御林友希の平和対談動画はこちら(約1時間)

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皆様、いかがでしたでしょうか。ここまで熟読いただいた方、本当にありがとうございます。

中垣さんとの対談で、私自身、保育へ活かせる知恵だけでなく、日々の生きる姿勢が変わった、そんな時間でした。

もしここまでご覧になっていただいた方で、ご感想もいただける方がいらっしゃいましたら嬉しいです。

ご感想は、Instagramもしくは、LINEでお送りいただくことができますので、もしよかったら、よろしくお願いいたします。

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