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世界って、思っているより単純で、だから複雑にできている

人間は神様じゃない。
だから「1から100まで全部想定できる権力者」なんてどこにもいなくて、
一般市民と同じくらいの能力の人たちが知恵を出し合って設計して、ミスだらけだったりする。

スマホゲームと一緒で、やりこんでいる人がいればいるほど、不具合が見つかる。
だから定期的にメンテナンスをかけてアップデートしていく必要がある。
ゲームやシステムと一緒で、社会にもデバッグが要るんだ。


ハンロンの剃刀

人はしばしば、愚かさからくる事象に悪意を見いだす。これをハンロンの剃刀というらしい。

たとえば、「新型コロナワクチンは人類削減のための陰謀だ!」ってやつ。

(いや、ワクチン開発者が愚かといいたいわけじゃないけど)他のワクチンと比較して副反応が大きい新型コロナワクチンの接種には、考えることが多いと思う。
「自分の年代なら打たなくても重症化率に有意性は出ないのでは」とか「副反応が出た場合の有給消化日数」「mRNAってなに?」とか。

それを「誰かが人類を減らすために、悪意をもって新型コロナワクチンを開発した」と認識すれば、脳の判断リソースを削減できるのだ。「じゃあ新型コロナワクチンに関する情報は、この認識を補強するものだけを選べばいいんだ。それ以外のむずかしそうな情報は全部無視しよう」と行動の方針が決められる。
たぶん、人間がまだ動物だったころは、うだうだ迷っているよりもはっきり方向を決められた方が生存率が高かったんだと思う。

「ハンロンの剃刀」はもともと脳のリソース削減のために備わっているものだから当たり前なんだけど、精神科患者はこれを多用してる人がけっこういる。
普通の人より脳が疲弊しているから、ものごとの多面性とか、より判断できないんだろう。

私が陰謀論を脱したのは

恥を承知で言うけど、私も20歳くらいのとき、陰謀論にハマってた。
私には一生かかってもアクセスできない情報があって、
それを全部知ってる人たちが、世界の裏側で暗躍してると思ってた。

私もまだ30年くらいしか生きてないから大したことは知らないけど、
たぶん、人間の集団って当時の私が思うより、一枚岩じゃないと思う。
その「一枚岩じゃない組織」を統率する人がいたとして、そんなに完璧に制御できるわけない。
それを理解してから、私は陰謀論を追うのをやめた。

社会人になったのが大きかった。
同じ会社に勤めていても、考え方はひとりひとり違って、立場や経験によって同じ事象への判断も対応方法も変わる。
隣の部署の気難しそうな部長が、トラブル発生時にいちばん頼れる存在になったり、
小うるさい先輩がなんで厳しいのか、過去の案件の記録を見て知ったり。

人間の行動にはかならず裏側があって、
そしてそんな人がたくさん集まって、ひとつの組織をまわしている。

そんな組織も、外から見たらただの「株式会社○○」でしかない。
社会人になって組織に属して、その事実を実感したら、陰謀論を脱することができた。

簡単で複雑な社会を、よりよくするために

「製薬会社」「圧力団体」「利権」なんて、ひとことでまとめられるひとたちにも
分解していけばたくさんの人たちがいて、いろんな考えが集まってできている。
たったひとつの組織の、これまたただひとつの構成要素でしかない自分の感じる不平不満なんて、自分が発信しないと誰も汲み取ってくれない。みんな自分の抱えている領域のことでいっぱいいっぱいなんだ。私のように。

誰も悪意をもって、私を傷つけようとなんてしていない。
ただほんのちょっと最初の想定とはずれたところに私がいたから、ちょうど私にだけ不利益がきてしまっただけなんだ。
だから「改善して」「私はここにいる、ちょうど不利益をこうむっている」と発信して、
ここでエラーが起きていますよ、と伝えることが必要だ。

人間はすぐに判断を誤る。私がすぐに何をしようとしたか忘れてしまうのと一緒。
誰も悪意などない。ただ考慮不足だっただけなのだ。

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