見出し画像

PMがリサーチャーと協業し、UXリサーチから得た学びをサービスの資産にするまで

この記事は、プロダクトマネージャー Advent Calendar 2023 の22日目の記事です。21日目の記事は、STORES株式会社・御守さんの『プロダクト開発における「エンパイアステートビル問題」』でした。

今年の8月、SUZURIは、社内のリサーチ活用文化の醸成を目的として発足した「社外顧問とのリサーチ協業」プロジェクト (以下、リサーチ協業)のモデルケースに選ばれました。そしてつい先日、ようやくこのプロジェクトが一段落つきました。

▼プロジェクトの概要は、一緒に取り組んだリサーチャー視点のこちらの記事をご覧ください🙆

この記事では、リサーチ協業を通してSUZURIがどのような成果を得たかの振り返りと、今後の展望について書いていきたいと思います。


前提:リサーチにおけるSUZURIの課題

リサーチにおいて、SUZURIは以下の2つの課題を抱えていました。:

  1. 施策が立案・遂行される際、仮説設計において、十分な課題抽出のための調査がされないまま施策が進むことがある

  2. UXリサーチの必要性は分かっていても、「どれくらいコストを割くべきか?」「どの調査手法を取ればよいのか?」が判断がしづらい

    • その結果、(本来必要だった)リサーチをスキップすることで、仮説の精度が低い施策にコストをかけたり、ニーズの特定などについて余計に時間がかかってしまったりすることがある。

もちろん、SUZURIで過去にユーザーの方々にインタビューにご協力いただいたり、アンケート調査を実施したことは何度もあります。

しかし、問題の本質は、リサーチをするかしないかがメンバーのリテラシーに左右されたり、調査結果からわかったことを事業部全体の資産にできていないということでした。

今回のリサーチ協業を通して達成したかったこと

そうした状況を踏まえ、今回のリサーチ協業では、リサーチャーたちと相談の上、年内までに以下の状況になるということをゴールに設定しました。:

1. UXリサーチを通して、ターゲットユーザーの解像度を上げられている

before
・ターゲット層について、インサイトをわかっているつもりになっている
・限定されたメンバーのみが、リサーチ結果を把握している

after
・UXリサーチ結果に基づいた最新のターゲット層のインサイトが明確に定義されている
・リサーチに携わったメンバー以外も、リサーチ結果を資産として使えるようになっている

2. 施策の進行において、チームの担当者が適切にリサーチを活用できる仕組みを作る

before
・リサーチを必要とする担当者が、UXリサーチの必要性や、適切なリサーチ手法を判断しづらい
・実施したリサーチ結果を、施策に活かしきれていない
・全社の各事業部にて、それぞれが独自の手法やフォーマットを使ってリサーチを実施しているため効率が悪い

after
・担当者が、自身が推進する施策やプロジェクトにおいて、UXリサーチの必要性と適切な手法を判断しやすい状態にする
・実施したリサーチ結果を、施策に活かせる状態にする
・全社共通のリサーチノウハウ集と手法ごとのテンプレートを作成し、2024年以降に展開できる状態にする

実際にどのように進めたのか

まず、SUZURI側のメイン担当として、自分が

  • 今回のリサーチ協業におけるSUZURI側のゴール設定(前述のもの)

  • SUZURI事業部の中のどのチームでやるか

などの設計を行いました。

こんな感じ

このプロジェクトが始動した当時、注力したいユーザー層の解像度を上げる必要があったのが、クリエイターの方々向けの施策を行うチーム(以下、クリエイター支援チーム)でした。

そうした事情を踏まえ、クリエイター支援チームの担当者2名(PO / ディレクター1名ずつ)を、実際のリサーチの実行者としてアサインしました。

自分ではなく担当チームのメンバーを実行者にアサインした理由としては、2人がUXリサーチの経験があまりなかったことから、今回の協業を通じてしっかりと経験を積んでもらい、プロジェクト終了後も自分たちでリサーチができる体制を作ることが目的でした。

そんなわけで、SUZURIとしてどうしたいかなどの設計や、本プロジェクトにおけるSUZURI側の責任者は自分、それをもとにした調査計画の設計やリサーチ結果等のドキュメント整備はリサーチャー、ユーザーへの連絡や実際にインタビューをするのはチーム担当者、という棲み分けをしながら進めていきました。

結果どうなったのか

1.ターゲット層の属性を言語化・可視化したドキュメントが完成し、事業部の共有資産となった🎉

インタビューやアンケート調査を踏まえ、ターゲット層の属性を4つのセグメントに分けた上で、達成したいゴールや特徴、SUZURIに期待していることをまとめたドキュメントが完成しました。
※関係者が集まって話した内容を、リサーチャーが以下のように分かりやすく形に落とし込んでくれました。

セグメント別の属性やニーズが言語化されたことで顧客の解像度が上がり、かつこのドキュメントは今後事業部内でも展開できる共有資産となりました。

セグメントごとのペルソナ像の一例

一方、ただドキュメントを作っただけで、誰にも見られなかったら意味がないので、全体にも周知を行いました。

Slackでシェアするのはもちろん、オフィスを最大限活用し、現在はこのように皆が通る場所にプリントアウトして貼り付けています。
何かとユーザーについて語るタイミングがあったら、一旦これを見ながら話す、という習慣を作ることで浸透を図っています(現在進行中)。

こんな感じで貼っています
部長、マネージャー、2年目の後輩が、
あの人はここのセグメントかも?などワイワイ話している様子

2. 全社共通のリサーチノウハウ集「Research Portal」が完成し、誰もがリサーチの解像度を上げられる状態になった🎉

これは正直、自分はレビューするくらいしか関わっていないのですが、リサーチャーのひとり・まあやさん(@uzuranotamago)が、全社で活用できる「Research Portal」という最高のページを作ってくれました。
これについては、別途詳しいnoteがあるので、ぜひ以下の記事を読んでみてください。

2024年にやっていきたいこと

調査結果でまとめた概念を事業部内の共通言語にする

「機能改善は、◯◯層の方々に刺さるものを優先していくのが良さそうだね」「こういう取り組みは、△△層の方達と一緒にやっていきたいね」といった会話が当たり前に発生する状態にして初めて、今回のリサーチ結果が「資産」になったと言える、と考えています。

「なんかすごいドキュメントを作って満足」にならないために、とにかくあらゆるところで使い倒していくことで、事業部内に浸透させていく予定です。

Research Portalを活用し、SUZURI事業部だけでリサーチを敢行できる状態にする

リサーチャーがいないとリサーチが進められない、という状況にならないために、前述のResearch Portalを活用し、SUZURI事業部のメンバー主導でリサーチを進められるようにしたいと思っています。

とはいえ、いきなり全員がドキュメントを見るだけでできるようにはならないと思うので、今回のリサーチ協業に関わったメンバーがフォローしつつ、ステップごとに分けて徐々に仕組み化していくことが目標です。

広げ方のイメージ 🚀
STEP1:(必要だと思ったタイミングで)まずはPMが実際に使ってみる
STEP2:施策立案のフローに組み込み、リサーチの必要性を検討できる文化を醸成する
STEP3:PM以外のパートナーにも展開する

さいごに

今回の取り組みは、まあや(@uzuranotamago10)さん、11月末にペパボを卒業してしまいましたが、最後の最後まで一緒に走ってくれたうえだり(@rimmmonga)さん、そして社外顧問として非常に的確なフィードバックを定期的にくださったべぢまき(@vegemaki)さんという素晴らしいリサーチャーの方々と、SUZURIの人間たちが一緒に成功させたプロジェクトでした。

リサーチ文化を醸成したいリサーチャーの方や、逆にどのように進めていけばいいのか気になるPMの方々にとって、少しでも参考になれば幸いです。

SUZURIではデザイナー・エンジニア共に積極採用中です!!!

カジュアル面談も大歓迎なので、気になる方はお気軽に私までお声がけください!(X:@_mmakiyama


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?