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コンフロンテーション・モデル

コンフロンテーション(Confrontation)という言葉はあまり聞き慣れないかと思う。意味合いとしては「対立する」とか「直面する」とかです。私は「相手と対峙する」という意味合いで使っている。今日はこのコンフロンテーション・モデルについて解説していきたいと思う。

私は普段、経営コンサルとして、経営陣・管理者の行動を変えることで、メンバーの行動が変わり、成果に繋げる(売上向上、コスト削減等)というプロジェクトをしている(下図参照)。

我々の仕事

そのプロジェクトの中で、経営陣や管理者の行動が変わらない時がたまにある。①そもそも行動を起こそうとしない、②約束事を守らない、③行動が不十分であるなど。そういう時に使う手法がこの”コンフロンテーション・モデル”である。

コンフロンテーション・モデルとは?

目的は経営陣・管理者の行動・認識を変えて、組織の行動力を引き出し、成果に繋げることであり、そのために様々なアプローチの一つで、”ここぞ”という時に使う手法である。

具体的には、相手がある現象に対して”赤”だと思っているのに対して、「それは間違っています。”青”と捉えるべきです」という主張をし、目の前にある現象に対する認識を変えて、行動を変えてもらうこと(下図参照)。

コンフロンテーション・モデル

コンフロンテーションが機能するメカニズム

皆さん、ジョハリの窓って聞いたことありますか(下図参照)? 自分自身について、自己と他人が知っている領域・知らない領域を4象限に分けたもの。具体的には、①自己も他人も知っている領域(明るい窓)、②自分は知っているけど他人は知らない領域(秘密の窓)、③他人は知っているけど自分は知らない領域(盲点の窓)、④お互い知らない領域(未知の領域)。

ジョハリの窓①

一般的には自分自身について、「明るい窓」の領域を広げていくことがコミュニケーションの円滑さに繋がると言われている。

で、どう広げていくかだけど大きく3つ。①自己を開示してもらう(傾聴の姿勢とか、話しやすい環境づくりを含めて)、②フィードバックをする(良いことも改善点も含めて)、③相手も自分も知らなかった新たな発見が起きる(経験したことがないことを一緒にやる等)。特に②がコンフロンテーションに該当する。

ジョハリの窓

コンフロンテーションのやり方

では、どうやっていくのか? 大きく5つステップで進めていく。

①事実を集める:議論に勝てる事実を徹底的に集める。勝負処なので事実集めは用意周到に。

②ロジックを組み立てる:議論に勝てるロジックを組み立てる。勝負処なのでロジックは正しく。

③自己開示を促す質問をする:集めてきた事実に基づき、相手の意見を聞く質問をする。具体的にはどういう現象が起きているのか、それに対してどう思うのか、その原因についてどう思うのかを問う。そうすれば、相手がこの現象に対してどういう立ち位置で、どういう認識なのかが分かるので。

刺す前の質問

④刺す質問をする:「なぜ〇〇なんですか?」とか「誰が本来やるべきことですか?」等、グサッとくることを問う(下図参照)。もちろん、相手を好き・嫌いという感情ではなく、この課題を絶対解決すべきだ、そのためにはこの人が行動を変えないいけないという「情熱」と「本気度」を備えながら、刺す質問をする。

刺す質問

⑤主張する:刺す質問をするだけで効果的な場合もあるが、最後はきちんと主張をする。我々はこう思う。なぜならば~~と。これをきちんと論理立てて、事実に基づき主張をする。その上で、相手の行動の確約を取っていく。

主張する

具体的な事例

これは過去に実際にあった事例。会議で決まった重要な取組みを主体性がなくメンバーに伝えている係長がいて、組織全体にも、メンバーにとっても悪影響を及ぼしていた。そして、それを放置している課長にコンフロンテーションをしたもの(下図参照)。

「なぜそうなのか?」「誰が本来やるべきことなのか?」というちょっとグサッとくる刺す質問をしているのが分かると思う。

コンフロンテーション②

総括

今回は相手がどうしても動かない時に使うコンフロンテーション・モデルを説明した。言うべきことだけどダイレクトに言うのは正直辛い。でも、相手の行動が変わるだけで大きく組織が変わる局面というのは確実にあり、その大義を見据えて、情熱と本気度を持って、相手と対峙する。

但し、この手法は諸刃の剣になりかねない。中途半端な気持ちや事実や論理では相手を刺しにいってはいけない。刺す時は刺される覚悟を持って臨むこと。

私はこの方法を活用し、数多くの経営陣・管理者の変化点を生み出してきた。経営陣・管理者にとっては、「なんだ、この若造が」と思っていたと思うが、この対峙をきっかけに大きく変わり、組織が上手く転がり始めた。是非、”ここぞ”という時は覚悟を持って、試してもらいたい。

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