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未来を見立てる補助線①

未来を見立てる補助線というテーマで、2回に分けて共有したいと思う。多くの企業で、中期経営計画を立てることが多いけども、その時の一つの手法として、バックキャスティングがある(下図参照)。具体的には、10年後や20年後の未来像を描いた上で、3年後や5年後の目指す姿を策定し、基本戦略や機能戦略に落とし、活動計画への繋げていく手法である。

バックキャスティング

例えば、以前ソフトバンクが30年ビジョンというのを発表したが、この当時は2040年の未来を予測していた(下図参照)。ちなみに、ソフトバンクでは、未来を描くためには過去の歴史も知る必要があるとのことで、過去の振返りもされたとのことである。

ソフトバンクの30年ビジョン

未来の見立て方とは?

未来の見立て方には色んな手法があると思うが、私のやり方は、①テクノロジー/概念の進展仮説②社会変化の仮説を掛け合わせて、未来像を描くというものである(下図参照)。

未来の見立て方とは?

なぜか? 基本的にはビジネス=利用者・顧客・社会の課題解決するものであるから。将来、我々が直面するだろう課題仮説に対して、テクノロジーや概念により解決していく方向に世の中が動いていくだろうと思う。また、我々自身が創る未来でもあるので、課題を解決していくという想いが込められるのではないか思う。

テクノロジー/概念の進展仮説とは?

では、テクノロジー/概念の進展仮説とは何かを共有していく。各分野におけるテクノロジーや概念の仮説をあらゆる情報から集めて、いつ頃に何が実用化され、普及していく見立てになっているのかを整理することをテクノロジー/概念の進展仮説と私は呼んでいる(下図参照)。

例えば、通信やITなどの基盤技術では、現在5Gの実用化が始まったが、2040年頃にはBeyond 5Gや6Gが実用化されると言われている。また、海外では既に3Dプリンタによるチョコレートや家が実現されているが、2050年頃には3Dプリンタの街が作られるのではと言われている。

例えば、交通分野では、2025年頃には空飛ぶクルマが実用化されるだろうし、2030年迄には自動運転車の完全自動化も実現されるだろうと言われている。また、今はあらゆるところでMaaSの話が出ているが、今後はDeep MaaSやBeyond MaaSという話も出ている。

例えば、医療の分野では、2030年~40年の間には若返りの技術が開発されたり、バイオプリティングによる再生臓器が製造されたりと。

当然のことながら、これらの見立ては変わってくるので、アンテナを立てて、アップデートしていく必要があるだろう。

テクノロジーの進展仮説①

テクノロジーの進展仮説②

社会変化の仮説とは?

では、社会変化の仮説とは何かを共有していく。テクノロジー/概念の進展仮説と同様に、いつ頃にどんな課題や需要が顕在化するだろうかという情報を集めて、年代ごとに整理したものを社会変化の仮説と私は呼んでいる(下図参照)。

例えば、人口の話でいくと、2050年頃には世界の人口は100億人に達する見通しであるが、日本国内では人口減少が進み、高齢者人口は約4,000万人で、労働力不足は1,215万人になると予測されている。なお、人口統計は様々ある予測の中でも、精度が高いと言われている。

例えば、日本の財政でいくと、医療費・介護費が合わせて96兆円となる見通しであり、政府債務はGDPの600%あり、このままいくと2040-50年頃には公的年金も破綻し、日本財政も破綻するのではないかと言われている。

例えば、自然災害の話でいくと、南海トラフ巨大地震今後30年以内70-80%の確率で発生すると言われている。また、過去の歴史を見ると、大型地震のあとに富士山が噴火しており、大地震と噴火の相関性が高いと見られている。そうなると、この双方が同じようなタイミングで発生することを前提で、我々は住む場所や働く場所を考えておく必要があるだろうし、国や自治体も都市創りや街創りをしていく必要があるだろうと思う。

社会変化の仮説①

社会変化の仮説②

未来の部品集め①:テクノロジー編

では、どうやって未来の部品を集めてくるのかを共有していく。調べてみると、結構沢山あるものである。まず、テクノロジーについては、文部科学省の「第11回科学技術予測調査 S&T Foresight2019 総合報告書」が非常に参考になる。ここにはどのタイミングでどの技術が実用化されるのかという専門家の予測が纏められている。これを眺めていくだけでも楽しくなるのでお勧めである。

未来の部品集め②:テクノロジー編

それから、NEDOライブラリである。NEDOとは、持続可能な社会の実現に必要な技術開発の推進を通じて、イノベーションを創出する国立研究開発法人であり、リスクが高い革新的な技術の開発や実証を支援しているので、技術開発や実証からのレポートが公開されている。ここにも多くの参考となる情報が格納されている。

未来の部品集め③:社会変化の仮説編

社会変化の仮説をサラッと知るためには、生活総研ONLINEの未来年表も参考になる。この年表は、2100年までの未来予測関連の記事やレポートを整理したものである。分野毎や年代毎に見ることができるし、社会変化だけでなく、テクノロジーについても書かれている。但し、2010年頃の記事なども含まれているので、各年表の情報ソースの鮮度は要チェックである。気になるキーワードがあれば、フリーワード検索もできるので、そのキーワードに関連した年表もパッと出てくるので、お勧めである。

未来の部品集め④:社会変化の仮説編

国土交通省の「国土のグランドデザイン2050年」では様々なテーマ・切り口で日本が直面する課題が分析されている。少し古いけども、分析したソースも辿れるので、全体観を把握するには非常に有益である。結構、ゾッとするようなことも書かれているし、国や国土交通省がどのような方向で解決しようとしているのかも凡そ理解できる。

未来の部品集め⑤:社会変化の仮説編

NRIの未来年表には、政治・社会、経済・産業、国際、NRI予測が一つの年表に纏められている。特に産業や経済に関する市場規模などが書かれているので、どれくらいの規模感になるのかというのをサラッと知るには有効である。

未来の部品集め⑥:社会変化の仮説編

三菱総合研究所による社会課題リストである。フォームに申し込みをすれば、無料で社会課題一覧を見ることができる。ここには社会課題の背景やインパクトや解決の糸口も纏められているので、社会課題に関心がある方にも参考になるのではないかと思う。

未来の部品集め⑦:未来像編

文部科学省「令和2年版科学技術白書」は、未来の部品だけでなく、有識者で議論した未来像が纏められている。少し抽象的な未来像ではあるけども、未来を妄想するには参考になるのではないかと思う。

纏め

今回は未来を見立てるために、①テクノロジー・概念の進展仮説と、②社会変化の仮説を部分的に共有した。また、それのベースとなる未来の部品を集めるのに参考となるレポートやサイトを共有してきた。これらを纏めるだけでも脳にいい刺激を与えるだろうし、今回紹介した未来の部品のレポートを眺めるだけでも妄想が拡がるのではないかと思う。

ちなみに、若い人の方が柔軟な発想ができると言うが、私はちょっと疑問である。結局は、どれだけ新しい情報に触れたかどれだけ新しいことを妄想したかなのではないかと思う。実際に未来の妄想の議論を20代・30代・40代・50代ともしたけども、若いからといって、斬新なアイデアが出るとは限らなかったし、50代だからといって、斬新なアイデアが出ないということもなかった。同じ年代でもたくさんアイデアが出る人もいたし、そうでない人もいた。

で、重要なのは、どの未来の部品をピックアップして、テクノロジー・概念の進展仮説と社会変化の仮説をどう掛け合わせるかである。それについては次回のnoteで共有していきたいと思う。


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