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Naked Desire〜姫君たちの野望

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舞台は西暦2800年代。 世界は政治、経済、そして文化のグローバル化並びにボーダーレス化が進み、従来の「国境「国家」という概念が意味をなさなくなっていた。 欧州大陸にある、…
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#SEX

Naked Desire〜姫君たちの野望

第6回 モノローグ-6

「そうね、そのほうがいいわね。置きっぱなしにしておいて、誰かに毒でも入れられたら大変だし」
実際この10年間、信頼していた部下や側近に、毒を盛られて命を落としたり、一命を取り留めても重篤な後遺症が残ったという話は、国内の至る所で流れた。
情勢が落ち着いたとはいえ、復古派の残党が一掃されたとは言い切れない現在、彼らの思想の信奉者が、素知らぬ顔で有力者に毒を盛らない可能性は残

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Naked Desire〜姫君たちの野望

第4回 メモワール その4

「高そうなお酒ね? どんなお酒なの?」
と、私は夫に質問した。
「ヘネシー家当主6代目の生誕100周年を記念し、今から7世紀以上前のコニャックをブレンドして作られた一品だ。たぶん、ボトル1本20万フロリンはくだらないだろうな」
「ボトル1本で20万フロリン!」
貧困層の年収の倍以上じゃない! 私は絶句した。
このご時世に、吞気にそんな酒を引っ張り出す彼の神経がわか

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Naked Desire〜姫君たちの野望

第3回 メモワール その3

そして勢いよく立ち上がると、窓に映る景色を見つめた。
暗闇の中に、部屋から漏れる光が、幻想的な光景を生み出している。
それを眺めながら、私は知り合いから、日本に古くから伝わる昔話を思い出した。
ある日、民のかまどから煙が上っていない光景を目にした天皇は、その理由を家臣に問うた。
家臣は天皇に、税金が重すぎるから、民のかまどから煙が立たないのですと返答した。
その話を

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Naked Desire〜姫君たちの野望

Naked Desire〜姫君たちの野望

第1回 メモワール その1

宮殿の自室の窓からみえる、月明かりに照らし出された景色を一人で眺めながら、私は過去を振り返っていた。
手の届かない場所に行ってしまった人たちの顔を。
そして、二度と戻ってこない景色を。

私の暮らす国では、これまでありとあらゆる不条理がまかり通っていた。
差別。
嘘。
本音と建て前の乖離。
弱者に対する侮辱行為。
富の偏在。
えこひいき。
拡大する格差問題と、固定化

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