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21歳の夏、紀行文

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夏を終わらせたくないので、 ソウル、香港、ローマ、ナポリ、モナスティル、ケルアン、ナントに飛び出しました
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記事一覧

モナスティルの夏、羊の肉と女のドラマチックな人生

「ドラマが欲しい」 モナスティルの外れで羊のバーベキューを食べながら、Sの妻がいう。もっと…

大人は好きなタイミングで夏を終わらせることができる、なぜなら大人だから

みんな、「夏は終わった」と言う。 小さな頃の私にとって、夏の終わりとは8月31日の夏休みの…

ソウルの夏はどうしても苦しくなる

雨が降ったらしく、とても涼しい気候だった。 仁川国際空港は少し肌寒いくらいだったので、夏…

香港のこの夏、世界にとって特別な夏を見ないふりしてすり抜ける

免税店にシャッターが下りた深夜の空港はひんやりしているのに、みな忙しなく「パスポート!」…

イタリアの美しい夏に思いを馳せるのは間違いか

立体駐車場の出口をくぐった瞬間に、楽しみにしていたイタリアをすぐさま抜け出したくなった。…

ローマでは夏でなくともガチョ・エ・ペペを食べる

もう午後の3時に近いのに客の多い、レストランテ・イル・ピッコロ・モンドのガチョ・エ・ぺぺ…

ポンペイの夏、イタリアらしさが足りないまちかどで発光する猫

朝5時、サマータイムのポンペイでは、あたりはもう朝の空気に守られていて、観光客らしき人や土産屋の店主など、すでに人々が街を闊歩している。 昨夜の赤ワインによる小さな頭痛を抱えながら、遺跡に沿って歩き、ロザリオの聖母の巡礼聖堂の大きな入り口に腰掛けてカメラの設定をいじる。 もう5年にもなるのだ。祖父の遺品として、このカメラが私のものになったのは。ストロボ部分にプリントされているFUJIFILM fine pix s6000fdと言う文字もところどころ削れている。15年前の機種

ケルアンの夏、泣く大人とイスラームの太陽

18歳の夏、初めてチュニジアに渡る飛行機で読んでいたのは、江國香織の『泣かない子供』という…