イタリアの美しい夏に思いを馳せるのは間違いか
立体駐車場の出口をくぐった瞬間に、楽しみにしていたイタリアをすぐさま抜け出したくなった。
イタリアで乗ることが夢だったFIAT500をレンタルして喜び、地中海らしく青い底抜けの空も、燦々と照らしてくる太陽も、全て美しい。はずである。
夢心地も束の間、車内のエアコンは壊れており、ただ温風を吐き出すヒーターと化していることに気が付いた。加えて、目の前には一向に進まない渋滞が待ち受けている。
34℃と、まさに夏として申し分ない気候の中、窓を開けて涼んでみるものの、生ぬるい風のみが通り抜けていくのだった。
影となる場所もなく、車の中でずっと太陽に照らされている。
「Signorina! You should go under the tree」(お嬢さん、木陰に入るべきだよ)
と、白い穴あきデザインのTシャツを着たおじいさんに心配される。
動く気配もないので、外に出るのも悪くないなと思い、木陰に入ってみた。
そういえば、去年ニースで車を借りた時も(その時はMINIだった)、ブレーキパットがすり減っていてエンジンブレーキのみでローマを往復した。ヨーロッパではレンタルする車の故障はつきものなのであろうか。そうであればチュニジアの方がよっぽどましである。
香港での4時間の遅延に加え、1時間駐車場のゲートを超えられず、駐車代として12ユーロ支払わされ、さらにいえば空港受け取りのwi-fiも手に入られなかった。後に戻ることもできず先に進むこともできない状態で、エアコンの文句をスタッフに言いに行くすべもない。なんと幸先の良いこと!
とはいえこんなアクシデントは今までにたくさん経験してきた。オフラインマップでだらだら行き先を考え直すのも悪くない。クラクションがあちこちで鳴っていても、近道しようと一方通行を逆走する狂人がいても、ストレスになどなるまい。
結局2時間かけて空港をでた。もう昼過ぎである。ローマ市内でwi-fiを引き取って、ガチョ・エ・ぺぺを食べよう。
渋滞の原因は、事故と車道の構造によるものだった。
空港に入る車と出る車がクロスするようにできている交差点があり、混んで当然の様である。
ローマ西部に位置するこのフィウミチーノ国際空港は、レオナルド・ダ・ヴィンチ空港とも呼ばれているのに、これでは彼の顔に泥を塗っているようなもんだと、トゲのあることを考えてしまうのはひとえに、エアコンのせいである。
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