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【季節のおすすめ絵本】3月:おおきくなったよ

この季節だからこそ、味わいたい絵本、というものがあります。
もちろん、子どもたちが、真冬に水遊びの絵本が読みたくなったり、雪だるまの絵本が好きすぎて1年中楽しんだりする姿も、それはそれで微笑ましいので、あんまり厳密に「絵本を使って季節を教えよう!」とは思わないのですが。
もっと緩やかな感覚で、〈今年も、この季節だなぁ〉とか思いながら、手に取りたい絵本があってもいいよね、という想いで、月ごとの絵本をご紹介していこうと思います。

年度末の3月。日本の学校も9月はじまりにしたらどうか、という議論もありますが、今のところは年度末の3月。合理的な理由とは全く別の気分的な話だけれど、寒い冬が終わって、春の芽吹きを感じる季節に新年度を迎えるというのは、情緒的には好きです。
そう。3月。卒園や卒業。それぞれの学年の終わり。子どもたち自身が、1年かを振り返り、あぁ、ボクは/ワタシは大きくなったなぁ、って実感できる節目の季節。そんな訳で、3月は〈おおきくなったよ〉を実感できる絵本をご紹介します。

まずは、大人にも、子どもにも、「おおきくなる」の喜びを教えてくれる本から。

おおきくなるっていうことは 中川ひろたか:文 村上康成:絵 童心社
子どもたちにとって「おおきくなる」ことは、単に年齢が増えるとか、身体が大きくなるとかではなくて、〈自分の可能性が広がる喜び〉なんだな、ということを、気づかせてくれた本です。「おおきくなるっていうことは」の繰り返しの中に、1人1人の子どもたちの、等身大の「こんなことができるようになって嬉しい」という想いがこもっています。「あぁ、自分も、こんなに大きくなったんだ」と共感して、そして、おおきくなったことの喜びを、じっくり感じられる1冊です。
そして最後の言葉に、いつもいつも胸が熱くなります。

子どもたちの〈おおきくなった〉を手助けしてくれるものの1つに「相棒」の存在があります。子どもたちを勇気づけ、支えて、背中を押してくれる存在です。

こんとあき 林明子:作 福音館書店
生まれた時から、ずっとあきのそばにいてくれた、こん。こんの「腕のほころび」をなおしてもらうために、さきゅうまちのおばあちゃんの家へと向かうお話です。最初は「私も連れて行って」と言っていたあきと、先に立って先導するこんとの関係が、ちょっとした出来事で逆転して、この旅の意味が私たちにも伝わります。
誰もが「うちの子にそっくり」と思うほど、すぐそこにいるような子どもを描く林明子さん。絵を読む読者を信用してくれているのか、絵で描かれたことは、文章でわざわざ説明したりしません。(たとえば、あきが〈むねがどきどきして〉涙が出てきた場面では、涙をぬぐうあきの絵はありますが、「あきは泣きました」なんて文章はありません。)絵と言葉が、同じくらい饒舌で、どちらも大切に味わいたい本です。

魅力的な相棒の本をもう1冊。『こんとあき』のこんは、産まれた時からそばにいましたが、こちらの相棒は、〈おおきくなりたい(つよくなりたい)〉という強い願いが生み出した、目的達成を助けてくれる相棒です。

ラチとらいおん』マレーク・ベロニカ:作 とくながやすもと:訳 福音館書店
〈せかいじゅうで いちばん よわむし〉のラチのところにやってきた 強いらいおん。ラチはらいおんと一緒にトレーニングをして、らいおんがいてくれることで勇気が出てきて、そして、だんだんらいおんの助けが必要なくなってきます。
そもそも、このらいおん、ラチ自身が、〈よわむしな自分〉を何とかしたいと、願ったからこそ、ラチの元にやってきたことが分かる描写になっています。自分を変えたい、強くなりたい、大きくなりたい、もっとこうなりたい・・・という想いが、自分を大きくしてくれることが伝わってきます。

そして、ラチみたいに勇気を振り絞って、〈おおきくなった〉お話を、もう1冊。

はじめてのおつかい』 筒井頼子:作 林明子:絵 福音館書店
坂をあがったお店まで、1人で行って、牛乳を買う。子どもたちの高さまで目線を落として、子どもたちのスピードで歩いてみれば、それは、未知のどきどきが沢山の、大冒険。絵も、言葉も、勇気を振り絞る子どもの心に、丁寧に丁寧に寄り添った、包み込むような絵本です。

そして、最後に「おおきくなあれ!」のおまじないを・・・。

おおきくおおきくおおきくなあれ まついのりこ:脚本/絵 童心社
盛り上がること間違いなしの紙芝居です。子どもたちの「おおきくおおきくおおきくなあれ」の掛け声とともに、お話が前に進みます。「おおきくなあれ!」という魔法の呪文で、子どもたち自身のチカラで物語が開かれる。お話会で盛り上がること間違いなしの紙芝居なのですが、実は家で、親子2人だけで読んでいると、自分1人のチカラで魔法がかけられることにわくわくして、やっぱり盛り上がるのです。

いかがでしたか。
日常のちょっとした言葉や、できなかったことができる姿、誰かを気遣う振る舞いに、〈おおきくなった〉を感じる3月。
親子で一緒に、成長の喜びを感じて見てくださいね。

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