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【短期集中連載】保護者の兄とブラコン妹(第14回)

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俺と由美の3年生としてのスタートは、ほぼ順風満帆といえるだろう。

俺も火曜日に家庭教師していた女の子が高校に合格したおかげで、ぜひウチに…と新たな引き合いがあり、再び家庭教師として火曜日にバイトすることになった。
何かの因果か、又も中3の女の子が相手なのだが、今度は英語ではなく数学が苦手な子らしい。

「えー、お兄ちゃん、数学得意だっけ?お兄ちゃんよりアタシが教えに行ってあげようか?」

と由美が言ってきた。今日は日曜日で、由美の水泳部はまだ4月中とあって日曜は休みだった。俺の居酒屋のバイトも、入居しているダイヤモンド地下街全体が改装工事に入ったため、昨日からしばらくの間、お休みになっていた。

「由美はそれより、インターハイに出れるように頑張れよ。俺だって中学校の数学くらいなら、思い出せるさ」

「本当…?」

と言って、由美は俺の背後に忍び寄り、密かに俺が机の上に置いていたおニューの「高校受験・数学」の参考書と問題集を発見し、

「見ーつけたっ!そんな真新しい参考書買って、お兄ちゃん、陰で努力してるんだね、ヨシヨシ」

と、俺の頭を後ろから撫でてくるのだが、どうやら最近またふくよかに成長したと思われる胸部が、意識してるのかどうなのか分からないが俺の背中に当たる。

「あの…由美…様…。アナタのお胸が兄貴の背中を刺激しているのですが…」

「へ?なになに、お兄ちゃんもアタシの胸で、ついに興奮するようになったの!?成長したねぇ」

と何故か再び頭をヨシヨシと撫でられた。

「これまでは貧乳とかまな板とか洗濯板とかブラジャー要らずとか言ってたのに、やっとアタシの胸の存在を認めたのね。アタシも牛乳飲み続けて良かったよ」

「なんだ由美、怒らないのか?」

「えーっ、だって今まで無いことにされてたアタシの胸の存在を、お兄ちゃんが初めて認めたんだもん。当たってるどうこうよりも、なんか嬉しいよ」

「いや、胸が無いなんて言った覚えは……えーっと…」

「ほら、口籠っちゃって。アタシは覚えてるよ、喧嘩した時に『このブラジャー要らずが!』ってお兄ちゃんが言ったの」

「い、いつの話だよ…」

「えっとね、高校入ってすぐだから2年前の今頃かな?」

「よく覚えてんなぁ…」

「言われた方は忘れないよ。特に貧乳コンプレックスだったんだから、アタシは。その後から、絶対巨乳になってやる!って誓ったんだからね!」

だから最近、洗濯機に入ってるブラジャーのカップが大きくなっていたのか。

「アタシの理想は、サキ姉ちゃんの胸!」

「へ?」

俺と咲江は付き合い始めたとは言うものの、まだ手すら繋いでもいない間柄だというのに、由美は咲江の胸を見たというのか?

「この前、アパートに来てもらった時にね、お互いの胸を見せ合ったんだよ」

「だから最初から男子禁制って追い出されたのか」

「そう。そしたらサキ姉ちゃんの胸って、とっても形がいいの!お兄ちゃん、まだ遭遇してないんでしょ?サキ姉ちゃんが言ってたもん」

「そ、そうだよ。悪いか?」

「別に。その時にね、正しいブラジャーの付け方とかも教わったんだ。こう付ければ、もっと魅力的になるよって」

小声で俺に聞こえないように話していた時だろう。

「アタシは目から鱗だったよ~。お兄ちゃん、極上のナイスバディなサキ姉ちゃんを彼女に持ってるんだから、もっとお兄ちゃんも最近気になる腹回り、なんとかしなきゃ!」

「お前に言われたくないよ!俺は腹回りは気にしてないからな」

「とかなんとか言ってたら、あっという間だよ、太るのって」

「気になることを言うな!」


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結局由美に言い負かされたまま、夕飯の時間になった。

「お兄ちゃんはサキ姉ちゃんとデートとかしないの?」

昨日は俺が作ったので、今日はアタシが作る、と由美が率先して夕飯を作り始めた。

「うーん、結局さ、俺が土日に居酒屋のバイト入れてるだろ?そのせいでなかなか土日にゆっくり会えないから、サークル後に会話して…それくらいしか出来てないんだ」

「えー、じゃあ昨日と今日なんて、絶好のデートチャンスじゃん。居酒屋さんがお休みなんだから。なんでどっか行こうって誘わなかったの?」

「えっ、いやっ、それを言われると…」

「お兄ちゃんって優しいんだけど、昔から肝心なところでオクテになっちゃうんだよねー。きっと昨日と今日も、どっか行こうよと誘いたかったけど、断られたらどうしようとか先に余計な事を思っちゃって何も言えなくて…でしょ?」

「その心臓を打ち抜くような指摘、立ち直れなくなるからやめてくれ…」

由美はフライパンを温めながら、野菜を切りつつ、言った。

「サキ姉ちゃんに電話して、アパートに呼んじゃえば?」

「なっ、なに?」

「『夕飯、食べにおいでよ。よければお風呂入って、泊まっていけば?』って誘えばいいのに。アタシ、料理3人分くらい作れるよ…というより、3人前で準備してるから」

「いや、サキちゃんはだな、実家で暮らしてて、1人娘で、大学も実家から通える所じゃないと許さないという、厳しいご家庭に育っててだな…って、おい、由美!」

由美は一旦台所の火を止めると、電話を掛け始めた。

「何処へ電話してんだ?」

由美は正樹のことは無視して受話器を握っていた。しばらくすると…

「あ、もしもし。わたし、伊藤由美と申しますが、咲江さんいらっしゃ…あっ、サキ姉ちゃん?アタシー!由美だよ。ねぇねぇサキ姉ちゃん、今時間空いてる?あっ、大丈夫?もし良かったら、ウチに夕飯食べに来ない?うん、もちろん!わ、本当?お兄ちゃん喜ぶよー。ついでにさ、お風呂入って泊まっていきなよ。あ、流石にそれは即答できないか。でも?・・・本当?もしOKだったら、アタシ、邪魔しないから。じゃ、とりあえず待ってるね。バイバーイ」

由美は受話器を置いた。

「以上、お兄ちゃん代行サービス終了しましたっ!」

「ゆ、由美…。どうなったんだ?」

「んもー、お兄ちゃんがオクテだから、アタシがサキ姉ちゃんを夕飯に呼んだの。そしたら時間も空いてるから行く行くーってすぐ返事が来たよ?迷わず即行動!でね、お風呂と泊まりについては、親が許可したらって言ってた」

「由美…。妹ながら尊敬するよ…」

悲しいかな、この行動力は俺にはない。いつも由美は即断即決、迷うこともない。そういえば父親が金沢へ転勤と決まった時も、父母が由美の高校をどうするか悩んでる間に『お兄ちゃんと住む!』と即断即決だった

「一応、お兄ちゃんの顔は立てたつもりだから。今用事で出掛けてて、アタシがコッソリと呼んだことになってるから。サプライズ仕様になってるから、サキ姉ちゃんが到着したら驚いてね」

「え、俺大根役者だぜ。大丈夫かなぁ」

「大丈夫、大丈夫。何とかなるように世の中は出来てるの。じゃアタシ、料理作るからね」

再び弓は台所に立つと、手際よく料理を再開させた。


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ドアをノックする音がした。このアパートは古いので、チャイムがないのだ。
だが、だれがノックしたのかはすぐ分かった。

「お兄ちゃん!ここはお兄ちゃんの出番!」

「えっ、いいの?」

「いいから!早く!驚くことを忘れないようにね!」

俺は慌てて玄関に行き、ドアを開けた。そこには、石橋咲江が立っていた。

「あれっ、サキちゃん、どしたの?」

由美はあまりの兄のセリフの大根さに笑いそうになったが、必死に堪えた。

「センパーイ!お会い出来て嬉しいです~。実はですね、妹の由美ちゃんが、アパートで一緒に夕飯食べませんか?って電話くれたんですよ」

サキちゃんは、俺が予想した以上にニコニコと嬉しそうな表情をしていた。

「えっ、でもご両親は、大丈夫?」

「はい。実は由美ちゃんに、お風呂と…あの…お泊りもどうですか?って誘ってもらったんですけど…」

俺はゴクリと生唾を飲み込んだ。

「親に言ったら、伊藤君なら大丈夫だろ、妹さんもいらっしゃるし、お前ももうすぐ二十歳だしって言われて、泊まれることになりましたー!」

「マジで?うわーっ、由美!なんていい妹なんだお前は!」

由美は台所の火を止め、玄関にやって来た。

「お兄ちゃん、アタシのサプライズに喜びすぎ!」

と、由美も演技してくれた。

「サキ姉ちゃん、無理な電話してごめんね」

「ううん、由美ちゃん、嬉しかったよ。センパイ、居酒屋さん、休みなんだって?もっと早く教えてくれたら良かったのにぃ」

サキちゃんはちょっとだけ拗ねた表情を俺に対して見せた。

「ごめんごめん、もしかして日曜の夜はサキちゃんは何か用事入れてたりするかなと思って、躊躇しちゃって…」

「迷ったら、まず電話下さいね。センパイの評判は、うちの両親には良いんですから…」

「ホ、ホントに?」

俺は嬉しさが増すのを感じた。

「とりあえず手ぶらもなんなんで、ありあけでハーバー買ってきました~。後でみんなで食べましょ?」

「ありがとう、サキちゃん。まあ、上がってよ」

「はーい。お邪魔しまーす」

靴を脱いで、ちゃんと揃えて反対に向ける辺りは、ちゃんとご両親の教えを守ってるんだなぁ…。

「サキ姉ちゃん、どこでもいいから座っててね。狭い部屋だけど。あ、狭いのはこの前来てくれたから分かるか!アハハッ」

由美の独壇場だ。サキちゃんもニコニコしている。

「本当にサキちゃん、座ってね」

「センパイ、ありがとうございます!うーん、センパイの横に座ろっかなー、お向かいに座ろっかなー」

「どしたの?横か向かいかって」

「いつもセンパイとは並んでるから、たまにはお向かいに座って、センパイの顔をジーッと見ようかな?なーんて思ったんです。エヘッ」

か、可愛い…。つい由美がサキ姉ちゃんなんて呼ぶから、年上の感覚に陥ってしまいがちだが、サキちゃんは俺より一つ年下なんだった。

「ど、どっちでもいいよ、サキちゃん」

「じゃあアタシ、センパイの向かい側に座ってみますね」

サキちゃんはテーブルの、俺の反対側に、春らしいワンピースのスカートを翻して座った。

「ヨーイショッ」

「あっ、サキちゃん!」

「はい?何かありましたか?」

「……いや、大丈夫。ごめんごめん」

実はサキちゃんが座る際、勢いが良すぎたのかワンピースのスカートがフワッと舞いすぎて、初めてパンツが見えてしまったのだ。

(薄いピンクだった…)

サキちゃんらしい、清楚な色柄でホッとしつつ、見てしまったことは黙っておくべきか言うべきか…

「セーンパイ!」

「わっ、はい!」

「どしたんですか、変な返事しちゃって。センパイは面白いですね!」

ニコニコしているサキちゃんを見たら、薄いピンクのパンツが見えたなんて、とても言えない…。

「由美ちゃんのお料理がもうすぐ出来上がるんですけど、センパイ、お酒って、飲みますか?」

「さ、酒?うん、ビールならたまに飲むよ」

「良かった〜。ハーバーと一緒に、缶ビールも買ってきたんですよ。アタシは未成年だからガマンガマンでスプライトですけど。乾杯しましょ?」

「そ、そうだね」

まだ俺は、初めてサキちゃんのパンツを見てしまった余韻が脳内を占拠している。いつこのドキドキは収まるのだ…。

「由美ちゃん、先に飲ませてもらってもいいかな?」

「どーぞ、どーぞ!アタシも兄が酔っ払う姿、見てみたいです〜」

変な展開だが、サキちゃんと先に乾杯することになった。

「はい、センパイ。最近凄い売れてるスーパードライを買ってみました!どうぞ」

サキちゃんがスーパードライを、俺に手渡してくれた。
偉そうなことを言いつつ、俺もどれだけ飲めるか分からないが、とりあえず乾杯だ!

「じゃあ、サキちゃんと過ごせる夜に、カンパーイ!」
「カンパーイ!」

この後の記憶を俺が思い出すのは、かなりの時間を要することになる…。

<次回へ続く>


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