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自分を愛するということ あるいは幸福について 【服とアイデンティティについて】

自分を愛するということ あるいは幸福について
著 佐々木ののか

お気に入りの本屋さんでお目当ての書籍がない、でも、何か欲しい、と勢いとジャケ買いとタイトル買いで購入した一冊。
愛を信じられない人、他人を信じられない人、そして自分を信じられない人こそ、読むべきだと思った。私のような人間は、特に。

自分のことは嫌いだ。
職場で頼りにされていると言われても、友達に誕生日を祝ってもらっても、落ちる時はとことん落ちる。
何かミスをすると、自分は仕事ができない、そこから派生してブスだし服もダサいし、、、と負のスパイラルに陥る。ひどいときは、なぜ周りの人たちは、こんな自分によくしてくれているのか、心底疑問にも思う程だ。

それでも、死ぬまで自分という厄介な生き物と生きていかなければならない。
せっかく生きるなら、少しでも自分を好きになりたい。
ある人から、『自分を傷付けると他人も傷付けることになる』という言葉をもらった。
他人には優しくしたい。大切にしたい。
自分を大切にできなければ、誰も大切にできない。
20歳過ぎてこのことを痛感するようになった。
遅いだろうか。いや、1日でも早く気づくことができてよかった。
自分を好きになる修行は、日々行われている。


欲望とは、基本的に最初は他者の欲望であり、
主体は欲望に関しては空っぽです。
空っぽの主体は、自分の欲望の体系を構成していかなければなりません。
山内志朗 欲望の倫理学 より

【欲望】というものは、〈私〉をつくるための過程であり、必要な材料。
この材料は、目標に実行するにあたって原動力となる。
なりたい理想像の先に、『こんな服を着たい』『こんな格好がしたい』という目標がある。

服を介して、未来の私を見ている
『服』より

という筆者の言葉の通りだ。

私はファッションが好きだ。
先程、自分なんてダサい人間だ、と責める場面もある、と記載したが、通常はそんなことは思わない。というと、かなりの自信家であるが、おしゃれに気を遣っている方だと思う。
友人にはおしゃれだね、と褒められることが多々ある。
自分のセンスに自信がある。自分がかわいいと思うものは、本当にかわいいと胸を張って言える。(普段はこんなこと言いません。恥ずかしいが過ぎる)
ファッションが好きな母の影響を、昔から受けていた。
それに加えて、古着が好きな友人の影響も多く受けている。服を好きになる環境が整っていたのだ。

そんな私も、数年前、知人が買い物した、とインスタのストーリーにあげていて、そのショップの袋を見て、『私もこれは持っておかなければならないのかな』と、一見訳のわからぬことを本気で思っていた。
その人は、学校でも明るく友達の多いイメージで、深い仲ではなくとも、憧れがあったのだ。
そのショップは、確かに自分も好きなブランドだ。
ワンピースで10000円以上という、頑張れば買えるかなー、でもちょっと高いなー程度の金額設定で、大学生を卒業した20代以上の女性が着る、綺麗めなイメージ。
そのショップの服を買わなきゃ、という焦りは、服好きとして失格だと思った。おしゃれな人は、そんな人思わないよね。
この頃は、精神的にかなり不安定だった。
とある人に相談したところ、『アイデンティティがないまま大人になったんだね』 と言われた。
腑に落ちた。アイデンティティがないのだ。自分には。
自分なりのこだわりはあると自負していたが、いざ蓋を開けてみると、何もかも他人基準だったのだ。
そもそもアイデンティティとは、

自分が自分であること、さらにはそうした自分が他者や社会から認められているという感覚。

という意味。

このアイデンティティというものは、とても大切である。
人は孤独【ひとりきりであり、それゆえ自分自身と一緒にいることができること     ーハンナアーレント 全体主義の起源3 全体主義 新版 より】な時間は必要だ。
しかし、孤独でいる時間と同様に、他者との交際も必要、と本書に書いてある。
それは、アイデンティティの確認ができるからだ。

本当におしゃれな人は、アイデンティティが確立されている人。
孤独と向き合えることもできたら、最高だ。
自分自身と話し合うことができたら、自分の機嫌を取ることができる。
あの頃の私は、孤独を恐れ、かと言って他者と触れ合うことも避けていた。他人の言葉を過敏に受け取り、傷付くことが怖かったのだ。

私が服を好きでいる理由は、単純におしゃれを楽しんでいるから、というのもあるが、服を通じて、少しでも理想の自分に近づくことができること、自分らしさをのびのびと表現できること、この2つが挙げられる。

せっかくおしゃれだね、と褒められるのだ。
自分らしいファッションで生きていたい。
周りの目線や、年齢など、気にするところは多々あるが、ブランドや金額、流行りにとらわれない格好で、背筋を伸ばす。
これこそが、いちばんのおしゃれなのだ。


古着系とか、コンサバ系とか、色々な系統があるが、【自分系】というジャンルを確立することができたら、この上ない幸せだ。
ちょっと調子に乗り過ぎました。ちなみにこの時の格好は、母には個性的だ、友人にはかわいい、と両極端な意見をもらった。
それでいい。自分というジャンルを確立するには、色んな意見があることは仕方ないだろう。

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