見出し画像

孤独な夜のココア② その宝物、公開して大丈夫?

愛の罐詰(かんづめ)

主人公『私』は、 高校の図書館司書をしており、越後先生に片思い中。モッサリとし、あだ名はじゃがいも、体がすんぐりと、イマイチパッとしないがなぜか惹かれる。同じ学校に勤めるミキは、負けず嫌いの僻み屋。『私』が越後先生の魅力を口を滑らせると、ミキは越後先生と近づき、結婚してしまう。

友達の好きな人にあえて近づいたり、ちょっかいを出す人って、いつの時代もいるんだ!という衝撃。似たような境遇になったことあるけど、なんであんなことするんだろう、バチが当たればいいのに、と心底思う。
友達の好きな人を奪いたくなる人は、病気だ。診断書を書いてもらったっていい。処方箋は、ないかもだけど。

『私』は、越後先生のよさは、自分でないとわからない、と密かな自負があったのにもかかわらず、思わずミキに話してしまう。そのときの心情が、個人的に、かなり共感できるのだ。

自分だけで、たいせつにしていた宝物を、
公開したような気がした。

以前もノートで投稿したが、彼のかっこいいところは、自分だけが知っておいた方がよいのかもしれない。

何年後かに、『私』は、ミキと越後先生夫婦に偶然遭遇する。しかし、『私』は、先生への恋心は確実に薄れていた。

あの恋は、私の心の中では、愛の罐詰にされていた

と、『私』は再会した時思った。
そして、愛の罐詰の中身は、空気しか入っていないことにも気づく。

この比較が面白い。
好きだった頃は、宝物だった恋も、思いが薄れてしまえば、空気の罐詰になってしまう。
あの時、ミキに宝物をお披露目しなかったら、今頃どうなっていただろう?
越後先生の隣には、『私』がいたのかもしれない。
恋心は、他人に見せびらかすものではない、と知った。
もちろん、信頼できる人には、相談をするのはいいのだが、公にしないことで、育つ愛もある。

SNSで恋人を公開することが当たり前になっている今日、恋心を、そっと秘める奥ゆかしさを、浸透させるのもいい。
彼は、自分にとってかっこよければ、それでいい。
と、負け惜しみっぽい発言はここまでにしておきます。

この記事が参加している募集

読書感想文

わたしの本棚

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?