短歌五十音(け)建礼門院右京大夫『建礼門院右京大夫集』
好きぴが、平家で、都落ち。
「建礼門院右京大夫集」は、平安時代の末期から鎌倉時代初期にかけて生きた建礼門院右京大夫(けんれいもんいんうきょうのだいぶ)の歌集です。
歌集と言いつつ、めちゃくちゃ文章が添えてあり、日記文学とも言われており、建礼門院右京大夫の一代記でもあります。
この記事では、「建礼門院右京大夫集」を現代を生きる皆さまに親しみを持って読んでいただけるよう、超訳を添えるとともに、登場人物などについてもなるべく現代風にアレンジしていることをご容赦願います。
この歌が1首目の歌です。
どうでしょう。
インスタのストーリーで真っ白な背景に白で書かれている感じがしませんか。
このわくわくする歌から、等身大のだいちゃみ(建礼門院右京大夫)の物語がはじまります。
あらあら、だいちゃみはなんJ民だったようですね。
だいちゃみは、タカクラニキ(高倉天皇)の皇后ノリコネキ(平徳子(建礼門院))に仕えていました。
ノリコネキは、キヨモリニキ(平清盛)の娘であり、世はまさに平家にあらずんば人にあらず。
私たちはその後の平家のたどる道を知ってしまっていますが、もちろんこのときのだいちゃみはそのようなことを知る由もなく、華やかな宮中での生活を楽しんでいます。
そんなだいちゃみは、現代の推し文化の思想をいち早く持っていたようです。
「まことに絵物語いひたてたるやうにうつくし」いコレモリ様(平維盛)の姿を見ただいちゃみの歌です。
華やかな宮中で過ごしているとはいえ、あくまでだいちゃみは上級貴族ではなく、恋愛なんてしないという強い気持ちを持っています。
しかし、恋は盲目。
そんなだいちゃみですが、年下イケメン王子(ガチ)と遊び人イケオジの間で揺れ動くことになります。
だいちゃみをなんJ民から少女漫画の世界にいざなう1人目の恋のお相手はスケモリくん(平資盛)。
スケモリくんは、キヨモリニキ(平清盛)の長男の次男というガチ王子。
しかも高貴な正妻が別にいて、だいちゃみよりも年下で身分違い。
それでも、スケモリくんのことが気になって仕方がないだいちゃみ。
恋い慕う心を抑えられません。
一方、もう一人、だいちゃみに言い寄るイケオジがいました。
TAKANOBU(藤原隆信)である。
TAKANOBUは、イラストレーター(似絵、肖像画)として爆売れしており、女好きとしても有名。
だいちゃみは、そんなTAKANOBUのチャラいDMをことごとく叩き切っていきますが、相手の方が一枚上手。
スケモリくんとのことで思い悩んでいるときに心を開いてしまい抱かれてしまうのです。
そして、もちろんTAKANOBUは、一度抱いた女に興味はありません。
思いの高まるだいちゃみから距離を置いていき、だいちゃみはそのことを思い悩みます。
今ならTAKANOBUとの歌のやり取りを文春に持ち込んでいただろうだいちゃみですが、残念ながら当時はまだ文春がなかった時代。
しかし、TAKANOBUとの歌のやりとりは、ウィットに富んでいて、だいちゃみがあえてこのやりとりを残しているところを見ると、若いころのほろ苦い恋の思い出となっているようです。
そしてこの後、皆さんご存じのとおり、時代が急展開します。
源平の戦乱が激化し、平家の人々は次々と都落ちしていきます。
だいちゃみが慕っていたノリコネキも然り。
平家の滅亡に伴って、自ら入水するも助けられ、その後京都で尼として質素な暮らしをすることとなります。
尼になったあとのノリコネキを訪ねただいちゃみは、華やかな暮らしとは対極にあるノリコネキの姿を見て、絶句します。
だいちゃみは、またネット民に戻ってしまいました。
そして、だいちゃみが心を寄せるスケモリくんも例外ではありません。
都落ちする直前、スケモリくんは、だいちゃみに密かに会いに来ます。
そして、スケモリくんは、だいちゃみに「ごめん、俺たぶん死ぬわ。自分が死んだら、君に弔ってほしい。今までありがとう。」と伝えます。
涙ながらの別れを経て、スケモリくんは、非業の最期を迎えます。
しかし、正式な妻でもないだいちゃみは、共に死ぬことも、勝手に仏門に入ることも許されず、ただただ仏に向かって泣く日々を送ります。
悲哀の日々を過ごすだいちゃみは、すでに宮中での仕事から退いていましたが、才能を買われて、もう一度宮中で働くこととなります。
呼び名もだいちゃみから、おいちさん(一院の右京大夫)に変わり、仕事はきっちりこなします。
しかし、久々の宮中では寂しいことも多くあったようです。
そして、宮中でもスケモリくんのことを思います。
歌集の最後は、この歌集をまとめるきっかけとなったテイカニキ(藤原定家)との歌の応答で終わります。
「今度ネプリ出すけど、どうかな?載せてよかったら、名前、だいちゃみとおいちさんとどっちにする?」とテイカニキからDMをもらうと、だいちゃみは早速歌をテイカニキに送ります。
ちなみに、だいちゃみ80歳くらいまで生きてます。
気になったあなたは、是非原典でお読みください!
(参考文献)
建礼門院右京大夫集(久松潜一・久保田淳校注、岩波書店、1978)
新潮日本古典集成建礼門院右京大夫集(糸賀きみ江校注、新潮社、1979)
現代語で読む建礼門院右京大夫集(糸賀きみ江著、武蔵野書院、2002)
次回予告
「短歌五十音」では、初夏みどり、桜庭紀子、ぽっぷこーんじぇる、中森温泉の4人のメンバーが週替りで、五十音順に一人の歌人、一冊の歌集を紹介しています。
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お読みいただきありがとうございました。本稿が、みなさまと歌人の出会いの場になれば嬉しいです。
次回は初夏みどりさんが現代短歌文庫の『小池光歌集』を紹介します。お楽しみに!
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