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アンパンマンしかかたん

夏休みは、仕事がら、一年で一番、たいへん。
よその子どもたちと、朝から夕方まで一緒に
過ごす。
自分の子たちはほったらかしている。

子ども、とにかくアンパンマンがすきだ。

うちの施設に来ているのは
定型発達の子達ではないので、
幼い子のみならず、6年生になってもまだ、
アンパンマンが好きな子もいる。

あんぱんって、食べたことあるのかな、
って言うくらい小さい子もどハマりして
しまうアンパンマンの魅力ってなんなんだ。

昨日は、いつもアンパンマンのお絵描きを
している子が来ていた。
この子は小学3年生の女の子だが、
助詞で二つの言葉を繋げる、
という事は出来なくて、単語のみ発語できる。
絵を描くときは、必ずスタッフに、
要求をする。

描いて欲しいもの(アンパンマンのキャラ)
と、何色で描いて欲しいか、を伝えてくるので
大まかに描いてやると、上からざっざっと
自分で描き足して、仕上げる。

「カレーパンマン きいろ」
「アンパンマン ちゃいろ」
「かまめしどん ちゃいろ」

という要求があるので、見本を見ながら描く。

「食パンマン うすだいだい」

と言われ、うすだいだい??てなる。
わたしは、「はだいろ」世代なのだ。
今の子にとっては、はだいろ??
て、なるんだろうな。

はだいろは、いかん。
じゃあ何色って明記するんだ、という議論。
もめた感じがする。
最終、うすだいだいかよ、
他になんかなかったのか、とも思うが。
新しい色の名前と概念を作り上げるのは
大変に難しいのだろう。

アンパンマンを作った、やなせたかしは、
第二次世界大戦で、人間の極限を見るような
酷い思いをしたらしい。

アンパンマンに込められた、ほんとうの正義、とは、お腹が空いている人を救うことらしい。
人間にとって一番つらいのは、

空腹。
そして病気。

やなせたかしは言っている。

正義のための戦いなんてどこにもないのだ。
正義はある日、突然反転する。
逆転しない正義は、献身と愛だ。
目の前で餓死しそうな人がいるとすれば 
その人に、一片のパンを与えること。

だから、アンパンマンとバイキンマン、
なのだろう。
実際、戦死者の多くは、戦って死んだのでは
なく、飢餓と病気によって、だったらしい。

戦争を経験した人は、一夜にして、
「正義が逆転する瞬間」
を経験している。
想像することもできん。



やなせたかしがアンパンマンを作ったのは
50歳のとき、だったそうだ。

はじめは、
「ふつうのおじさんが、あんぱんを配る話」
だったらしい。
ぜったい、売れないよそれでは。

そこから、あんぱんそのものをヒーローにし、
お腹を空いて動けない者に、自分の頭を
食べさせる、という話にするとは、
50にして、かなりぶっとんだセンスだ。

ここで大切なのは、
頭を食べられたヒーローもまた、
力が出なくなり、ジャムおじさんに
助けてもらわないと生きていけない、
ということだ。
みんな、誰かによって支えてもらっている。

人を助けることは、自分も痛みを伴う。
ということもまた本当のこと。

この 真理、みたいなものを、
言葉で説明しなくても、小さい人たちは
わかっているのかもしれないな、と
思うのだ。

そうでなければ、小さい人たちから
こんなにも支持されるわけがない。


のまひろしさま
イラスト使わせてもらいました。
ありがとうございました!


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