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一生に一度の経験だったんに



6.7年前に、わたしは、

裁判員制度の、一般裁判員に、
選ばれましたので、お願いします

という通知を受け取った。

え、なに?
という感じであった。その制度自体は
知っていたし、でもまさか、わたし?
わたしがやるんですか?
と思った。

確か、裁判に公平性を持たせるために
一般人も裁判員として参加する、という
ものだ。それは一般人から、ランダムに
選ばれる。
ちょっと調べてみてびっくりしたが、
当選確率は、
1410人に1人の確率だそうだ。

なんかさあ、おい。
もう一生、宝くじとか抽選みたいなものに
当たる気がしねえ。
これに当たってしまったがために、
一生の当選運を使ってしまった気がする。

書類を拝見してまたびっくりしたが、
普通に平日だ。
仕事も休んできてください、とあった。
ほんとうに特別な身体的な理由以外は、
辞退できないらしい。
すごい強気ー。

報酬はあるのかないのかわからないが、
交通費、弁当代は払ってくれるみたいだ。

タイムスケジュールを見てまた驚愕。
朝から夕方までびっちり、一日中だった。

うちは田舎中の田舎、いわゆる僻地で
あるため、裁判が行われる場所まで、
特急を使っても2時間くらいかかる。
朝早く出て、夜遅く帰ることになる。

とんでもねえもんを、引き当ててしまった
もんだ。。

この1日を、やってみる、として、
シュミレーションしてみたが、
ああ、ちょっと無理があるな。
と、気づいた。

わたしは薬を服用していない、
ナルコレプシー(睡眠障害)保持者なので、
わたしの一日の過ごし方は、普通一般の
方とはちょっと違っている。

一日に何回かは、ねむい。。ねむ。。
という時がきて、その時に、ちょっと
眠らないと、全身脱力して、気絶する。
ゆえに、ちょこまか休憩をしまくって、
なんとか一日を終えられる。

一日中、座って何かを聞く、みたいな状況は、苦手中の苦手、今までもさまざまな場所で
信用を無くしてきた。
想像する。
シーンとしている。座っている。
この状況。まちがいない。
ねる。
めっちゃねる。

裁判にかけられるほうも、コックリコックリ
していたやつに、
「有罪!」
などと判決を下されたりしたら、
納得いかないだろ。

よし。
まあ、しゃあないやん。
もっと、ちゃんとやってくれる人に、
席を譲ろうやないか。

わたしは、返信用紙に、
持病のため、辞退させてください
と書き込み、郵送して、
ホッ
とした。

病気のせいにした、かもしれない。
ほんとは、怖かったんだ。
惨殺された遺体の写真をみるとか、
こどもが関わる悲しい事件とかのことを
直視するのが怖かった。
一生、記憶に残るだろう。

それに、のらりくらりと生きてきた、
只のおんなが、参考にする程度にしても、
有罪とか無罪とか、いうんだとしたら。

そんなん、やっていいのかよー

と、びびったのだ。
みなさんは、できますか。

もう二度と、この通知が来ることはない、
と思うが、今、もしもう一度、この
チャンスが巡ってきたら、辞退しないかも
しれない。

今のわたしは、
「一生に一度しか回ってこない経験」
が、このようにふいにやってきたら、
やってみよう、と思っている。

今年。
でかいPTAの役員がまわってきた。
boy(14歳息子)の中学校の。
引き当てたのだ。
竹ぐしで作ったくじ引きだった。
まだ当選運が残っていたらしい。

で、こんなでかい役目は一生に一度、と
思って、やるんだけど。
ついでに、どうせ一生に一度、だとしたら、
あれをやらせていただけないか。

体育祭で。
玉入れの。
カゴを持つ係。

あれは、みんなが玉を投げている間は
只の黒子だが、玉を数える時になると、
みんなが座り、カゴもち係さんだけ立つ。
みんなの期待を含んだ視線を受けながら、

ひとーつ
ふたーつ

と玉を投げながら数える。
最後のひとつを大きく、できるだけ
大きく放り投げるのが、仕事だ。

ずっと、思っていた。
最後にたかーく、かっこよく、
玉を投げられるの、すごいなって。
この
「カゴもち係」
を、一生経験せずにしぬ人は、多いと思う。

やってみたいなあ。
ぜひ、わたくしにやらせてくださらないか。
といいたい。

秋、か。体育祭。
玉をまっすぐに上に、大きく投げれるかな。
boyはたぶんそこに居ない気がするが、
そんなことは、関係ないのだ。

よし、れんしゅう、しよう。


清水将吾さま
イラスト使わせていただきました。
ありがとうございました!









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