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地域とともに学びを育てる②ー十勝・本別高校のコミュニティスクールへの道ー

僕は、2020年春から北海道・十勝にある北海道道立本別高等学校のアドバイザーおよび特別講師として関わることになりました。

これは、さまざまな地域のしがらみとか、固定概念とか、そのようなものを乗り越えて、地域が一体となって高校生たちの学びを育てていく、取り組み。

コミュニティスクール(学校運営協議会制度)とは、文部科学省のHPによると、学校と地域住民等が力を合わせて学校の運営に取り組むことが可能となる「地域とともにある学校」への転換を図るための有効な仕組みです。

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コミュニティ・スクールでは、学校運営に地域の声を積極的に生かし、地域と一体となって特色ある学校づくりを進めていくことができます。

コミュニティスクール(学校運営協議会制度)については、前回の記事もご参考まで。

本別高校のコミュニティスクール

本別高校は、コミュニティスクールとなるにあたり、以下の3つの方針を定め。

<本別高校のコミュニティスクールとしての3つの基本方針>

  1. 高校と地域が一体となり、特色ある教育活動の推進に努める。

  2. 生徒の学校生活の充実と学校の魅力化の向上のため、地域との協働による課外活動の推進に努める。

  3. 地域を理解し愛着を持った人材を育成すると共に、高校が地域の核となるよう教育活動の推進に努める。

 (本別高校HPより)

この3つの基本方針をみると、なんかどこの高校でもやっていそうだな、って思われる方が多いかもしれません。

しかしながら、そう簡単ではありません。公立の高等学校の教育は一般的には都道府県の教育委員会管轄、そして地域の活性化や魅力化というテーマには当然ですが市区町村が主体的に関わります。市区町村にも教育委員会という組織がありますが、市区町村の教育委員会は小中学校を管轄しますが、高等学校の教育は直接的には管轄外。

ここに、高等学校の教育と地域との間で、分断が起こってしまいます。我が町にある地元の高校の運営には、市区町村は財源も設置権限も持っていません。

だから、本別高校のこの3つの方針は、文字にすると平易に映りますが、行うは難し、ということになります。


本別高校のコミュニティスクールの運営と3つの部会

本別高校のコミュニティスクール(学校運営協議会)は、3つの部会を運営し、これらの部会と地域住民や関係団体とのつなぎ役となるコーディネーターがかじ取りを行う。

<部会>
「とかち創生学」
「異校種間連携部会」
「地域連携部会」

この運営において、コーディネーターは我が町の教育委員会のメンバーが担っている。

その中で、今回本別高校のコミュニティースクールの目玉の部会(と伺ってます。。)が藤井がアドバイザー兼講師を担当することになった「とかち創生学」。

「とかち創生学」とは

「とかち創生学」とは、学習指導要領の改訂により、2022年度から変わることになった高等学校の「総合的な探究の時間」を用いて提供される。

もともとは、この教科は「総合的な学習の時間」として実施されていたもので、教科や科目の枠組みを超えた課題に取り組む点はこれまで通りだが、自ら探究するテーマを設定する点に重きを置いている。

「学習」という言葉が「探究」に置き換わっただけのように見えるが、実態は大きく異なる。

探究に特化した内容へ、文部科学省が2018年に告示

総合的な探究の時間は、2018年の文部科学省告示では、探究により特化した内容にすることが打ち出された。

<改訂の基本方針>

(1)生徒が未来社会を切り開くための資質や能力を確実に育成する
(2)知識や技能の習得と思考力、判断力、表現力などの育成をバランスよく進めるとした学習指導要領の枠組みを踏まえ、知識の理解の質をさらに高め、確かな学力を育成する
(3)道徳教育の充実や体験活動の重視などから、豊かな心や健やかな身体を育成する

2018年文部科学省告示

生徒自身が主体的に課題を設定

総合的な探究の時間の目的は、生徒が主体的に課題を設定し、情報の収集や整理分析を進める能力を高めること。

総合的な学習の時間について「課題を解決し、自己の生き方を考えていく」としているのに対して、総合的な探究の時間を「自己の在り方や生き方を考えながら、課題を発見して解決していく」とする。

なんか、話が少し難しくなってしまったが、従来の総合的な学習の時間は比較的進路指導などが行われていたそうだが、それが社会の変化に合わせた「学習指導要領」の変化とともに、大きく見直されたということ。

これまで、日本の教育は、学ぶことがあらかじめ決められ、それを習得していくものが中心だったが、学ぶべきことから自ら設定していくという内容の教育は従来はほとんど無かった(のではないか)。

本来であれば、2022年度からの新しい学習指導要領の盛り込まれる探究活動をいち早く取り組んだ一握りの学校が存在する。本別高校はその中の一つであり、それが「とかち創生学」。

高校生インターン4
本別高校と生徒たち

コミュニティスクールが運営する「とかち創生学」の価値

この新しい探究活動の学びを、新しいコミュニティスクールとして運営するというところが本別高校の斬新なところではないかと考える。

近藤校長先生(当時)によると、「探究」という新しい分野の学びは、これまでの教育に携わってきた教員が提供するのは困難であると。

すなわち、僕なりの解釈としては、従来の正解を教えていく教育の在り方では、「探究」という学びには対応が困難であるということなのかもしれない。

誰しもが経験することだと思うが、社会人になって、日々直面する課題たちは、一つの正解を導き出していく方法ではとても解決することは難しく、もっと多面的に課題に向き合って、柔軟に解決策を導き出していかなければ解決しないものばかりである。

さらに、それが地域の課題ともなればなおさらだ。地域の課題は、人口動態、社会の制度の問題、政治的な背景、経済的な問題、人と人との関係性など、多様な因数が複雑に絡み合い、とても一筋縄には解決しない複雑系な問題だ。

この地域の複雑系な問題に対して、その問題に日々直面する地域の役場や地域の産業界を巻き込んだ地域の資源をふんだんに活用して、高校生たちに最高の授業を提供しようというコンセプトが、コミュニティスクールがこの「とかち創生学」を提供する価値そのものだと思う。

そして、これらの「探究」のエッセンスを体系的に学ぶためのフレームワークづくりを藤井が担当した。

次回、「とかち創生学」の学びの内容などもご紹介していこうと思う。

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「とかち創生学」で講義する筆者


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