まみれ

年老いたフレブルと暮らす物書きです。著書3冊。 『W出版賞草思社金賞』『わたしの旅ブッ…

まみれ

年老いたフレブルと暮らす物書きです。著書3冊。 『W出版賞草思社金賞』『わたしの旅ブックス新人賞』『子どものための感動ノンフィクション優秀作』受賞。旅の記録や日々の思い出を綴っています。

マガジン

  • 『震災ジャンキー』(草思社)

    他人に降りかかった災難なのに、なぜ、被災地に通い続けるのか? 東日本大震災の支援活動を一人の青年の立場から克明に記録し、善意の中毒性を綴ったドキュメント! 草思社文芸社W出版賞金賞。 新聞社を退職してNGOに転じた筆者は東日本大震災に遭遇。被災者との濃密なやり取りから見えてきた、いま、被災地の目の前にある現実を克明に記録する。「なぜ、見ず知らずの人のためにそこまでやれるのか」という素朴な疑問への回答書ともなっている。

  • たんぽぽ日記

    因果応報、日々の出来事、思うこと。

  • 【四国一周】想定外まみれの自転車旅

    四国一周自転車の旅。猛暑、大雨、故障と想定外の旅の記録の記録。

  • 小さな旅

    マガジンを作るほどでもない小さな旅の記録

  • 酒場の記憶

    儚い記憶を辿った酔どれの記録。

最近の記事

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僕は、一度、死んだ。

今日(2021年7月21日)で、個人事業主の開業届けを出してから、ちょうど10年が経った。いい機会なので、社会人人生を振り返ってみる。 まず、ここまで生き残れたのは、偏屈な私に仕事を依頼してくださった寛大な方々はじめ、関係各所の皆様のおかげです。心から感謝申し上げます。ありがとうございました。 さて。 私が社会に出たのは、就職氷河期に超がついていた時代で、あんな大きな新聞社にヌルッと入り込めたのはラッキーだった。 元々は、広告代理店の営業志望。 大学で一番仲の良かった

    • 占いは、いらない。

      その男と知り合ったのは、かれこれ二十年前になるが、思えば2人っきりで呑みに行くのは初めてだった。 彼は、いまだ土葬の文化が残る関西の小さな村の生まれだという。 驚いた。 日本の火葬率が100%ではないのは、てっきり事故か何かで埋葬できない方がいるからで、とっくになくなった風習だと思っていた。 聞けば、大きな桶に座るようにご遺体を入れるとか。 「ドリフのヤツじゃんか」と思わず不謹慎な発言をしてしまったが、あれはちゃんとした元ネタがあったということを初めて知った。というか

      • 埼玉の台湾

        九州北部を500キロほど走ってから10日ほど。 疲労は抜けていくが、自転車モードの体が都市生活モードに戻っていくのがもったいない気がしてくる。 まだ6月だというのに気温は30度に少しずつ近づいている。来月になれば、とても外を自転車で走ろうなんて気にならないだろう。 朝4時30分。 窓から、朝の光が差し込んでくる。 ここが岐路だ。 朝の光に反応した体を、そのまま素直にベッドから起こすのだ。 5時。出発。 半袖、短パンのウェアではまだ少し肌寒い。ただ耐えられないほど

        • 九州北部輪行

          朝7時羽田発。窓際の席。眼下に富士山。 久々のソラシド。無料のスープ。JALのコンソメ以来のヒットの予感。 2時間のフライトでやってきたのは、長崎県。初潜入。自転車を組み立てて、10時出発。 午前中は、まだ気温が低くて、助かる。 が、空港周りは自転車道ばかりで、並走していたら、とんでもない坂道に突入。 昨日までの豪雨のせいか、自転車を押して歩いても滑る滑る。おまけにしばらく人が歩いていなかったかのような蜘蛛の巣だらけ。 林からは大きな物音。長崎にもクマっているのか?

        • 固定された記事

        僕は、一度、死んだ。

        マガジン

        • 『震災ジャンキー』(草思社)
          7本
        • たんぽぽ日記
          53本
        • 【四国一周】想定外まみれの自転車旅
          10本
        • 小さな旅
          20本
        • 酒場の記憶
          56本
        • 旅の記録
          157本

        記事

          2000年前の忠告

          『変身物語』で知れれている古代ローマの大詩人・オウィディウス。 紀元前後に活躍する中、紀元後8年にアウグストゥス帝の命により、 黒海に面した僻地に追放され、そのまま生涯を終える。 追放の理由はよくわかっておらず、文学史上最も不可解な事件の一つとされているとか。 オウィディウス自身は追放の原因を「一つの詩歌と一つの過誤(carmen et error)に帰す」と書いている。 この詩は、追放されてから書かれた詩集『悲しみの歌』の一つ。 それが2000年と知り、古代ローマの文明

          2000年前の忠告

          はじめての根津

          東大とも谷根千とも縁遠い人生ゆえ、根津で呑むのは初めてだった。 戦前の匂いを色濃く残しながらも真新しい洒落た路面店が混じり込む町並み。これがいま流行りのレトロモダンか。 そんな中、私が心惹かれたのは小洒落たベーグル屋など駆逐するような佇まいの『木曽路』だった。 カウンターだけの小さな酒場。 「2人、行けますか?」と覗き込む私に、御年92歳の女将さんがノリよく「温めておきましたよ」と座っていた席を空けてくださった。 一緒に行ったのが愛媛出身の呑み友だちなら、隣の席にいた

          はじめての根津

          秋の旅⑥ただいま新居浜

          6時頃出発。予報は雨だが、ほぼ気にならないレベル。 目指すは、新居浜のみんなのコーヒー。松山からは東温市経由の最短コースを走る。 ややきつい登りがあり、トンネルも多く、交流量も多い。が、雨に降られることもなく、順調に進む。 手ぶらでは失礼だと思いながら、収納力の乏しいチャリ旅ゆえ、各地でお土産を買いそびれていると、ついにあと5、6kmまで来てしまった。 何となく良さげな駄菓子屋を発見。地元の人に地元のものを差し上げることより手ぶらの方がダメだろうと、可愛いパッケージの飴を

          秋の旅⑥ただいま新居浜

          秋の旅⑤しまなみ海道で愛媛へ

          5時過ぎ起床。泊まっていた駅前のカプセルホテルは、サウナイベントをやるような充実した施設を構えている。出発前にひとっ風呂。足を伸ばせる湯船は気持ちいい。 6時頃スタート。あらためて福山の街は大きい。そこから20kmほど走り、尾道へ。小洒落ていて、湘南っぽい雰囲気。朝から散策する観光客もいる。 向島行きのフェリー乗り場に行くと、しまなみ海道の起点のサイン。 フェリーのチケットはどこで買うのか。キョロキョロしていると、どうやら船内で払うような案内。そのまま乗船。 レンタサイ

          秋の旅⑤しまなみ海道で愛媛へ

          秋の旅④やまなみ街道で広島へ

          5時起床。6時前に出発。 出雲駅前のローソンにて、レターパックを購めて店内のポストに投函。 おにぎり、コーヒー、野菜ジュースを店先で摂っていると、ベロベロのオヤジさんがフッラフラで近づいてきた。 「うっわー、すっげー、すっげー」 あー、怖いなーと気づかないフリをしていたが、どんどん近づいてくる。 「こりゃ、すんげーわ。5万、10万じゃねーぞ」 その距離1メートル。もう無理だと視線を合わせて、ぎこちない笑顔で会釈した。 「タッカイだろー、この自転車、タッカイだろー」

          秋の旅④やまなみ街道で広島へ

          秋の旅③島根初潜入

          5時起床。6時前出発。まだ暗い。ほどなく鳥取空港横を通り過ぎる。 別名『鳥取砂丘コナン空港』。作者の青山剛昌さんが鳥取中部の北栄町出身にちなんだことのようだ。 空港内外はコナンのキャラクターだらけ。 元々コナンはアンバランスな体型とキャラクターが苦手なので、うわっと思ってしまった。 夜明け。マジックアワーに見惚れる。 明け方は車も少なく、日本海を臨む海岸線は道も平坦。 この辺りは、『鳥取うみなみロード』というらしく、かなり走りやすい。 昨日の遅れを取り戻すように、ガン

          秋の旅③島根初潜入

          秋の旅②とっとり初潜入

          4時過ぎ起床。ドミトリーは暑いような寒いようなで、寝苦しかった。 5時出発。まだ暗い。短パン、半袖では、寒すぎた。 が、一度しまった防寒具を出すのがめんどーで結局、陽が出てからコンビニ休憩で上着とロングパンツを履く。出発時は上着が必要そうだ。 明石市の中心はかなり栄えている。新聞社で仲の良かった同期が明石出身だったなーと思い出しながら、駅を走り抜けていく。 加古川だ。新聞社で唯一の名古屋配属同期の戦友の出身地だ。思わず連絡したくなったが、早朝だし、「おーそーか! 気をつけ

          秋の旅②とっとり初潜入

          秋の旅①神戸の夜

          連休にどこかへ行こうと思い立ち、格安チケットを見つけ、自転車抱えて神戸空港に到着したのが水曜の夕方。 はじめての神戸空港はこぢんまりとしていて便利だ。2階の荷物預かり所で輪行バッグを預ける。1日300円。ひとまず6日分を前払い。その場で組み立てた自転車を抱えて階段を降りて外へ出る。すぐに陽は沈んだ。 ポートアイランドは人工島らしく整然としていて走りやすい。海沿いには釣り人の姿が見え、大学まである。煌めく神戸の街を眺められるキャンパスなんて羨ましいなと思ったが、こんな離れ小

          秋の旅①神戸の夜

          偶然が重なれば必然

          ここ数年はパンデミックもあり、バックパックを置いて、国内を自転車で走り回っている。 2冊目の著書はヒマラヤの麓を旅した話だが、3冊目は四国を自転車で 自転車は私の世界を広げている。 先日、28歳の若者から突然メッセージが来た。 東京を一緒に走りましょうという。 面識はないが、このメッセージが届くまでいくつもの偶然が重なっていた。 1年前、私は四国一周の自転車の旅を計画していた。 ただ後輩から譲り受けた古いシクロクロスのブレーキの調子がどうも悪い。自転車屋さんを3軒回っ

          偶然が重なれば必然

          勝手にどこかで元気にやってると思ってた

          入学早々腐っていたぼくは、大学があまりに遠くて、途中下車しては映画ばかり観ていた。あの頃は単館映画全盛で、学校よりも多くを学べるとでも思っていたのかもしれない。そういう現実逃避癖は20年以上たっても変わらない。 知らぬ間に新歓の時期も終わっていて、ぼくはサークルにも入りそびれていた。当然、知り合いもほとんどいない。 ただ、その学部はクラスが縦割りで、クラスの集まりの際に、3年生の先輩2人が「どこにも入ってないなら俺たちのとこにくるか」と誘ってくれた。 自分の興味やキャラと

          勝手にどこかで元気にやってると思ってた

          北海道自転車旅⑧浦河→千歳

          いよいよ最終日。 昨晩は2時頃にクレーマーが宿に来ていたようで、ずっと大声で店員ともめていた。声がガンガン響いてきて、困った。このまま出発しようかとも思ったが、頭が痛くて、やめた。寝不足だ。 明け方すぎに雨が降り出す。この旅、初の雨。ただ予報ではすぐに止む。 6時半過ぎに雨が弱まったので、7時前に出発。以降は曇り。天気に恵まれた旅だった。 海沿いを苫小牧方面へ走る。多少の坂はあるが、ほぼフラット。かなり快調。 門別に競馬場あり。だから、この辺りはサラブレッドのふるさととか

          北海道自転車旅⑧浦河→千歳

          北海道自転車旅⑦釧路音別→浦河

          2時10分目が覚める。前日買っておいたパンをかじる。 3時10分出発。駅前の温度計は、15.7度。釧路は寒い。38号→1038号→336号の海沿いの道をひたすらなんか。ここまできたら、やはり襟裳岬を目指す。海が綺麗。朝日をバックに快調。やはり一晩寝るとだいぶ回復するもおんだ。 やがて道はやや内陸へ。早朝で車もほとんどいないから快適。坂も少なくやはり襟裳岬コースの方が走るのは楽だ。 ただ、トンネルが多い。北海道一長いというえりも黄金トンネル(4.941キロ!)にはまいった

          北海道自転車旅⑦釧路音別→浦河