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82年生まれキム・ジヨン ②

映画の中で心に残っているフレーズはこちら。

1.「なら、今から先生になればいい」
2.「男に生まれるべきだった」
3.「みんな結局他人事のように考えて_私だけが闘っている
4.「閉じ込められている気分に」

1は、ジヨンが幼少のときの母親への一言。私自身も母親であることを、やりたいことをやらない理由にしてしまっていることがあるかもしれないと、考えさせられた。2に関しては、よく私の父が私に向けて言っていた言葉と同じだと思った。営業時代、夢中で働く私に向けた一言。恐らく、私の頑張りが報われないことを恐れていたのかもしれない。3と4は、私も時々感じる。どこにも所属することのない専業主婦って、孤独だなと。

ジヨンの夫は、自分がジヨンを精神的に追い詰めてしまった、と悲しむが、本当に夫だけが追い込んだのか?いや夫だけでなく、家族を含む社会全体が、そのような状況を作っているんだろう。
ストーリーの中では、ジヨンに周囲の人が憑依することで、「普段は誰も言えないような本音」を、豪快に話していく。それが、痛快であり、それが素直に言えない社会を捉えているところが、逆に悲しい。“普通に本音をはなせない社会”がそこにある。
そうそう、それ、私も言いたかったんだよね、と共感する人がどれだけいたことか。
しかし、ジェンダー問題を内包する社会は、女性性だけにとって苦しい社会ではない。男性性にも、苦しい。
フェミニズムが目指しているのは、決して女VS男という構造ではない。
誰もが自分自身の価値観を大切にしながら生きられることなのではないかと思う。
しかし、時として男性を批判しているように映ることもあるし、だからこそジェンダー問題を毛嫌いする男性も多いように思う。でも、男性性として生き辛いことも多くあるし、フェミニズムが目指している世界は、決して女性のためだけのものではない。
どうしたら、消化しやすい形で表現できるのかが、目下の課題だ。

ジェンダーの問題は、文化的な価値観として、身についていることも多く、自分自身もその文化を継承し、実行しているものとして、ジェンダー問題の手助けしていることがあると自覚する。あのとき、自分自身は、どのように行動すべきだったのか、様々な反省すべき過去がある。

この映画で光として写ったのは、ジヨンの同僚のお友達の存在だ。
ジヨンを「母」としてでも、「女性性」としてでもなく、一人の友人のジヨンとして、助言してくれる。
そういう存在は、心強い。
ジヨン自身、自分自身のことを、「妻」としてでもなく、「母」としてでもなく、「ジヨン」として自分自身の人生を考え始める。
しかし、なかなか、自分自身の時間が取れない主婦にとって、自分が何をしたいのか、どんな仕事をしたいのかって、簡単に考えられるものでもない。
ジヨンがアイス屋さん(映画ではパン屋さん)で働きたいといった時に、夫が浴びせる「ほんとにしたい仕事なのか?」という問いかけは、とても残酷に聞こえる。
ほんとにしたい仕事の前に、社会と繋がりたかったり、違う空気を吸いたかったり…閉塞した毎日を変えたいという心の声は、なかなか届きにくい。

それに、「ほんとうにしたいこと」って、そう簡単にみつかるものでもないだろう。

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