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その土地で生きていくことへの覚悟と安心感

下町に根づいて暮らすってどんな感じなのかな。
よしもとばななさんの『ジュージュー』、主人公・美津子の生きざまは地に足がついたもの。追体験して、そういう人生もありだよなあ、と思いました。

おじいちゃんの代から続いているステーキハウス「ジュージュー」でお父さんと一緒に働く美津子。
数年前に亡くなったお母さんのことをいつも思い、お母さんの記憶とともに店で過ごす切ない時間。

その場所に長く居るということは、そのぶんその土地に暮らす人との出会いと別れを多く経験するということ。
地味に見える生活だけど、確実に時は進んでいて、変わらないことなんて一つもない。
そういったことをしなやかに受け入れながら、愛情をもって下町の人たちと一緒に生きている美津子が好きだなぁと思いました。

私は過去とか、血のつながりに伴うしがらみとかからはなるべく解放されたいと思っていて…
だから結婚して地元を離れられたことが嬉しかったんですよね。

でも、帰る場所があって、記憶があって、そこに行けば会える人たちがまだいてくれるというのは、当たり前ではないんだよなとも思いました。
自分のルーツがあるからこそ、安心してはばたけるというか。

今夫と一緒に住んでいる町に根ざした生活ができたらいいな。ここが、生まれてくる娘にとってのふるさとになるはずなので。


文庫版あとがきで「悲しくてどうしようもない話だ」とばななさんは仰っていましたが、私はそうは思いませんでした。

人の死、前世の記憶、身内の中での複雑な関係性、明るいばかりではない未来など、ばななさんの小説ではよく取り上げられています。
その中にたった一つだけ置かれた、清らかな言葉、それに主人公の心の美しさに癒やされるんです。

『ジュージュー』では主人公の新しい恋が始まる描写がとっても素敵でした。

相手の日常のワンシーンに思いを馳せる、これからその時間を末永くともにすることになるかもしれないと想像する…

私も、夫と付き合っているころはそうでしたからね(*´ω`*)
なんなら里帰り中の今、そういう甘酸っぱい気持ちになるとき、あります(笑)


作品の深いところまで読み込めないまま感想文を書いてしまいましたが、それもご愛嬌かと(;´∀`)
フレッシュな感想を書き起こせて満足です!!

画像はお借りしました。

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