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ゆっくり生きる『なぜ、「これ」は健康にいいのか?』小林弘幸 著

自律神経をコントロールするポイントは、ひと言でいうと「ゆっくり」。
「ゆっくり」を意識し、ゆっくり呼吸し、ゆっくり動き、ゆっくり生きる。

-小林弘幸著『なぜ、「これ」は健康にいいのか?』より

大学院生で自律神経失調症になったときにこの本を一度読んでいたのですが、今回改めて読み直してみました。


副交感神経を高いレベルに保つための「ゆっくり」

一般的に自律神経系は、
「交感神経の支配下では体がアクティブになり、活動的な日中はこの状態。
副交感神経の支配下では体はリラックスした状態になり、夜はこの状態。
相反する働きを持つ二つの神経系が、交互に体を支配することで身体機能が保たれている」と説明できます。

小林先生は、
「実際には交感神経、副交感神経がきれいにスイッチングしているわけではない。
体がもっともよい状態で機能するのは、交感神経も副交感神経も両方高いレベルで活動している状態のとき。
アクティブな状態では交感神経がやや優位、リラックス状態では副交感神経がやや優位になるが、どちらか一方に大きく偏ることは体にとって非常に悪い。
と仰っています。

現代人の自律神経のバランスの崩れ方は、交感神経が過剰に優位になるケースがほとんどだそう(副交感神経が過剰に優位で体調を崩している状態が「うつ病」に当てはまります)。
交感神経が過剰に優位になると、免疫力が低下したり、便秘になりやすくなったり。糖尿病になりやすくなるという見解もあるそうです。
そして、私が長年悩んでいた自律神経失調症の原因でもあります。検査で病変は認められないのに、めまいや頭痛、動悸などの不定愁訴がずっと続く状態です。

交感神経が過剰に優位になる原因のひとつが精神状態不安や恐怖のほか、時間を気にしたりあせったりするだけで交感神経が刺激されます
そのときには血管が過剰に収縮し、血圧も高くなって頭痛が起きる。
心拍数が急に増え、その状態が続くと不整脈を招く。
呼吸も浅くなって脳に十分な酸素が回らなくなり、思考力や判断力も低下する。

反対に、ほっと安心したときに心拍数が低下するのは、副交感神経が上がってくるから。
心拍数を下げ、浅くなった呼吸をもとに戻すためにも、ゆっくり呼吸、ゆっくり動く
下がった副交感神経を刺激する行動を心がけることで、交感神経が高い状態でも、体にとって良いバランスへ近づけることができる、ということです。

自分のための優先順位

小林先生も自律神経失調症に悩まされた経験があるそうです。
休んでもなかなか疲れがとれず、精神的にも短期でつねにイライラ。
仕事が大好きでろくに休みもとらず、どんなに体調が悪くても長時間働いてしまう生活。それなのに明日は仕事だと思うと気持ちが暗くなる。いわゆる「サザエさん症候群」になっていた時期もあったそう。

目の前の仕事にやりがいがあり、なおかつその仕事が好きだと、人はついつい仕事を優先して自分の体のことを後回しにしてしまいます。しかし、自分の体をいたわることこそが、その大好きな仕事でより高い成果を出す最善の方法だということがわかれば、優先順位はおのずと変わっていきます

『なぜ、「これ」は健康にいいのか?』より

副交感神経を上げるために「ゆっくり」を意識するようになったら、ベストコンディションを保てるようになったとのことでした。

体を大切にするというのは、単に体を休めれば良いということではない。
体が本来持っている機能が充分に働くように、状態を整えるということ。
休むこと、動くことの両方を、副交感神経を上げるために特化したメソッドで実践する。
それが健康維持に役立ち、日常生活や人生にとって大きくプラスになる。

これを大学院生のときに読んでいたのですが、自分のなかに落とし込めておらず、実践できませんでした。
先生に怒られたり、時間がなかったり、できれば失敗したくない実験(やり直しに時間がかかるため)を連続してやったり…緊張に焦りが加わり、常に交感神経が高ぶるような状態で体調を崩しました。
それを我慢してでも卒業のための研究と修論に時間を割かなければ、と必死になっていた時期。自分のことは後回しで、とにかく周りについていかなければと自分を追い込んでいました。

いったん壊れてしまった自律神経のバランスは、何年か経たなければもとに戻らないと思っていました(実際そうだったのですが)。それくらい、体調不良に裏切られることが多かったのです。
卒業までの時間が限られているなか、コンディションを整えることより目の前の課題の消化が何よりも優先でした。

それでも…ほんの少しでも自分にリターンが得られる可能性のあること、体と心を元気にするために役立つことができていたなら、もう少し状況は良くなっていたのかもしれません。
過去に戻れるなら、あの時の私に伝えてあげたい。

「穏やかな話し方」と「口角を上げる」

どんな風に日々の行動を変えればよいか、というノウハウについては本書で詳しく紹介してくださっています。
そのなかでも良いなと思ったのは、ゆっくり、穏やかに話すこと。

夫の話し方が、普段から本当に穏やかなんです。私は早口で理屈っぽく話してしまうので、結婚してからは「こんな自分嫌だな…」と思っていました。
私も夫のまねをして、なるべく穏やかに話すようにしています。一緒に暮らして3年経ちますが、少しできるようになってきました。明らかに変わったな、と実家で父母と喋ったときに感じました。

口調はゆっくり、優しいトーンで。
おのずと表情も柔らかくなります。

小林先生が影響を受けた研究チームの雪下さんも、いつも微笑みをたたえながら前向きに頑張っているそう。
その方はラグビーの選手としても活躍されていたのですが、試合で頸椎を骨折し、首から下の麻痺が残ってしまったそうです。
重い障がいを背負っても、つねに笑顔で人並外れた努力を続ける姿。「彼は完璧に感情をコントロールしている」と胸を打たれたそうです。彼と話しているとモチベーションが上がってくる、と。
私もこのエピソードに勇気をもらいました。

人並外れた才能がなくても、前向きな気持ちを忘れないという努力はできるはず。
ネガティブになることや愚痴を言うことが悪いとは思いません。人生は長いから、そんな時期があっても受け入れて、周りの助けを借りながらなんとかやっていけばいい。

心からの笑顔でなくても、口角を上げるだけでも精神状態をリラックスさせられるそうです。
穏やかに話して、柔らかな表情で過ごすこと

自分が気持ちよく生きて、周りの大切な人にも笑顔でいてもらえるようにするための努力を続けたいと思いました。

***

「なりたい自分」がまたひとつ増えるきっかけとなった、素敵な本でした。
出版は2011年なので、小林先生の研究で情報はアップデートされているかもしれません。
自分の健康とより良い人生のために、積極的にキャッチしに行きたいなと思います!

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