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18きっぷひとり旅 2019冬松本⑦甲府で途中下車編

甲府駅で下車し、県庁方面へ。2018年夏、林家たい平師匠の独演会で遠征に来た時には山交百貨店が、その1階にはスターバックスがあって、ここで仕事(委託されたイラストの最終校正)したんだっけ。2019年9月に閉店してしまった山交百貨店。観光や遠征で訪れるだけのワタシだけど、地域の百貨店がなくなるっていうのは、ご時勢とわかっていてもちょっと寂しい。

歩くこと5分弱。喫茶店「徽典館 (きてんかん)丸の内店」さんでコーヒーを飲むことにしました。お店の名前は、江戸時代~明治時代初期、この地にあった学問所「徽典館」にちなんでいるのだそう。
http://kitenkan.okoshi-yasu.com/index.html

落ち着いた、オトナの常連さんがまったり楽しめるような雰囲気のお店。
ワタシが訪問した時間には、ダンディなマスターがお一人で切り盛りしていらっしゃいました。いい、こういう喫茶店、非常にいい。
「横浜ブレンドをお願いします」神奈川県民が甲府に来て“横浜”ブレンドとはこれ如何に(笑)自家焙煎の深煎りブレンド。楽しみ。

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おお、お子様お断りな苦味。渋くてオシャレなオトナを思わせるブレンドは、なるほど“横浜”のイメージなのでしょうか。熱すぎない、適温。マスターがコーヒーを淹れてくださる現場(笑)は拝見できなかったけれど、ネルドリップなのかな。
昨日今日と飲んだ、松本のコーヒーとはちょっと質感が違う。やっぱりお水によって変わるんだなー。甲府は甲府で好き。

ほっと一息つき、ここまでの電車旅の疲れも癒えたところで、少し早い夕食を食べに行きましょう。今回のラストイベントは、山梨名物・ほうとう!
徽典館さんから駅へ戻る途中にある「甲州ほうとう 小作」さんへ。
http://www.kosaku.co.jp/

入店すると、夕食にはまだ早い17時過ぎにも関わらず、たくさんのお客で賑わっていました。出張と思しきビジネスマン&メンズが多いかな。電車に乗って帰る前にほうとうを! みんな考えることは一緒!(笑)
大きなカウンターテーブル席(主にお一人様用)へ着席。スタンダードな「かぼちゃほうとう」をオーダーしました。

20分ほど待ったので、その間の逡巡(大袈裟)を以下にまとめてみます。

甲府に来る度、小作さんでかぼちゃほうとうを食べている。おいしい、すごくおいしい。かぼちゃほうとうにはこれっぽっちも不満はないのだけれど、毎回オーダーする際、別のメニューも食べてみたい衝動に駆られている。
あずきほうとう。すいとん。食べたい。次回こそは、っていつも思うのに、結局いつもかぼちゃほうとう。冒険できない意気地なしなわけじゃない。
かぼちゃほうとうとあずきほうとうがいっぺんに収まる胃袋があったなら、迷わず両方食べてるよ! 胃袋のキャパには限界があるんだよ! 一人の胃袋じゃ、両方は入らないんだよ!
 
……そうか、誰かと一緒に来ればいいのか。二人でシェアすれば、両方の味を楽しめるのか。しかし「ほうとうをシェアしたいから」だけで、誰かを巻き添えにしてよいのか。否。そもそも、ワタシの(案外ハードな)鉄道しかも18きっぷ旅についてきてくれる人はいるのか。否。
大前提、ワタシはひとり旅が好きなのだ。そこは譲れない。
仕方ない、次に甲府へ泊まりに来ることがあれば、小作さんに連日通おう。毎日来て、違う味のほうとうを食べよう、そうしよう。

それにしても小麦粉って偉大だ。その形をいかようにも変える。細長くも丸くも四角にも、麺にもパンにもケーキにもなる。味も同様、しょっぱくも甘くもなる。人類が編み出した、料理という名のマジック。ひみつのアッコちゃんもびっくりの変身ぶりだ(たとえが古い)。
テクマクマヤコンテクマクマヤコン、小麦よ、ほうとうにな~れ!

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逡巡終了。鉄鍋に入ったほうとうが運ばれてきました。
味噌仕立ての汁に、幅広のほうとう。具は、かぼちゃ(目測で冷凍かぼちゃの2.5倍の大きさ)×2、じゃがいも、さといも、にんじん、白菜、ごぼう、山菜。汁・麺・具・鍋、全員が一丸となって、おいしいほうとうとして煮込まれているのです。これが山梨のOneTeamかー。ぐわー最強。

ただでさえ極太で重いのに、汁を吸って更に重くなった麺は、とてもすすり上げられません。箸でたくし上げて口へ持っていきます。はむはむ、むっちむち。やー、これです。食べたかったのはこれなんです!
かぼちゃも汁を吸って、甘くてうまいー。かぼちゃが溶けた汁も、どろっとしてうまいー。
最初はお行儀よくお椀に取って食べるのですが、終盤は「てーい、どうせひとりでたいらげるんじゃー、めんどくせー」と、鍋から直で食べるようになります。
この鍋は、このほうとうはワタシだけのもの! ワタシひとりだけのもの!だからひとりはやめられない!

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ほうとうの汁を最後の一滴までお腹に収め、甲府駅に戻りました。
今回利用している青春18きっぷは、利用当日最初の乗車時に改札で日付印を押してもらい使用します。その日改札を通るときは、自動改札ではなく駅員さんのいる改札で、日付印を目視で確認してもらうのです。ここでほんの一瞬ではありますが、駅員さんとのコミュニケーションが生まれます。

甲府駅では、若手駅員さんがおひとりでアナウンス中、改札ブースに入ってしまったんですね、ワタシ。アナウンス終わるまで待とう、ときっぷ片手に立ち止まったら、駅員さんはアナウンスを途中で止めてまで、18きっぷの日付印を確認してくれました。なんと誠実な実務か……‼
某駅の掛員さんはすっごい気さくで、「おっ!」って(笑)日付印押してくれたっけ。←好き。全然やな感じじゃなくて、笑顔で「おっ!元気に行っといで!」ってニュアンスでした。ソロの18きっぱーは「いっぱい乗るぞ♬」ってガチ勢が多いから、こういうお見送りなんだと嬉しく受け取ってます。

ホームでしばし18時39分発高尾行の電車を待ちます。前回来た時にあった、上りホームのスタイリッシュなお土産屋さんが変わってしまっていた……ステキなラベルデザインの山梨ワインとかを販売してて、感動したんだけどなあ。「電車に乗るギリギリまでお土産が買える」って、利用者としてはすっごい便利なんだけどなあ。停車時間が長い待ち合わせ駅や始発駅では、ホームのお土産屋さんも経済的に有効だと思うんだけどなあ。オシャレすぎて(でも女子が欲しがるステキデザインって、大事だと思うの! 時代よ、追いつけ!)ニーズに合わなかったのかなあ、採算取れなかったのかなあ。寂しいなあ。そんなことを考えながら、電車に乗り込みました。

ロングシートひとつに、乗客2~3人。夜の上り電車に乗ってるお客さんって、どこか優越感と余裕がある、気がします。
外はもう真っ暗。町場の少ない……あけすけに言うと田舎を走っているからか。時折車窓に、コンビニやガソリンスタンドの灯りが見えます。遠くには高速道路でしょうか、規則的に並ぶオレンジ色の光。
できっこないことは承知していますが、今自分が乗っているこの列車を、外から見てみたい。暗闇の中、高台を走り抜ける数珠つなぎの光。タタンタタン、タタンタタン、と眠気を誘う、列車と線路が刻むリズム。

ワタシにとって鉄道は「単なる公共交通機関」じゃない。
乗ってる間にも車窓を撮影したり、人を観察したり、考え事をしたり、うとうとしたり。乗ること自体が大事な「目的」であり「楽しみ」のひとつ。
もちろん、ワタシを別の場所に連れて行ってくれる「手段」でもあります。
行った先で、街を歩いたり、その土地のおいしいものを食べたり、知らない人と逢ったり、美しい景色を見たり。
旅心と、その先にある好奇心を満たしてくれる案内役。
そんな存在なのです。

往きと同じ経路をなぞるようにJR町田駅へ到着したのは21時前。ちょっと残業したのかな、それともどこかで一杯飲んでからかな、という人たちが帰路を急いでいました。日常に、帰ってきちゃったなあ。


以上、一泊二日の松本(最後は甲府)旅のようすをお送りしました。
おかしな擬人化食レポが満載で、およそ実用的ではありませんが、いつかあなた様の旅の参考にしていただければ光栄です。

松本(と甲府)の皆さん、ありがとうございました! 
また必ずお邪魔します!

いただいたサポートは、旅の軍資金として大切に使わせていただきます。次の旅を支えてくださると嬉しいです。応援よろしくお願いします!