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イメージ画像を企画提案に使うときの罠

完成予想イメージの権利問題から

大阪IRのイメージ動画で美術家の作品を許可なく使っていた件がニュースになったのを聴いた方も多いだろう。

ニュース番組では、コメンテーターらが「なぜチェックできなかったのか、ダブルチェックしてなかったのか」など、誰でもいえるようなコメントをしていたが、空間やイベント体験デザインなどを手がけている側からすると、チェック機能やルールとは全く違う「画像イメージを企画提案に使う時の弊害もある」と直感した。

Twitter でもその件をずらずらと記載したのだけど、note で改めて書き留めておこう。

なお、ここで記載することは実体験ベースではあるが、すべての企業、機関、担当者があてはまるわけではないこと(当たり前ではあるが)先に述べておく。

イメージ画像の必要性

今回の大阪IRの件も含めて、建築・空間・ロケーションイベントなどにおける公募やコンペ、企画提案などにおいて、その完成予想図(パースなどとも言われる)や想定イメージ、体験イメージなど「イメージ画像」が提案では必ず要求される。
空間や建築など提案を受ける側としては、パワポの図形や文字だけだとどうしても「イメージ」がわかないため、手書きや写真なりの画像や動画にして分かりやすくしていく。

特に、空間建築、アトラクションなどにおいては、世の中にはまだ同じモノコトがない状況で、ステークホルダーやオーナー、審査する側に提案や完成予想をしっかり理解・想像してもらわないといけない。サイネージやインタラクション系イベントの場合は、モックやプロトタイプなどを作って事前に体験してもらうこともある。とにかく、文字や言葉で伝わらない部分を補うため、イメージしてもらうために、見える画像・映像は重要な要素になる。
提案内容の理解と期待値が上がるし、提案側においても、提案される側においても、担当当者内でその提案内容を共通イメージできるようになるメリットもある。

百聞は一見にしかず、である。

イメージ画像の弊害

しかしながら画像・動画などの目に見えるイメージにした弊害も時に生じる。
基本的に提案内容に沿った、分かりやすい、クオリティの高い画像や動画素材を作れれば問題はない。しかし、それは理想論であって、提案側も予算や期間など様々な条件課題を残していて、提案時から「これになります。全くこれと寸分かわらないものができます!」なんて自信もっていうのは(ほとんどが)難しいはず。

充分な準備考察時間があれば、提案と完成後の乖離はミニマムにできるだろうが、公募やコンペなんて経験上、時間は限られ、かつ、受注できないと無報酬のままである。イメージはあくまでも補足的なもの、イメージなのだ。

そして一番厄介な問題がイメージを出したことで、これが完成形だと思われることだ。

  • 「この通り、最終的にできるわけだよね」

  • 「このパーツの側面は青色だけど、この青色で絶対確定ですか?」

  • 「このアーティストのもの置くの?決定?契約してきた?」

こんな質問が飛び交い出すのだ。
仮とはいえ目で見える映像にしたとたんに、それが最終系としてとられてしまい、その映像の細かいところ、本筋(与件等)関係ないようなところにに突っ込みが入り始める。

こういう「イメージができない人たち」を相手に説明するのは非常に骨が折れる。
彼らの言い分は、

「我々は君たちのように想像できないんだよ、だからぱっと分かるように、これができるってのを見せて欲しいだよ」

しかし提案側としては、細かい部分まで仕様決めして作り込んで完成させる、というのは提案を超えていて、もはやそれは制作業務・クリエイティブワーク、受注してからの仕事であって、かなり厳しい作業になる。

まさにチキンエッグ。

「私がわかる程度の完成品もってこないと判断できないから当然発注もしないぞ!全部つくってこい!」

某社の偉い人

とクレームしてきた某社の人たちに、

「音楽家にオリジナルのテーマ曲お願いするのに、全部聴かないと採択しない、お金はらわない、といいますか?画家にこの場所向けに絵を提供してもらうのに、とりあえず描いてください、決めるのはその後で、っていいますか?」

と言い返したら黙りこくったことを思い出している…(苦笑)

まとめ

SNSなどでもアイコンの写真はイメージです、なんて書いてあっても、やはり見ちゃうと勝手に人間というのは妄想・想像してしまう生き物である。
文字や言葉だけの説明だと抽象的すぎて具体性がなくなるため、画像なりの見えるモノ(イメージ)にするのは重要な過程だと思う。
しかしあくまでもそれは共通認識や具体的な印象や妄想体験のためであって、完成品ではないときもある。理想は最終完成品を最初から用意できることだろうけど、なかなかそうはできない。

私の仕事において、インタラクションなら体験できるプチプロトをつくったり、空間であれば、小さくても模型にしたりCGで簡単にウォークスルーできるようなVR空間をつくったり、場合によっては知人デザイナーに手書きで描いてもらうこともある。そうやって私(弊社)は、先方に歩み寄ろうと努力していることは伝えておく。しかし、今回のような罠というか問題は、時折直面してしまう…

おっと、大阪IRの件、これはチェックミスだろうけど、おそらく村上隆さんの花のデザインとか、奈良さんの犬のオブジェ、そのままじゃなくても、彼らに発注予定とかだったのかなーと思った。日本の著名なアーティストに依頼予定ってあたりは内部で決まっていたんじゃないかなー。ただ、それだとイメージわかないので、こららのアーティストって名前あげたところで、コピペ&改編しちゃった、、、ってのが私の邪推である。間違っていたらすみません!

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