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揺れ動く人の価値観と向き合うからUXは難しいし面白い

UXの難しさとして、
・人の価値観は人の数だけ違う
・その価値観も一瞬で変わってしまう
ことだ。

性別、年齢層、国である程度はくくれたとしても、皆が同じということは少ない。

100点満点のUXなんてのは存在しない

そして厄介なのは、1人の人の価値観や考え方ですら揺れ動くことだ。

インタビューやユーザーテストのヒアリングなど行う人は下記の話しは知っておくと良いだろう。

人はバイアスに左右されやすい

自動販売機などシステムは入力が同じならば出力は法則(プログラム、仕様)にしたがって出力は想像できるし一定である。寒い日にはなかなかボタンを押しても出てこない、といったあいまいさは基本的には存在しない。

一方、人間は同じ条件下での入力でも違う出力がでてくる。
何か問題を報告するにしても、その日の気分で返事が違う人がいるのは想像できるだろう。

ある開発中のシステムのユーザビリティテスト (UIのテスト)をしたことがある。
色々フィードバックに対して改善点を選び出し、それを約2週間ほどかけて実装しなおし、改めてそのテストした人達に触ってもらった。

このとき、実は数名、全く以前のままのUI、つまり、2週間前と同じ状態でさわってもらったのだが感想を聞くと、

・以前よりもキビキビ動いているように感じる
・こっちのUIのほうがいい

と、改善されてないのに、改善したかのようなコメントを出してきたのだ!

改めてお呼びがかかったから「改善されているものを触る」というバイアスがかかった可能性がある。なお、このテストの前に「改善しましたので...」とは全く伝えず、「前回と同じテストをしますので、素直にお答えください」と伝えた。

同じように、「これは弊社の次世代の〜」など伝えると、次世代=新しい=最先端なんだ!というバイアスがかかってしまう。実は、20年ぐらい前に考えたようなものでも、「最先端っぽいです!」なんてユーザーはしれっと答えてくれる。

これは、行動経済学のアンカリングにも近い行動心理ではあるが、ユーザーヒアリングやテストの時の発言は非常に慎重にする必要があるのが分かるはずだ。


価値観は前後の事象で揺れ動く

思い出して欲しい。同じ事象に起こってもその時の気分で人間は違う言動をとる。

街中で人とぶつかった時、真っ先に「すみません」といつもは出るのに、イライラしていたから無言で通り過ぎた、とか。その時の心理・感情状態、つまりそれは事前の環境や状況から影響を受けて人間は出力(言動)が変わる。つまり、価値観や考え方が意識してない中で変わっている。それは実に人間らしいと自分は思う。

そんな思わせぶりが、体験価値設計するときには牙を向く。

カスタマージャーニーマップやヒアリングを重ねて大丈夫と思っていても、自分の担当ではないところで、ユーザーが「イライラ」を重ねていて、そして自分の担当のUIやサービスのところで、ニュートラルな感情ではない体験を生み出してしまう。

インタビューや記述式アンケートで、同じような質問がちょこちょこ出てくることがある。これは、その前の質問の影響をうける人もいるため、なんども同じ質問を聞いて、その影響を減らすための工夫である。そう、事前の質問や内容で人間は、価値観や考えが変わってしまう動物である。これは非常に厄介だ。

日本人に強いバンドワゴン効果

人はそれぞれ自分のこだわりや価値観というのを持っているはずだ。私は、絶対これだけは自分の信念がある、評価軸をもっている、といっていても、案外それも翌日になると変わってしまうことがある。

ここで行動経済学で有名なバンドワゴン効果を取り上げよう。バンドワゴン効果とは、

バンドワゴン効果(バンドワゴンこうか、英: bandwagon effect)とは多数がある選択肢を選択している現象が、その選択肢を選択する者を更に増大させる効果。-- wikipedia より

と記載がある。

上記にも記載があるが、
・「みんなやっているから安心!」
・「みんな持っているから自分も欲しい!」
・「テレビで流行っているっていってるし、乗らないと!」

日本人といえばバンドワゴン効果、と教えられたぐらいなのだけど、改めてマーケッティングなど調査するとこれは日本人らしい行動心理である。

日本人のバンドワゴン効果についての是非を言い出すと炎上しそうなのでやめておくが、とにかく、昨日まで「アニメ?はぁ?子供の見るものでしょ?」なんていった人が翌月合うと「推し柱は〜」なんて言い出す。

UXデザインでは恐らくバンドワゴン効果を敢えて利用することは少なく、そこを期待して体験デザインしてしまって、まさに外してしまうと、全く相手にしてもらえなくなってしまう。

Clubhouse の日本における一瞬のブームは、まさにバンドワゴン効果であり、UXデザインの戦略として行われたわけではない。これを予測するのはUXデザイナーとしてはなかなか難しいのではないか。

まとめ

消費者に、何が欲しいか聞いてそれを実際与えようとしてもダメだ。完成するころには、彼らは新しいものを欲しがるだろう。(Steve Jobs, 1989)
テスト中に、誰もが大きいのが良いとコメントした。大きい筐体にして売り出したら、「こんなに大きいのはいらない」と叩かれて競合他社(ゲームボーイ)に顧客が流れてしまった。(リンクス設計者)

これらの言葉は、顧客は何を欲しいかは実際はわかっていないという話であるが、同様に、体験価値や考え方は人間なので刻々と変化していく。

それは時代の流れや環境にも左右される。コロナ禍において、我々は様々な価値観が変わってきている。出社する意味とは...

こんなに複雑な人間を相手にするのだからUX/CXデザインは難しい。だからこそ、長年コンピューターと触れていた自分にとっては、その不確実性、つまり、人間らしさ、が面白い。

「思わせぶりな人の価値観や感情を先行して読み、
本人が気付かないよう、うまくその体験に導くこと」

これが私の顧客体験創り(UX活動)におけるモットーである。


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