記憶の風化。
あの日、私はまだ小さかった。
小学生にもなっていなかった。
外はまだ暗かったと思う。
大きな声で目が覚めた。
お父さんとお母さんの声だ。
「お父さん!危ない!」
お母さんが、叫んでいる。
お父さんは、私のそばに置かれていた、大きな本棚を力いっぱい押さえている。
「本棚から離れなさい!」
そう言っていたように思う。
何が起きているんだろう?
寝ぼけていて、よく分からない。
「お父さん、ロウソクってうちに置いてた?全然電気が付かへん。」
「ラジオは、あったよな?」
少し時間が経つと、お父さんとお母さんが物を探し回って忙しなく動き始めた。
「どうしたの?」
声をかけていいのか分からなかったけれど、聞いてみた。
「ものすごい揺れてたんよ。ぐにゃぐにゃで、こんにゃくの上に乗ってたみたいやったわ。」
こんにゃく。
私が小さかったから、分かりやすいように伝えてくれたんだと思う。
いつもと違う光景に、だんだんと怖くなってきて、布団に潜り込んだ。
そういえば妹は、大丈夫かな…
妹を見ると、ぐっすり寝ているようだった。
いつもと変わらない日常を過ごしている妹。
その姿を見て、ものすごくホッとしたような気がした。
先日、NHKのかんさい熱視線という番組を見ました。
阪神淡路大震災に関連した内容でした。
あれから27年が経過して、風化が懸念されています。
番組では、風化と向き合い奮闘する方々を取材していました。
私は当時、震源地から少し離れたところに住んでいました。
小さい頃の記憶はほとんど残っていないけれど、あの時のことは、ものすごく心に残っています。
私が体験したことは、他の方に比べたらほんの小さなことだったかもしれない。
だけど、風化に向き合い奮闘する方々を見て、私も忘れないうちに少しでも書き残そうと思いました。
毎年、この時期になると関西の番組では震災に関連した映像が流れます。
それを見ながら、自分の身の回りで何かできることがないかを考えるようにしています。
どこまで備えるのか、いつまでやるのか、何が正解なのかは分かりません。
実際起きたら、動けないかもしれません。
でも、あの時のことを心に刻みながら、できることから積み重ねていきたいです。
去年、この記事を書こうとしましたが、どうしても書き上げることができませんでした。
たくさん考えて悩んで書いていたのに、途中で消したように思います。
記憶を風化させないことについては、賛否両論あると思います。
この記事も出そうか悩みました。
でも今日は、誰かに話したい、残しておきたいと思いました。
今、ここに存在していること。
家族がいること。
いろいろなことに感謝をして、また明日からも生きていこうと思います。
犠牲になられた方々のご冥福をお祈りいたします。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
以上、みいちゃろでした。