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☆本#262 平等「ブラックウェルに憧れて」南杏子著を読んで

医学部で知り合った4人の女性と、初の女性教授がメイン。医学界の男女差別や、それぞれが直面する仕事・私生活が描かれて、一気に読んでしまった。
著者も医者で、といっても、いったん大学を出て、就職して数年働いた後にまた医学部に入りなおした変わり種。そういえば、NHKのアナウンサーが番組に触発されて、40代で医者になるため会社をやめたという話を聞いたことがあるので、アラサーで医学部へいくのは全然遅くない。
で、おそらくこれを書いたころは50代なので、世代差が出ている。

とはいえ、医学界も思った以上に男尊女卑。以前、新聞の記事で、大学の研究者だった女性が妊娠したとたんクビになった話があって、そこも独特の世界で、一般企業でいうなら、ワンマンカンパニーの社長のような教授のもとの研究って大変。けど、当時女性を受け入れる教授が少なく、ひどい仕打ちを受けても意見せず、紹介等のちの待遇を考えると泣き寝入りが普通だとか。

この作品の主人公たち、大学で知り合った女性4人はアラフォー。それぞれ悩みがある。認知症の父親の世話とか、起業した夫との衝突とか、突然夫が出て行って離婚を求められたり、頑張って手術技術を高めていたのに後輩にリーダーの座を奪われ、いろいろ考えて退職願いをだすと引き留められることもなかったり…。でも、認知症の父親を施設に預けて仕事を頑張ることを決めたり、離婚を決めたり、結婚して家のクリニックを継いだり、それぞれ人生に流されず、新たな決断をしていく。

構成は、初の女性教授から始まり、4人のエピソードが入り、最後に女性教授で終わる。伏線がきちんと回収されていてすっきりする。なぜこの4人だったのかとか、最後にどうなりそうかとか、わかる。

タイトルのブラックウェルとは、アメリカ初の女性医師の名前。当時女性は看護婦で、医者は男性の仕事と見なされていた。それを、病気の友人の言葉で、彼女は医者になることを決め、27歳で医学大学に入学する。それが、1847年。19世紀半ば…。日本は江戸時代…。
しかも、入学までも大変で、女性ということでどこも入学許可をくれない。受け入れてくれたところも女子学生の受け入れを在校生の投票で決めたり…。入学後も、いやがらせや女性であることで解剖はさせてもらえなかったり…。けど、2年後主席で卒業した。

現在のアメリカが男女平等かというと、まだ100%平等ではないことは、女性役員の比率等からもわかる。人口が多いのもあるし、故に保守的なひとも多いせいか、北欧と比較するとまだまだだ。

韓国のニュースを思い出した。女性の管理職を増やそうとしたところ、若い男性から女性ばかり優遇するな、という反発がでたとか。日本でも、若い男性ほどフェミニストが嫌いだという記事を読んだことがある。
ひとまず比率的に男女が同等になってから、女性優遇やめろとか言うならまだしも…。

今の10代が60代になるころにはもっと男女平等になっているだろう。明治の家父長制の呪縛が解かれてきた40代の親を持つ子なら、男女平等が当たり前だろうから。

ちなみに、日本で初の試験合格で医者となった女性は荻野吟子というひとだった。28歳ごろ、大学を主席で卒業。卒業後医学学校へ入り、そこを卒業後開業しようにも、女性の前例がなかったため開業試験を受けられず。でも、支援者の助けや自身の粘り強さでなんとか試験を受け、1885年(明治17年)試験に合格(3人受験した女性のなかでただ一人)し、翌年医院開業する。ブラックウェルは、パリで腕を磨き、NYで開業し、医者として成功しているようだけど、荻野吟子は女性であるから信用できない等で成功までは至っていない模様…。

明治・大正時代の女性は、激動の時代、外国との交流増加等で、強く賢く積極的な人が多い印象。
とはいえ、荻野吟子の調べによると、日本では奈良時代に女性医師はいたようだ。

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