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☆本#279 過不足なしとその先「翻訳問答 Lost and Found in Translation」片岡義男x鴻巣友季子著を読んで

翻訳兼作家と専業翻訳家が、有名な文芸やミステリー作品の一部分だけ訳して比べて意見する。翻訳に正解はないと聞くけど、二人の訳も多少表現が重なる部分があっても、違いが明確で面白かった。

専業翻訳家の訳はまさに過不足なし。原文にある言葉がきちんとすべてひろわれている。が、作家が訳すとなんというかさくっと読みやすかった。もちろん、原文の意味はそのままでより日本人にわかりやすく言葉と順序を選んでいる感じ。なので、意訳とはちょっと違う。

この翻訳の対比を見ていて、村上春樹と柴田元幸の「翻訳夜話」を思い出した(出版は確かそっちのほうが先)。ここでも、専業翻訳家の訳出は過不足なく、作家のほうは作家のテイストが見受けられた。なので、翻訳本としてはもしかすると、専業翻訳家のほうが過不足なしという観点では勉強になるかも。
ただ、読みやすさだと作家のほうがなんというかスムーズ。

片岡義男の本を読んだことはあるけど、今回年齢を知ってちょっと驚いた。そんな高齢だったのか…。それと、親がアメリカの日系2世で、本人は日本で生まれたようだけど英語環境にいたことも初めて知った。だから、文中で英文の解説が深かったのかと納得。ある意味母国語だし。
最初は翻訳の仕事をしていたとは知らなかった。ただ、小説がなんか西海岸っぽいというか洋風なイメージがあって、それはアメリカと縁のある人だったからか。

子供時代に海外で英語を学んでも語彙が子供英語で、帰国後大人の語彙等はなかなか増えないと聞いたことがある。あるハーフの人は、外資系企業に入社後、周りの外国人の英会話やビジネストークから語彙・表現を吸収したという。帰国子女で英語の資格をもっていても、技術を学ぶ・向上させるために通訳・翻訳学校へ行くという話も聞いたことがある。彼も翻訳の仕事をする前後に、英語についてもさらに勉強したのだろうなと思う。

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