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☆本#314-7 「蛇を踏む」「センセイの鞄」「大きな鳥にさらわれないよう」「真鶴」川上弘美著を読んで

「蛇を踏む」は表題を含む短編3作。表題は、くまの話を含む短編を数冊読んでいたので同様のファンタジー系を想像していたら、SFホラー的で驚いた。
「消える」も設定が奇妙で、家族が消える家系と縮まる家系が出てくる。後者は息を吸うように口づけされると体が縮む。そして元に戻らず…。
どの短編も体に何らかの変化があり、元に戻らず終わる。主人公らは淡々と受け入れる。
前に長編も数冊読んだけど、短編のほうがいいと思う、個人的には。

「センセイの鞄」
アラフォー女性と30歳年上の元国語教師の、居酒屋での出会い、交流、恋愛が、ゆるやかに描かれる。
主人公ツキコさんは著者の短編によく出てくる謙虚というか無欲っぽくて自由なタイプ、センセイは博識で言葉使いが独特でお茶目。ほのぼのしつつ辛口で、嫉妬もあり、主にその町の人間関係で、別れもある。
この作品がその世界観やキャラから一般受けしたのはわかる(特に中高年男性に受けたようだけど、30歳も年下の女性との恋愛なので)。
歳の差は、二人の関係が気の合う仲間的な始まりで、ああ言えばこう言う的な相性の良さがあり、愛情を抱くまでに相応の時間の流れがあるので、違和感ない。
著者の作品によく出てくる幻想世界の「何かの中間みたいな場所」も出てくるけど、それより二人の日常ややりとりの方が主流。
センセイは常に理路整然としてるけど、幻想世界に紛れ込んだ時、「ここは、まあ、ここですよ」ってセリフが、微妙に適当でいい。
最後がちょっとかなしい。想定出来ていても。

「大きな鳥にさらわれないように」
短編。同じ世界だけど、主人公はそれぞれ違う。タイトルは、その世界をやんわり表現しているように思う。
ここでは、著者のいわゆるSFホラー寄り。あからさまなホラーではないけど、設定や秘密が奥深い。

「真鶴」
長編。子供のいる女性主人公が失踪した夫を探し、真鶴に行く。ところどころ精神世界的で、著者特有の人間界以外があって、境界線があいまい。

ここ数週間この著者の本をメインに読んでいたので、そろそろ食傷気味…。

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