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☆本#65 時代と仕事 「落下狼藉」朝井まかて著を読んで

数年前台東区の吉原近辺に行ったことがある。大門跡はあるけどもちろん当時の面影はない。

この時代小説は、その吉原の創業に尽力した男性の女将の話。太夫向きではない器量だったので結局裏方にまわることになった。

思うに、江戸時代のほうが女性は職業婦人だったような。。。内職も含めて。貧乏だったから働かざるを得なかったのかもしれない。遊女の場合は事情が少々違うけれど。

戦があれば遊女もつれていくというのは初めて知った。食事から夜までの世話役だったようだけど、これって慰安婦に繋がる...。

ここ数週間ぐうぜん時代小説を何冊も読んで気付いたのは、昔は養子って特別なことではなく、身分に関係なくだれにとっても普通に選択肢のひとつだったこと。今のところどれを読んでも、子供の数が多いとか、結婚するため身分を整える、出産による母親の死、貧乏だから等々で子供が養子に出されている。あるいは、養子を育てている。誰から生まれたより、誰に育てられたかが大事。

山本周五郎の小説は、根幹に「人情」「人を赦す」というようなことがあるように思う。小説の最後に、「近視眼的にならず、物事を俯瞰して見たら」、的な示唆があるというか。

朝井まかての小説にはそういうのはないけれど、描かれる女性が現在の女性と発想的に共通点がある、と思う。時代が変わっても、変わらないモノ。だから、この作家の作品を読みたいと思うのかもしれない。

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