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☆本#74 江戸時代の介護の仕事と母娘の確執 「銀の猫」朝井まかて著を読んで

朝井まかての小説は江戸時代が舞台なことが多くて、これもそう。

内容は歴史上の人物に基づいたフィクションではなくオリジナルで、バツイチの女性が母親の借金を返すため介護職をし、介護した人々や、職場の人々との交流を描いた作品。バツイチといっても嫁いだ年齢が若いのでまだ20代。

江戸時代には北斎のように意外と長寿の人もいるから介護のニーズはあったと思うけど、そういうことをテーマにした小説は珍しいような。でも、時代は違っても人間関係で起こることは同じ。

時代小説を読むと、江戸時代に離婚や再婚が結構多いことに気付く。
結婚年齢が10代後半ごろなので、例えば子供ができないと20代前半で離縁されたり、夫が武士だと切り殺されて若くして寡婦となったため再婚したり。独り身だと周りがほっておかないし、昔のほうが伴侶がいなければならなかった時代な気がする。現在より周りの関わり度が濃いので本人の選択の自由も狭まる。

主人公が介護というハードな職で働く理由は過去の経験から来た信念もあるけど、そもそもきっかけは母親の借金返済のため。その浪費が止まらない美貌の母親はいい出会いがあって結婚を決めるけど、娘の承認が欲しいという。夫となる相手の男性は男気のあるひとで、彼も娘の承認を待つ。

血のつながる親子でも、いや、血の繋がりがあるからこそ、こじれるとなかなか互いに素直になれない。けど、主人公は最後に気付きがあって歩み寄る。

人間関係は喧嘩ができる間はまだ大丈夫なのかも、と気付かせてくれた作品。


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