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☆本#247 依存と責任「君がいないと小説は書けない」白石一文著を読んで

著者の本は、十数冊ほど読んだことがあるけど、終わり方があまり好きではないので読むのをやめていた。が、このタイトルはなんとなくこれまでと違うような気がしてい読んでみた。ら、自伝的小説で、かなり事実ベースと知り、驚いた。というのも、38歳の時家を出て妻子(子供は13歳)とはそれ以来会ってないという。しかも妻とは未だに離婚できていないようなんだけど、いいのか、それを本にしちゃって。報復が怖いようなことも書いているのに。

内容は、文芸春秋に勤めていたころの30代から、現在の近況まで。

家を出て2年後パニック障害を経て、小説を書き続けていくにはだれか必要だと思っているとき同じマンションで現在の事実婚妻と出会う。年の差14,5歳。妻は子供を望むも、代わりに猫を4匹飼う。後半妻の浮気問題が浮上するけど、それで彼女がいない人生はイコール小説が書けないと帰結し、依存継続。

どこまでフィクションかわからないけど、そもそも妻がどこかへいってしまう設定をラストに置くつもりが、想像でさえ「無理」だったらしい。自分が先に死んだあとは、再婚して幸せになってもらいたいようだけど。

会社員時代の人間関係や、どうやらその人間関係から小説の登場人物が作られていたのかなというのがわかる。人脈が広く、すでに死んでる人も離婚再婚愛人といったドラマ経験者も多い。
直木賞より芥川賞の選考員のほうが対応が人間的?というのは主観かもしれないけど、ちょっと気になった。

ところどころ、これはあの小説の設定に似ているようなといくつか気付く。

著者は男女雇用機会均等法前の就職なので、当時女性の同僚は短大卒のみだったとか。で、彼の考え方自体が古いなと思う箇所あり。確か、明治生まれの児童文学者石井桃子が4大卒後数年仕事をしたのが文藝春秋だったと思うけど、当時も男女差はあったのだろうか。彼女の文中では対等な感じがしたけど、彼女は長居せずフリーランスになっていったのでよくわからない。桐島洋子も出版社勤務だったけど、著者がいうような補助編集員プラス業務担当だったのだろうか?こちらも途中で退職して従軍記者になったりしたけど、そもそも彼女の時代、女性社員はアシスタントでいずれ退職していき、男性が出世していく流れが主流だったのだろうな。

しかし、著者は混雑した電車内や、人込みや、人との触れ合いが致命的に病的に無理、という症状を持つのに、よくまあ東京で生活できていたものだ。それらの無理がたたってパニック障害だったようだけど。

著者は、文学賞の選考委員のオファーを断り、あまり公に出てこない理由が読んでてなんとなくわかった。最初の妻の件も突っ込みどころ満載だ。

そして、現妻に対して、浅い的表現をしている箇所があり、つまり自身が細かく観察し、記憶するのに対し、妻は適当というか細かいことにこだわらないというか、物事に対し深くないというか。でも、読んでてちょっと差別的だなと感じた。とはいえ、そういう対極さがふたりがうまくいっている秘訣なのかもしれない。

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