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☆本#62 命と使命の重さ 「樅ノ木が残った」山本周五郎著を読んで

期待を裏切らない江戸時代の大河ドラマだった。

青空文庫で読める。

この作品は山本周五郎の中で一番映像化されたものらしい。時代背景、人間模様、登場人物の性格はしっかり描かれている。でも主人公の甲斐は本心を表に出さない。彼は喋りたがりではなく、読み手は想像するするしかない。

江戸時代の武士の小説には、武士の融通の効かない性格・生き様、個人ではどうしようもできないしきたりや忠義心、一夫多妻制、貧しさ等がほぼもれなく出て来て、現在と比べるとほんと大変そう。若くして病等で死ぬ人も多く、命がとてもはかないから、生き延びることに価値や意味を強く感じてしまう。

甲斐にとって生き延びるということは優先でない。

最後、自分の命はもちろん、自分の子供達や格式ある家もかけて藩を守る。それが彼の使命で義務だった。

ちょっと引っかかるのが、最後のページの若干ファンタジーなシーンだ。微妙だ。

この小説は史実をベースにしていて、基本的にほかの本では甲斐は悪役として描かれているようだ。同様の史実ベースというと「忠臣蔵」の吉良上野介は悪い人の印象だけど、家臣や周りからは嫌われていなかったと聞いたことがある。

ひとは、多面的なのだ。




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