ブレンド型学習⑤高校英語実践(後編)
前任校と今の学校でやっている、ICTを活用した授業の記録です。
前編はこちら。
後編は、FormsやGoogle Classroomを使った例です。
弱点の事前把握
「次の授業までに、この演習問題解いておくように~」
受験を前にした教科指導で、よくみられる光景です。
この次の授業では、1から10全てを話すより、比較的理解が弱い部分にフォーカスしていく方が効率が良いのですが、なかなかその把握が難しい。しかも、相手は30~40人。
途中から学年に入った場合(1年の時は教えていなくて2年から入るとか)目の前にいる子達が、何ができて何ができないかを把握しづらいことって、ありますよね。
この課題を解決するためにICTを使った実践を2つ紹介します。1つは前任校での文法指導、もう1つは現任校でのリーディング指導です。
Formsを使った文法演習
前任校で取り組んだ実践です。
関係詞の項目で、事前にMicrosoft Formsで問題を配信(もちろん生徒限定公開)します。(前任校ではTeamsを使っていて、クラスごとのチームがありました。)
解答は送信後にすぐ表示されるように設定しておきます。直接的フィードバックの要素ですね。この設定にした結果、間違えた問題に何度もチャレンジする生徒も見られました。(生徒数は35名程度だったのですが、応答数が44になっているのはそのせいです。)
授業では、演習問題全てには触れますが、ここであがってきたデータを基に、どの問題に時間をかけるかを決めます。
授業の最後には、正答率が低かった問題の応用問題で理解度確認。これは、学校でやる時は紙媒体で(スマホの電波が入らないためw)自宅で取り組ませるときは、Formsで配信していました。
この方法のメリットが、スマホで全てできること。
PCだと、このFormsに取り組むためだけにPCを立ち上げるの、結構面倒だったりします。スマホなら、帰りの電車の中でもできますし、机の上に置いても場所をとりません。スマホで確認しながら、ノートをとっている生徒もたくさんいました。
マッピングを使った英文読解指導
「文章が読める」「読解力がある」って、どういうことなんでしょう。
・文字を見ている
・音読ができる
・日本語に訳すことができる
・・・からといって、読む力があるとは限りません。
文章の理解には、語彙の知識、文法の知識、内容に関する背景知識などが重要な要素とされています(Long & Aldersley, 1984; 卯城、2009)。
そこで読解活動として、マッピングに取り組ませています。
単元の最初、語彙のインプット活動にかなり時間をかけて、その後、文章を読みながら、本文中の各名詞同士がどのような動詞で繋がっているかを書かせます。授業内ではなかなか終わらないので、続きは自宅で取り組ませて、そのハンドアウトの写真をGoogle Classroomを通じて送らせます。
これで終わってしまったら意味がないので、送られてきた写真をざーーーーっと見て、読めている部分、勘違いをしている部分などを把握していきます。時間があれば、送られた写真にマーキングをして、フィードバックコメントを添えて返却しています。
あとは、先のFormsの例と同じです。どこに焦点を当てるかを考えながら、次の授業を組み立てていきます。
授業の最後には、アウトプット活動として、イラストを見ながらリテリング発表をさせています。今は私が作ったイラストのスライドですが、後期からはこれを生徒達に少しアレンジさせて発表させていきたいと思っています。
それぞれの特性をどう使うか
今回は、前任校での実践の備忘録も兼ねて、Flip、Microsoft Forms、Google Classroomを使ったものを書いてみました。
基本は従来型の授業なんですが、従来はしたくてもできなかったことを、それぞれのツールの特性を生かして叶えた形です。
今、GIGAスクール構想が進められて、「どのツールをどう使ったらいいのかわからない」場合、Pitlerら(2012)の分類が結構参考になります。(7)と(9)だけ英語になってますが、(7)は対話学習型、(9)は感覚学習型です。
対話(フィードバック)を重視した音読指導では、(4) コミュケーションツールにあるFlipを活用しました。この活動は、TeamsやGoogle ClassroomなどのSNSでも、同期型ならZoomでも可能です。
弱点把握を重視した文法指導では、(3) データ収集のFormsを活用しました。リーディング指導では、写真の提出を求めたことと、フィードバックもしたかったので、(4)を使いました。
他にも、(3) データ収集系は、授業の理解度確認として、⑥評価とフィードバックの時に使えます。
(2) ブレスト系には、Jamboardやmiroが該当しますが、これは最初の①Warm-upで使えます。非同期でも使えるので、授業に入る前に入力を指示しておくこともできます。
注意したいのは、あまりツールを多用しすぎないこと。
ツールの切り替えにばかり気がいってしまって、大事な学習に焦点が当たらなくなってしまいます。
ブレンド型学習で最も重要になるのは、学びに焦点を当てること。
具体的には、学習者がおかれている状況(コンテキスト)を理解し、それに合わせて学習方法を設計する、つまり、何を、なぜ、どう組み合わせるのかを考える、こと。(ブレンド型学習①参照)
結局は、授業で何をしたいのかが重要で、ICTは単にその目標を達成する手助けをするもの。ICT活用が広がっても、ここだけは忘れずにいたいものです。
<参考文献>
Long, G., & Aldersley, S. (1984). Networking: Application with hearing-impaired students. In Spatial learning strategies (pp. 109-125). Academic Press.
Pitler, H., Hubbell, E. R., & Kuhn, M. (2012). Using technology with classroom instruction that works. Ascd.
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