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映画「オンステージ」に向けて

友達の有馬くんが、映画を撮影する。
東京在住ながら10年以上銚子に通い、ついに本気で作り始めるという。
「オンステージ」というタイトルで、テーマは「死を考えることは、生きること」。まさにメメント・モリ(死を想え)を真正面から取り組む。

テーマ自体は彼のこれまでの作品にも共通しているものだけど、これまではわざわざ言わないという姿勢を貫いていた。
今回はそれを堂々と言う。
彼は映像の仕事をして得たお金をつぎ込んで、自分の映画を撮影する。
売れっ子監督ではない彼が今回のコピーを堂々と言うことは、かっこ悪くても裸で挑むぞ!といった感がある。
僕はその姿勢をかっこいいと思う。

ADHDもある彼は、飄々としていてずっとしゃべっていて、一見軽薄にも見えるほどだ。
だけど、この重たいテーマを扱うしかなくて、それが映画という非常に手間のかかる方法が最も近いからやっている。
普段のキャラクターとの落差が激しいので意外に感じる方もおられるだろうけど、表層的にはそうするしかないからだと思う。

彼は元々理系の会社に就職していたが体調を崩して辞め、大きな挫折を味わった。
体調を崩したという目に見える問題だけでなく、自分の基盤となっていたレールがごっそり抜け落ちるみたいな感覚だったはず。
生きるためには人生のレールの再構築が必要になる。

それから映画を撮ろうと決意して、高度なデッサンを学んで美大に入った。
これは、一種の出家みたいなものだと思う。
死を扱う作品は深くていいですよね〜!とかそういうんじゃない。
彼自身が、止まってしまった心の時間を生きている。

身近な人の死や、人生の失敗を通して、心の時間が止まってしまうことは誰にでも起こりうる。
それでも体は心臓を動かし続け、必死に生きようとする。
脳の命令と体の命令がぶつかる時には、体の命令に従わないと命が危ない。
命は大事で、人を殺してはいけないということが社会生活の基盤になっている。
それなのに死の経験者はこの世にいない。
実は「死への想像」が人間が人間である起点かもしれない。
彼は映画を通して「止まった時間を動かすこと」に取り組んでいるように思う。

有馬監督はクラウドファウンディングで支援者を募っているし、お金以外のあらゆる助けも必要としているけれど、それより何より彼が何者で何に挑戦しているのかが伝わらなければ応援のしようがないと思う。
よくわからないけど余所者が何かするのね、で終わってしまうのはあまりに勿体無い。
直接的な方法ではないけれど、自分のためであり、地域のためでもある。なぜなら、命のためにやっているから。
僕は、そういう挑戦を応援できる人でありたいし、挑戦できる世界に生きたい。
成功を願っています。


僕は「このメインビジュアルはすごくかっこいいけど、クラウドファウンディング向けの映像、特にBGMが暗くてホラーじゃん!ホラーは嫌いだよ!」と言いまくりました。だけどそれは「無名の監督はまず目を引くことが必要だからで、下の文章を読んで欲しいんです。映画は完成したらもっとポップになります!」と、有馬監督に言われ、死というテーマを扱う上でも一定のバランスを取っているのだと思いました。芸術や死を盾にした暴力について、自分が突っ込める限り突っ込ませてもらった結果、「応援したい」という気持ちになりました。



映画「オンステージ」

※もしもこの記事に投げ銭をいただいた場合、全額を映画の製作費に寄付します。また、銚子市外川町の島長水産さんではアナログファウンディングをしてくださっています!

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