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ブンデスリーガ監督紹介 2024/25シーズン 前半 FOKUS Bundesliga!!! #10

前書き
 2016年以来、ドイツ・ブンデスリーガは2人の人物の影響下にある。1人はラルフ・ラングニック。レッドブル・ザルツブルクとRBライプツィヒのスポーツ・ディレクターを務め、戦術面と選手補強をマネジメントしたことで知られる人物だ。ロジャー・シュミットなど、ラングニックの影響を受けた指導者たちがブンデスリーガの強豪クラブで指揮をとり、DFBポカールやヨーロッパリーグのタイトルを獲得している。

 もう1人は現ドイツ代表監督のユリアン・ナーゲルスマン。ナーゲルスマンは2015年10月に、わずか28歳でホッフェンハイムの監督に就任。当初、クラブは残留を争っていたものの、2018-19シーズンには彼の指導のもとチャンピオンズリーグ出場を果たした。ホッフェンハイムがユース年代に優秀な若手指導者を集めていたことも相まって、ナーゲルスマンの影響を受けた指導者がブンデスリーガで指揮をとるようになってきている。

 能動的にせよ、受動的にせよ、多くのドイツ人指導者が彼ら2人の影響を受けるなか、2024/25シーズンのブンデスリーガで監督を務める人物たちを紹介する。


1. シャビ・アロンソ Xabier Alonso Olano

バイエル・レヴァークーゼン 監督
生年月日:1981年11月25日
出身:トロサ, バスク州ギプスコア, スペイン

 1部レベルのクラブを率いてわずか2シーズン目のシャビ・アロンソ率いるレヴァークーゼンが、ヨーロッパリーグ決勝を除くすべての公式戦で無敗を記録し、リーグとポカールの2冠を達成したことは昨シーズンの欧州サッカー界で最大のサプライズの1つだった。ジャカグリマルドアンドリッヒといった実力者たちがその能力をいかんなく発揮し、才気煥発なヴィルツが試合を決定づけるプレーを見せる。リーグ戦では89得点24失点を記録し、攻守に隙のない「天衣無縫」とも呼べるチームを作り上げたのだ。

 何より人々を驚かせたのは、シャビ・アロンソが欧州屈指の強豪クラブからの誘いを断り、2024/25シーズンもレヴァークーゼンの監督を続投することを決めたことだろう。ポジショナルプレーを基調とするチームの完成度はリーグ随一で、ライバルとなるであろうバイエルンとドルトムントは監督を交代したばかり。リーグ連覇を阻む「障壁」はほとんど無いなか、シャビ・アロンソとジモン・ロルフェスのチームがどんな発展をみせるのか楽しみでならない。


2. セバスティアン・ヘーネス Sebastian Hoeneß

VfBシュツットガルト 監督
生年月日:1982年5月12日
出身:ミュンヘン, バイエルン州, ドイツ

 セバスティアン・へーネスは少し変わった経歴の持ち主である。バイエルンのレジェンドであるディーター・ヘーネスの息子であり、ウリ・へーネスの甥にあたるセバスティアンは、選手時代の長くをヘルタのセカンドチームで過ごした。ヘルタ以外でセバスティアンが現役でプレーしたクラブは2006/07シーズンのホッフェンハイムのみ。当時の監督はラングニックである。

 その後、指導者に転向したセバスティアンは2014年から2017年にかけてRBライプツィヒのユース指導者を務めた。この経歴を聞くとラングニックの影響を受けている指導者と疑いたくなるが、セバスティアンはむしろハンジ・フリックが嗜好するようなサイドからの攻撃の信奉者だ。ただプレスや中央の攻略を重視する点からはラングニックからの影響も垣間見える。昨シーズン、シュツットガルトを躍進させた新進気鋭の指導者に注目が集まっている。

   

3. ヴァンサン・コンパニ Vincent Kompany

FCバイエルン・ミュンヘン 監督
生年月日:1986年4月10日
出身:ユクル, ブリュッセル, ベルギー

 トーマス・トゥヘルのもとで連覇を逃してしまったバイエルンが、彼の後任にヴァンサン・コンパニを招聘したことは多くのサッカーファンにとって衝撃的だっただろう。2023/24シーズン、コンパニはバーンリーを2部に降格させてしまっているのだ。しかし多くのバイエルンファンは彼がもたらしてくれるであろうサッカースタイルに期待している。

 そもそもコンパニの評価されるべき点は若手主体のバーンリーを1部昇格に導いてみせた点にある。少ないタッチ数とピッチを広く使うパスサッカーを信奉するコンパニの攻撃的な戦術は、トゥヘルの異様なまでにリスク回避を目指すサッカースタイルからの脱却を目指すバイエルンに非常に適している。ペップ・グアルディオラの影響も感じるコンパニの手腕が、バイエルンで通用するのか試されている。


4. マルコ・ローゼ Marco Rose

RBライプツィヒ 監督
生年月日:1976年9月11日
出身:ライプツィヒ, ザクセン州, ドイツ

 ブンデスリーガにはラルフ・ラングニックの影響を受けた監督が数多くいるが、その筆頭とも言えるのがマルコ・ローゼだ。ザルツブルクのU19チームを2017年のUEFAユースリーグで優勝に導いた同監督は、4-2-2-2の布陣を基調とするプレッシング戦術で、2023/24シーズンのRBライプツィヒを4位に導いた。

 19勝8分7敗の好成績を残した昨シーズンのRBライプツィヒの課題は、上位クラブとの直接対決で勝ち点を挙げられなかったことだ。上位3クラブとの6試合で1勝1分4敗と負け越していた。前線の主力選手が入れ替わることが予想されるなかでRBライプツィヒをどう導くのか、ローゼの手腕が試される。


5. ヌリ・シャヒン Nuri Şahin

ボルシア・ドルトムント 監督
生年月日:1988年9月5日
出身:リューデンシャイト, ノルトライン=ヴェストファーレン州, ドイツ

 2024年6月13日にエディン・テルジッチの監督退任を発表したドルトムントは、翌日ヌリ・シャヒンの監督就任を発表した。コーチに就任した時点でシャヒンが監督に就任することはすでに決まっていたことなのだろう。シャヒンは監督就任時、インタビューで目指すスタイルを聞かれた際、このように回答している。

どのコーチもこの質問をされるが、その答えはたいてい「ポゼッションサッカー。主導権を握りたい」だ。もちろん、それは我々にも当てはまる。我々は積極的にプレーしたいし、ボールを持ちたいし、試合の方向性を決めたい。

ヌリ・シャヒン:「私にとっては世界を意味する」  bvb.de

 昨シーズンのドルトムントにとってチャンピオンズリーグ決勝進出は望外の結果だっただろうが、国内屈指のタレントを擁す以上、リーグ戦5位というのは残念だっただろう。クラブのレジェンドを新たに監督に迎えたドルトムントがどのような変化を遂げるのか期待される。


6. ディノ・トップメラー Dino Nicolas Toppmöller

アイントラハト・フランクフルト 監督
生年月日:1980年11月23日
出身:ヴァーデルン, ザールラント州, ドイツ

 2023年夏にフランクフルトがした決断は欧州のサッカーファンに衝撃をもたらした。クラブをヨーロッパリーグ優勝に導いたオリヴァー・グラスナーを退任させ、後任に決して監督としての経験値の多くないディノ・トップメラーを起用したのだ。ディノはルクセンブルクの強豪デュドランシュを率いた以外はユリアン・ナーゲルスマンのアシスタントを務めていた人物だ。

 2023/24シーズンのフランクフルトが残した成績は11勝14分9敗の6位。ディノはクラブが補強したコッホスキリマルムシュを中心に、攻守にバランスが取れたチームをつくることに成功した。しかし14分と勝ちきれない試合が多かったことが課題に残った。2024/25シーズン、名将クラウス・トップメラーの息子であるディノがこの課題をどう解決させるかがフランクフルト飛躍の鍵だ。


7. ペレグリーノ・マタラッツォ Pellegrino Matarazzo

TSG1899ホッフェンハイム 監督
生年月日:1988年5月4日
出身:ウェイン, ニュージャージー州, アメリカ

 ヨーロッパ中を探しても、マタラッツォほどユニークな経歴を持つ指導者はほとんど見当たらない。彼はアメリカのコロンビア大学を卒業後、プロサッカー選手を目指してヨーロッパへと渡り、ドイツの4部リーグのクラブなどでプレーを始めた。その後、指導者に転向し、2015年にはドイツのS級サッカーライセンス取得を目指してヘネス・ヴァイスヴァイラー・アカデミーに参加。この際、ナーゲルスマンと同室で過ごし、親交を深める。その後、ナーゲルスマンのアシスタントとしてホッフェンハイムのコーチ陣に名を連ねたのだ。

 2019年12月にはシュツットガルトの監督に就任し、チームを昇格に導いた。攻撃的なスタイルと3バックの信奉者であるマタラッツォは、前線からのプレッシングやポジショナルプレーといったナーゲルスマンのスタイルに類似した戦術でブンデスリーガに旋風を巻き起こす。そして2023/24シーズンからは再びホッフェンハイムに戻り、監督として指揮を執っている。アメリカ代表監督のオファーを断った同氏が2024/25シーズンのホッフェンハイムをどのように率いていくか、注目が集まっている。


8. フランク・シュミット Frank Schmidt

1.FCハイデンハイム 監督
生年月日:1988年5月4日
出身:プリッツ, シュレスヴィヒ=ホルシュタイン州, ドイツ

 2023/24シーズンのブンデスリーガでは多くのサプライズが起きたが、その一つが昇格組ハイデンハイムの8位躍進だ。クラインディーストディンクチヤン=ニクラス・ヴェステなどを中心に、速攻を仕掛けるサッカーを展開し、シーズンを通して50得点55失点と安定した成績を収めた。

 このチームを率いるのはフランク・シュミット。2007年からハイデンハイムを指揮する同氏は、2023年9月17日にフォルカー・フィンケの記録を上回り、ドイツ史上、単一クラブで最も長く監督を務めた人物となった。

 クラブの直近の課題は、2023/24シーズンに活躍した中心選手たちが夏の移籍市場で流出してしまったことだ。新星パウル・ヴァナーを擁するハイデンハイムを、シュミットがどのように導くか、その手腕に注目が集まる。


9. オーレ・ヴェルナー Ole Werner

ヴェルダー・ブレーメン 監督
生年月日:1988年5月4日
出身:プリッツ, シュレスヴィヒ=ホルシュタイン州, ドイツ

 近年、若手のドイツ人指導者が欧州中から注目を集めるが、オーレ・ヴェルナーはその筆頭だろう。今年5月に36歳を迎えたばかりの同氏の転機は2021年、当時2部のホルシュタイン・キールを率い、DFBポカール2回戦でバイエルンに勝利したのだ。2021年にはブレーメンの監督に就任し、1部昇格に貢献。主砲フュルクルクを引き抜かれた2023/24シーズンには11勝9分14敗を記録し、前シーズンから順位を4つ上げた9位でシーズンを終えた。

 5-3-2の布陣を基調とするソリッドな守備とウイングを置かない縦に早い攻撃を戦術とするのが現在のブレーメンの特徴。気を見計らって高い位置でブロックを敷き、カウンターを狙う場面が見られるなどホッフェンハイムから影響を受けているように思われる戦い方をする。新進気鋭のドイツ人監督のもとで、ブレーメンがどのような変化を遂げていくのか楽しみでならない。


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