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【読書感想】行動経済学の超基本/橋本 之克

「行動経済学の超基本」こちらの本、読みました。

行動経済学の本は「サクッとわかる ビジネス教養 行動経済学」に続いて2冊目です。

1冊目として読んだ「サクッとわかる ビジネス教養 行動経済学」きっかけで行動経済学に興味が湧いたので、2冊目として本書を読んでみました。
本書も「サクッとわかる ビジネス教養 行動経済学」と同様、図解・イラストを多用していて分かりやすかったです。


本の内容

まずはAmazonから本の内容を抜粋します。

行動経済学を改めていちから学び、“かしこい消費者”を目指す本。様々な実例や実験を図解でわかりやすく説明しているので、経済学が苦手な人でもスッとよくわかる。「カモにならない」など、すぐに役立つ囲みコラムも楽しい。

こんな感じの本です。

記事の冒頭でも触れましたが、図解・イラストを多用していて分かりやすかったです。
あとは、事例が豊富だったのも良かったです。

ちなみに本書はシリーズ本のようです。
「今さら聞けない超基本シリーズ」というのがあり、その中の「行動経済学」が本書のようです。

「今さら聞けない超基本シリーズ」がどんなラインナップかは、以下リンクを見て頂ければと。

著者情報

本書の著者である「橋本 之克」でネット検索したところ、いくつかヒットしました。
リンクしておきます。

いくつか引用と感想

自分でつくると価値が上がる:IKEA効果

スウェーデンで生まれた世界最大の家具量販店「IKEA(イケア)」で扱う商品の多くは、購入者が持ち帰って組み立てるスタイルです。この店名からとられた心理的バイアスが「IKEA効果」です。この心理は自分でつくったものを実際以上に高く評価し、他人にとっても高い価値があると感じてしまうものです。完成に手間をかけるプロセスを経ることによって、人は完成品を買うだけの場合よりも高い満足を感じます。愛着の気持ちが生まれるのです。自分が努力し犠牲を払った結果や、達成した目標を高く評価しようとする心理から生じるものとも考えられます。

店名から心理的バイアスの名前がとられたというのはユニークですね。
これまでの自分の体験に照らし合わせてみると、IKEA効果を何度も体感しています。

自分の時間を費やしたり、自分で作ったりすると愛着が湧いてしまいます。
結果として実際以上に高く評価してしまうのも納得です。

私が浮かんだ事例としては、音楽を聴く時ですね。
今の主流はサブスクで、聴きたい曲をダウンロードする流れだと思います。

ですが一昔前の主流は、CDを買って音楽プレーヤーにインポートする手間がありました(現役でこの方法の人もいるとは思いますが)。

さらに昔のMDの頃は容量の関係で曲を厳選したり、更に手間がかかっていました(こちらも、もしかしたら現役の人がいるかもしれませんが)。

なんとなく、聴きたい曲を聴くまでの手間がかかればかかるほど曲に対して愛着がわく気がします。

これがIKEA効果に該当するかは分かりませんが、なんとなく近い事例に感じました。

せっかくなので「イケア効果」に関して、リンクしておきます。

CMは買った人のためにある:確証バイアス

人は誰しも、無意識のうちに自分の行動は合理的であると考え、自分を正当化しようとします。一度自分の意見を決めると、それを裏づける情報ばかり集めて、自分の意見に反する情報を無視する行動を取ります。自分の行為の正しさを強化するのです。この心理的バイアスを「確証バイアス」と呼びます。現代は情報社会ですから、周囲に情報はあふれており、取捨選択するのが困難です。特に何かを買おうとする際には、商品の種類が多いうえに関連する情報も大量です。すべての情報を吟味するのは難しいですが、買い物で失敗しないためには、偏った目で情報を見ないことは重要です。
例)その商品を購入した人に安心を届けるCM
広告は買ってくれる人を増やすためのものです。ところが、すでにその商品を買った人が、自分の決断が正しかったと思いたくて見ることもあります。
※広告には、その商品の良い点ばかりが書いてある。買った判断は正しかったと裏づける情報が満載だから、これらを見て安心できる。

確証バイアスは、「ネット検索の際に自分の意見に近い物を探してしまう。」という事例で一番目にします。

ですが、引用した中の事例「その商品を購入した人に安心を届けるCM」は印象的でした。
たしかにこれも確証バイアスですね。

CMはこれから買ってくれる人のためのものだと思っているフシがありました。
ですがたしかに、既に買った人のためでもありますね。

買った後に安心したい時は、CMが効果的に作用しますね。
新しい観点でした。

せっかくなので「確証バイアス」に関して、リンクしておきます。

多くの人は自分を事実以上に評価する:ダニング=クルーガー効果

自分が「晴れ男」や「晴れ女」だと信じる人がいますが、自然現象を左右できるはずはありません。願った通りの天気になった経験が重なって、自分にそうした力があると思い込むのです。その裏側にあるのが「コントロール幻想」です。これは、実際には自分の力が及ばない事柄にも、コントロールし、影響を与えられると思い込む心理です。このほか、人を自信過剰にさせる心理として「ダニング=クルーガー効果」があります。これは、能力の低い人ほど自分の能力不足に気づかず、実際よりも高く評価してしまう傾向です。自分を評価するときもさまざまなバイアスに影響されるのです。
例)能力の低い人は自分に甘い
物事に習熟していない時期は、少し上達しただけで自分を過信します。その後、周囲との比較などから自分が未熟であることを知り、さらに上達するにつれ正しく自己評価できるようになります。ダニング=クルーガーの曲線を使うとどう自己評価をしているかわかります。

本書では「ダニング=クルーガーの曲線」の図が載っています。
ですが、その図をそのまま引用するのはダメな気がするので同じような図が載っているサイトを代わりにリンクします。

上記リンクの曲線をざっくり説明すると、「馬鹿の山」で自信過剰になり、「絶望の谷」で自信喪失し、「啓蒙の坂」で徐々に自信を回復し、「継続の大地」で自信が復活する。
といった感じです。

たまに「馬鹿の山:少しの知識を得て自信に満ち溢れている」状態にずっと留まってしまっている人に遭遇することってありませんか?
私はそういった人に遭遇した時、「自分はこうならないように気を付けよ…」となります。

「少しの知識で自信に満ち溢れている」状態は、なんとも恥ずかしいなと。
最終的に心がけたい事は「知識を得ても調子にのらず、常に謙虚な姿勢を大切にする」ですね。

なんとも当たり前な内容ですが、「ダニング=クルーガーの曲線」の図を見た後だと、より背筋が伸びる感じがします。

ちなみに引用にもある「晴れ男」や「晴れ女」を本気で信じてる人って、どのくらい居るんですかね?
ほとんどの人は本気で信じていない気がします。
話のネタくらいの認識なんじゃないかな…と思ったり。

意識せずに健康増進させる

アメリカの経済学者リチャード・セイラーらは、行動経済学の「ナッジ」を提唱した功績で、2017年にノーベル経済学賞を受賞しました。「ナッジ」を和訳すると「肘で軽く突く」です。選択を禁じることも強制することもせず、また報酬を与えることもなく、人間の行動をより良い方向へ促す仕掛けや手法です。
「ナッジ」はさまざまな場面で、良い行動を自発的に起こさせるために活用されています。頭ではわかっていても、行動ができない健康増進でも「ナッジ」は使われています。無意識に行動できる仕掛けや楽しみの提供などにより、健康に良い行動へと人を促します。
例)つい歩きたくなる階段で運動不足解消
2009年スウェーデンのストックホルムの地下鉄odenplan駅で階段をピアノの鍵盤にする実験が行われました。階段を踏むと音階に合わせたピアノの音が出るようにした結果、階段を利用する人が66%増加しました。

「地下鉄の階段を鍵盤にする」という事例は、ユニークで良いですね。
たしかに階段からピアノの音がするなら、エスカレーターを使わずに階段を利用したくなります。

普段ならエスカレーターを利用するところを、「階段からピアノの音がする」というだけで階段を利用したくなる。
結果として、自発的に健康に良い行動に促される。
うまい仕組みですね。

ネットで探したら記事になっていました。

こういった事例は、ビジネス(ビジネス書)との相性が良さそうですね。
「この事例、うまくやればビジネスにも転用できそう」とか、「IKEA効果を活用して商品を売り出そう」とか。

読みたい本を探す時に「行動経済学」に関する本をよく見かける理由が、少しだけ分かった気がします。

ナッジは街や施設をきれいにする

誰もが必ず公共マナーを守るのであれば、おのずと街や施設はきれいに保たれるはずですが、現実はそううまくいきません。人は機械とは違って完璧ではありません。不完全さ、不合理さ、弱さがあるので、マナーに反する行動を取ることもあります。こうした現実の人間らしい行動を認めることが、行動経済学の基本的な考え方です。良心に訴え、小言のようなメッセージを伝えても、街や施設はきれいになりません。それを前提として、人を良い方向に誘導するのが「ナッジ」です。うまい仕掛けを用意すれば、清掃や管理をする団体や担当者の手間やコストは減り、利用者も快適に使えるのです。
例)「楽しみ」が人の気持ちを変え、街をきれいにした
人は正しいことだとわかっていても、強制されると反発したくなります。ゲーム感覚を取り入れ、人々を良い方向に誘導し、街がきれいになりました。
・投票スタイルで吸い殻のポイ捨てを減らす
・ゴミ箱をバスケットのゴールにする

「投票スタイルで吸い殻のポイ捨てを減らす」という事例が印象的でした。

本書で図解されている投票スタイルのゴミ箱は、中身が見えるように(投票結果が分かるように)なっています。
そうなると心理的に、ポイ捨てせずに投票したくなりますね。

こちらもネットで探したら、似たような記事がありました。

ポイ捨ては最初の一人目が罪深いですよね。
1つでもポイ捨てされていると、二人目以降は罪悪感が薄くなってしまう気がします。

こういった現象を「割れ窓理論」と言うみたいです。

投票スタイルのごみ箱だとポイ捨ての一人目が生まれにくい気がしますね。

長所と短所がある「ナッジ」

ナッジの危険性
第5章で紹介した「ナッジ」はわずかな働きかけや工夫で、人の行動を導くものです。しかし、効果が大きいだけに危険でもあります。「ナッジ」を使えば当人に自覚されず、したがって批判も抵抗もされずに他人を動かせます。人形を陰から操るかのように、他人の判断や行動をコントロールできるのです。これを悪用して他人から利益を奪って、私腹を肥やす者がいても不思議はありません。
悪用されたナッジ『スラッジ』
このような、人の心理的バイアスを悪用し、本来の目的と外れた方法で、人をだまして不当に利益を得る行為を「スラッジ(Sludge)」と呼びます。ヘドロや汚泥の意味です。ECサイトなどで買い物の入力をする際に、有料オプションの追加やメールマガジン配信などを認める初期設定になっていることがあります。これは典型的なスラッジです。また契約後に解約しにくい構造のサイトもスラッジの一つです。

ナッジを活用して効果を実感すると、徐々にエスカレートしてしまう予感がしました。
そういった時に都度立ち戻って、悪用しないように気を付けたいですね。

引用にもあるECサイトとかは、職業的に自分もそうしてしまう恐れがあります。
さすがにないとは思いつつ、意図せずスラッジになってしまう可能性は捨てきれないかなと。

うまくユーザを誘導して、ユーザ的にも満足する方向なら「ナッジ」の活用となります。
ですがユーザを誘導して、結果的にユーザが不満に思ったり、トラブルが発生してしまったら「スラッジ」になってしまいます。

ナッジとして活用したはずが、意図せずスラッジになってしまうこともありそうです。
ナッジを活用するにしても、そういった点は気を付けたいなと。

ナッジを活用するかは置いといて、スラッジを回避できるかどうかはナッジの事例や効果をどのくらい知っているかで変わってくる気がしました。

おわりに

ということで「行動経済学の超基本」に関してアレコレ書いてみました。

今回の記事で引用したのは、

  • 自分でつくると価値が上がる:IKEA効果

  • CMは買った人のためにある:確証バイアス

  • 多くの人は自分を事実以上に評価する:ダニング=クルーガー効果

  • 意識せずに健康増進させる

  • ナッジは街や施設をきれいにする

  • 長所と短所がある「ナッジ」

の6つでした。

「CMは買った人のためにある」は新しい観点でした。
言われてみればたしかに、という感じですね。

また、「ナッジ」の事例をいくつも読むと、人間の心理をうまく突いた内容で感心します。

「自分も仕事で人間の心理をうまく突いた仕組みを…」と思ったりもしますが、そう簡単にはいかないよなぁと。
とはいえ、ヒントをたくさん得ることが出来ました。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

「仕事」関連の読書感想をマガジンにまとめています。
こちらも良ければぜひ。


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