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【読書感想】サクッとわかる ビジネス教養 行動経済学/阿部 誠

「サクッとわかる ビジネス教養 行動経済学」こちらの本、読みました。

「サクッとわかるビジネス教養」シリーズというものがあり、その中での行動経済学編が本書です。
以前、同じシリーズの「マネジメント」が良かったので、2冊目として「行動経済学」をチョイスしてみました。

※「サクッとわかるビジネス教養」シリーズのラインナップは以下リンクで確認できます。

※同じシリーズの「マネジメント」の記事はこちらです。

本書は入門としてピッタリだなと思いました。
図解、イラストが多用されているので分かりやすいですし、興味をそそる構成になっていて面白かったです。
これは「マネジメント」を読んだ時も感じました。


本の内容

まずはAmazonから本の内容を抜粋します。

行動経済学は個人の心理を扱う経済学で、知識ゼロの人でも理解しやすく、かつ実際のビジネスに役立つテーマです。行動経済学の研究対象である、人間の非合理的な意思決定方法を学べば、営業職にも企画職にも生かすことができます。例えば、宿泊予約サイトにリアルタイムの閲覧者数を表示することで、「これだけ注目されているならいいホテルに違いない」「急がないと埋まってしまうかもしれない」と思わせて予約を促す仕組みは行動経済学の活用と言えます。

こんな感じの本です。

イラストや図解を多用していて、ページ数も少なめです。
分かりやすいですし、読みやすいです。

著者情報

本書の著者(監修)である「阿部 誠」でネット検索したところ、いくつかヒットしました。
リンクしておきます。

いくつか引用と感想

行動経済学=心理学+経済学

新たな学問として登場した行動経済学ですが、伝統的な経済学を完全に無視するものではありません。経済学が立証してきた理論をベースに、人間特有の考え方やくせをふまえて、実際の行動を検証するのです。そのため、行動経済学は経済学と心理学のハイブリッドと表現されることもあります。

「行動経済学」は、ここ数年ビジネス書界隈でブームになっている印象です。
読みたい本を探している時にも、「行動経済学」というワードが付いた本によく遭遇していました。

ですが「行動経済学」に関する本はこれまで何故か手に取ることがありませんでした。
ナゼ今回手に取ったのかも、それほど深い理由もないです。

同じシリーズの「マネジメント」が面白かったし読んでみようかな、くらいの軽い気持ちで読んでみました。

で、本書を読み進めると早速「行動経済学=心理学+経済学」という解説があり、ちょっと興味が湧きました。

このあと引用していきますが、割と好きなジャンルでした。

消費者である我々は日々、行動経済学に接している

噛み砕いて言えば、行動経済学は、「経済学で考えられていた理論」と「実際の行動」から生まれた新しい分野であり、マーケティングで実践されてきたことを学術的に紐解いたものだ、ということ。
つまり、消費者である我々は日々、行動経済学に接しているのです。日常生活は意志決定の連続。自分が非合理的判断を下す可能性があることを自覚し、どうすれば合理的な意思決定ができるかを知ることがとても重要になります。行動経済学はそのヒントを与えてくれるのです。
この後の章では、人間の意思決定のプロセスをより忠実に描写した「ヒューリスティック(→P28)」や、「プロスペクト理論(→P82)」といったさまざまな行動経済学の要素について解説していきます。意志決定の仕組みを理解し、意識することこそが、自らの合理的な行動を促し、さらには、ビジネスでの成功への近道となるはずです。

「行動経済学」の導入にあたる内容を引用してみました。

行動経済学は割と身近にたくさんあり、日々接しています。
本書で紹介している事例も、身近なものがたくさんあります。

本書で主に登場する用語について、記事で全ては紹介できないので、ここにリンクしておきます。
※「ヒューリスティック」「プロスペクト理論」「ナッジ理論」に関して、それぞれリンクしておきます。

ヒューリスティックとシステマティック

人の思考には、直感と熟考の大きく分けて2つのモードがあります。
基本的には素早く答えを出せる直感が使われており、その際の意思決定プロセスを「ヒューリスティック」といいます。このヒューリスティックを使うと、ある程度満足できる答えを素早く出せる一方で、損失につながる誤った答えを出してしまう場合もあり、行動経済学の重要なテーマになっています。このように、人間が2つの思考タイプを使い分けるという理論を二重過程理論といいます。

本書では、

  • ヒューリスティックの特徴

    • 直感、即決

    • 高速

    • 努力を要さない

    • 経験的

  • システマティックの特徴

    • 熟考

    • 低速

    • 努力を要する

    • 合理的

と書かれています。

高価なものを買う時など、「これは失敗できない」というようなシチュエーションでは「システマティック」な思考になる傾向があるようです。

逆に、「ランチで何を食べるか?」といった気軽なシチュエーションでは「ヒューリスティック」な思考になる傾向にあるようです。

システマティックな思考は、ヒューリスティックな思考と比べるとエネルギーを要するようです。
多くの判断をシステマティックな思考で行うとエネルギー切れになるため、基本的には「ヒューリスティック」な思考で判断するそうです。

ヒューリスティックは「直感、即決」で、たまに間違ったりもするものの、意外と正答率が高いらしいです。
この部分がけっこう面白いなと。

せっかくなので「ヒューリスティックとシステマティック」「二重過程理論」に関して、それぞれリンクしておきます。

Q:見たことのあるものを買ってしまうのはナゼ?

A:記憶に残っているものを信用するから
「よく見かける」「インパクトが強い」「最近知った」「友人が使っている」・・・。こうした商品は私たちの記憶に強く残り、思い出しやすいもの。その記憶を利用する可能性が高いので、値段や品質について細かく検証することなく、直感的にその商品を選んでしまうのです。このように、なじみのあるものを選択する意思決定プロセスを「利用可能性ヒューリスティック」と呼びます。
企業は、さまざまな媒体に繰り返し広告を出すことで、購入に結びつけたいと考えているのです。
企業は自身をブランディングするために、思い出しやすくなじみ深いイメージを作る工夫をしています。たとえば、ブランドロゴの統一、ジングル・音楽(サウンドロゴ)の使用などです。ジングルとは、ブランドを印象づけるための音楽です。
ジングルの利用によってなじみのある企業は好感度が上がり、商品ならば実態以上に売れていると感じます。

同じジャンルの商品であっても、「テレビCMで見たことがある商品」と「テレビCMで見たことがない商品」で、どちらを手に取るか。
これは「テレビCMで見たことがある商品」を手に取る人が多いのではないかなと思います。

そのジャンルにこだわりがあったら、商品の中身を重視すると思います。
ただ、そこまでこだわりはなく「正直どれでも良い」状況なら、なんとなくCMなり広告なりで記憶に残っているものを選択してしまう人が多いのではないかなと。

何よりも値段を最優先するとか、そういったケースもあるとは思います。
ですが基本的には、うっすらとテレビCMの記憶で良い印象がある商品を直感的に選んでしまうことはあるかなと。

これは意識的にというよりは、無意識的にそうなっていることが多いかなと。
私もたしかに身に覚えがあります。

せっかくなので「利用可能性ヒューリスティック」に関して、リンクしておきます。

Q:良い印象を残すために大切なものは?

A:最初と最後が肝心
初対面の人に挨拶に行く時、事前に相手をリサーチする、手みやげを持っていく、最初に大きな声で挨拶する・・・。これらは「一番最初の良い印象が残り続ける」ことを無意識に理解して取る行動です。人は、第一印象に大きく影響されます。これは「初頭効果」といい、代表性ヒューリスティックの1つです。
他方、人間がある事柄を思い出す時に働くのが「ピークエンドの法則」です。これは、「ピーク」、つまり絶頂時と、最後の時点「エンド」が、思い出全体に対する印象を左右するという理論です。最も盛り上がった時点と最後以外は、人間の記憶に残りづらいともいわれています。これも、代表的な事柄だけを見て判断する、代表性ヒューリスティックの1つです。

「初頭効果」と「ピークエンドの法則」を考えると、最初と最後が肝心なようです。
とはいえ「最初と最後だけ頑張れば良い」という訳ではなく、印象に残りやすいのはその部分、ということですね。

仕事のシチュエーションで考えてみます。
例えば、新しい顧客先に初めて訪問する時。

まずは「初頭効果」に関して。

事前に顧客先のことをリサーチをしていて、それが良い具合に相手に伝わると印象が良くなるかなと。
露骨にならないように気を付ける必要はありますが、初頭効果は身を持って体感しています(心配性なので事前にかなりリサーチするタイプ)。

そして「ピークエンドの法則」に関して。

顧客先に訪問した時の終わり際は、気を付けないとですね。
「もうすぐ終わるな…」というのは時間や雰囲気で分かりますし、緊張から解放される直前なので気が抜けがちです。
ここで引き締め直して良い印象で終われるようにした方がピークエンドの法則を発揮しそうですね。

せっかくなので「代表性ヒューリスティック」「初頭効果」「ピークエンドの法則」に関して、それぞれリンクしておきます。

Q:なぜ2択より3択のほうが選びやすい?

A:人は両極端を嫌うから
「激辛」「ふつう」「激甘」の3種類のカレーがあった場合、多くの人が「ふつう」を選びます。
2択だとどちらにするか迷いがちですが、3択になると真ん中が選ばれやすくなるのです。
人間には、極端なものを回避する傾向があるからです。この「極端の回避効果」は、固着性ヒューリスティックによって起こります。
この効果を商売に活用することもできます。
たとえば鰻重にはよく、松・竹・梅がありますが、松は贅沢すぎるし、梅だと寂しすぎると感じて多くの人が無難な竹を選びます。松を置くことで安価な梅の注文が減り、梅より高額な竹の注文が増えるのです。
この「3択」のような文脈によって選んでほしい選択肢が魅力的に見えることをおとり効果といいます。

引用したカレーの例は、かなり極端な例に感じました。
そりゃ多くの人は「ふつう」を選ぶでしょう、と思いました。

ただ鰻重の例は、私にも心当たりが多くあり納得感がありました。

カレーや鰻重の例だけでは納得感が薄いと感じた方は、他の例も見てみると納得感が増すかなと思います。
以下にいくつかリンクしたので、そちらに載っている事例も見て頂ければと。

「固着性ヒューリスティック」「極端の回避効果」「おとり効果」に関して、それぞれリンクしておきます。
リンク内にいくつか事例が載っています。

CASE1:取引を有利に進めたい

方法1:初頭効果を利用する(→P50)
ビジネスにおいて、第一印象が大切だとよくいわれます。初頭効果によって、人間は、初めに感じた印象にその後も影響を受けます。つまり、第一印象さえ良ければ、そのイメージがプラスに働いて、ちょっとしたミスならカバーできる可能性もあるのです。身だしなみを整えて、相手に「信用できる人だ」という印象を与えましょう。
方法2:ピークエンドの法則を忘れずに退席する(→P51)
会話の終わり方も、第一印象と同様に重要です。人間は、過去の出来事を思い出す時、最も盛り上がった時点の感情と、最後の印象によってその出来事を評価します。つまり、商談の最後に最も盛り上がる話をすれば、相手はその商談を思い出す際、「とても盛り上がった」と評価し、良い印象を残すことができるのです。

「初頭効果」と「ピークエンドの法則」の件は、2つ前の引用「Q:良い印象を残すために大切なものは?」でも触れました。
身だしなみを整えるくらいで初頭効果を発揮できるなら、しておきたいところです。

システムエンジニアという職業柄なのか、ラフな身だしなみの人が割と多いです。
そういった中で、身だしなみを整えていたら第一印象は優位に立てそうです。

一方で、ピークエンドの法則に従って最後に最も盛り上がる話を…というのは意外と難しいかなと思いました。

こっちが「最も盛り上がった」と思っていても、相手も同じように「最も盛り上がった」と思ってくれるかは別ですし。
「最後に最も盛り上がる話をしよう」という気持ちで臨むと、なんというか全体的にフォームを崩しそうだな…とも。

とはいえ、去り際の最後の印象は大事ですね。
緊張から解放される直前のタイミングなので、気を抜かないようにしたいところです。

CASE2:こちらに都合の良い選択をしてもらう

方法1:極端の回避効果で選択を誘導(→P67)
取引先に選択を迫る際、思い通りのものに誘導したい時には、おとり(極端の回避)効果を活用できます。選択肢の中におとりの選択肢を混ぜることで、選ばせたい選択肢の評価が相対的に高くなるのです。また、どちらかを”選ぶ”という状況に相手を誘導することで、取引自体をやめるという選択の抑止にも一役買っています。
方法2:ハッタリで損失回避性に訴えかける(→P86)
どうしてもこちらの要望を通したい場合は、最終手段としてハッタリを用意するのも手。「要望を通してくれないと損をしますよ」と暗に伝えることによって、相手の損失回避性に働きかけます。むやみ悪用は禁物ですが、損は得よりも大きく感じるため、相手が迷っている場合は最後のひと押しとして有効です。

システムエンジニアという職業柄なのか、「極端の回避効果で選択を誘導」とか「ハッタリで損失回避性に訴えかける」みたいなシチュエーションは少ないです。

どちらかというと選ぶ側というか、利用者側の立場でも考えられるかなと。

「極端の回避効果」や「損失回避性」が前提知識としてあれば、相手の都合の良い方向に誘導されていることに敏感になれるかなと思いました。

誘導に気付ければ、相手の誘導から一旦離れて冷静な判断に戻ることが出来そうだなと思いました。
誘導に気付いたうえで、誘導に乗っかってみるのもアリかなと。

方法1の「極端の回避効果」「おとり効果」に関しては、2つ前の引用「Q:なぜ2択より3択のほうが選びやすい?」でも触れています。

方法2の「損失回避性」に関しては参考リンクを貼っておきます。

CASE3:面倒な仕事を同僚に手伝ってほしい

方法1:アンカリング効果で負担を少なく見せる(→P65)
上司から任された仕事を同僚にも手伝ってほしい。そんな時、活用したいのがアンカリング効果です。自分が請け負う大量の仕事をまず相手に示すと、それがアンカーとなって、その一部をお願いすれば、相手は頼まれた分の仕事を少なく感じ、引き受けてくれる確率が高くなります。
方法2:ハーディング効果で同調を促す(→P77)
他にも、周囲のみんなに同調するよう促すのも効果的。人は「みんながやっているのに自分だけ・・・」という状況には不安を感じるため、「君にも」と一言添えて仕事をお願いすると快く受け入れてくれるはずです。同調効果と同様に、集団から外れたくないという心理が働くことをハーディング効果といいます。

タスクを手伝ってほしいとなった時に、タスクの全量を見せつつ、その中の一部を依頼する。
もしくは、周りにもタスクを分散させて同調効果を狙う。

そんなに簡単にうまくいくとは思えませんが、1つの案として良いかなと思いました。
そもそも仕事を一人で抱えがちな性格なので、こういった方法は頭の片隅に置いておきたいなと。

以前こんな記事も書いているくらいですし(以下リンク)。

方法1の「アンカリング効果」に関して、参考リンクを貼っておきます。

方法2の「ハーディング効果」「同調効果」に関しても、それぞれ参考リンクを貼っておきます。

おわりに

ということで「サクッとわかる ビジネス教養 行動経済学」に関してアレコレ書いてみました。

今回の記事で引用したのは、

  • 行動経済学=心理学+経済学

  • 消費者である我々は日々、行動経済学に接している

  • ヒューリスティックとシステマティック

  • Q:見たことのあるものを買ってしまうのはナゼ?

  • Q:良い印象を残すために大切なものは?

  • Q:なぜ2択より3択のほうが選びやすい?

  • CASE1:取引を有利に進めたい

  • CASE2:こちらに都合の良い選択をしてもらう

  • CASE3:面倒な仕事を同僚に手伝ってほしい

の9つでした。

本書は巻末に用語集が載っています。

この記事で紹介した「初頭効果」「ピークエンドの法則」「極端の回避効果」「おとり効果」「損失回避性」「アンカリング効果」「ハーディング効果」「同調効果」は、全て用語集に載っていました。

どの用語も端的にまとめられているので、一通り読んだ後に用語集を読むと振り返りになりそうです。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

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こちらも良ければぜひ。


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