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「障害者割引」

私は聴覚障害があり、障害者手帳を持っています。

しかし、私は障害者枠ではなく一般枠で就職・転職し、昇進昇格もしており、経済的には困っていません。

それでも私は障害者手帳を持っていると受けられる、様々な割引サービスを有り難く利用しています。


例えば私が住んでいる東京都では、都営地下鉄や都バスは無料です。民間バスは半額です。

以前は、「私は普通に立って歩いて走れるし経済的に困ってもないので、バスの利用で割引サービスを受けるべきではない」と思い、正規料金を支払っていました。

電車やバスだけでなく、映画や美術館や遊園地、様々な施設で割引サービスが受けられます。自分と、決して介助者とは呼べない親や友達だって割引を受けられます。

罪悪感や違和感を感じていました。

ただ、今ではラッキーくらいに思ってます。だって私の補聴器代も、ボタン電池代も、通院代も、健聴者であればかからないんだから、ちょっと得しててもいいよね?

そんな感じで、感謝の気持ちは持ちつつ、うだうだ考えるのはやめ、堂々と割引サービスを利用していました。


で、どうやらですね。
私は勘違いをしていました。

そもそも障害者割引の意図は「健常者より経済的に困っているだろうから」とか「健常者と同じだけのサービス提供(役務提供)を受けられないだろうから」とか、そういうことじゃなかったみたいです。

「障害者は生活をしていく上で健常者に比べてコストがかかることが多いから」みたいです。


なーんだ。

たしかにコストはかかってます。だから出掛けた先で特に不便も感じず、周りと同じだけのサービス提供を受けられても、そんなの関係なく割引は受けて良かったのね。

さっき「だって私の補聴器代も、ボタン電池代も、通院代も、健聴者であればかからないんだから、ちょっと得しててもいいよね?」と書いたけど、まさにそういうことだったのね。

さて、なんで私が意図を勘違いしてしまっていたかを考えてみると、理由が3つありそうです。

1つ目は、収入を理由に毎月の助成金が受け取れないからです。

確かに経済的に困っていないので不要です。“障害者福祉制度”としてまるっと考えてしまっていましたが、当然ながら助成金と割引サービスは意図が違いました。


2つ目は、コストがかかるタイミングと割引サービスを受けられるタイミングが違うからです。

補聴器買うときに補助金を受け取れますが、補助金の範囲で購入できる補聴器では全く聞こえないので、補助金に加えて数十万円の支出が必要です。こういうところでもっと補助してくれたら、わかりやすいのですが。

人工内耳の保険代だって、保険に入らなければ何かあれば数百万円レベルなので入ってますが、保険料かからなければいいのに、なんて。

でもまぁ社会の仕組みとして今はそうはいかないんでしょう。だから色んな事業者が善意で割引サービスしてくれていて、フォローしてくれている形。

「補聴器修理出したいなー、でも結構かかるから支出抑えなければなー、でもでも来週公開される映画をどうしても観たいんだよなー、今1,800円はなー」というところを「1,000円ならば行っちゃえ!!」としてくれてるわけですね。

なにこれ、ひたすらに有難いですね。


長くなりましたが、3つ目。東京ディズニーリゾートは「障害者も健常者と同じだけ楽しめる」といった考えで、障害者割引がありませんでした。

えーと、ソースは無いです。数年前になんで割引ないんだろうと調べたらそういうことを書いてあるサイトにたどり着いた記憶だけあります。

そんな東京ディズニーリゾートでも2020年4月から障害者割引が始まりました。

どうやら東京ディズニーリゾートの障害者割引サービスの導入により「障害者も健常者と同じだけ楽しめるという考えを覆したのか、残念」なんて思う人もいるらしい。

確かにそう思う人がいるのもわかります。
でも落ち着いて考えてみて下さい。




そんなわけないと思いませんか?




だってあのホスピタリティ溢れる東京ディズニーリゾートですよ。

パーク運営の基本理念は、

世代を超え、国境を超え、あらゆる人々が共通の体験を通してともに笑い、驚き、発見し、そして楽しむことのできる世界。

なんだから、当然に障害も超えるでしょうと。

(実はこれが言いたいがために長々とこのnoteを書いてます。)

東京ディズニーリゾートがどんな理由でこれまで障害者割引を行なっておらず、どんな理由で方向転換したかは本当のところは知らないけれど、「障害者も健常者と同じだけ楽しめるサービス提供を諦めた」のは絶対に違うと思います。

繰り返しになりますが、東京ディズニーリゾートに限らず、障害者割引はサービス提供側が「健常者と同じだけのサービス提供を出来ないんだ、ごめんね。だから値段も安くしておくね」というものではないのです。

これはそう思ってる側の妄想。被害妄想というか、悲劇のヒロインみたいな妄想。確かに障害者割引の意図はわかりづらいけど。

もちろん国や自治体がやってくれるのがあるべきなのかもしれないけれど、実際コストがかかる一つ一つに保障は今は難しいんだろうなと思います。

(仮に具体的に考えてみて、1ヶ月間に障害があるがゆえにかかったコストを領収書と共にまとめて申請して、審査してもらって、振り込まれるとかかな?なんてちょっと書いてみたけど誰がやるねんと思った。)


コストがかかるそれぞれの場面で、必ずしもサポートができるわけじゃないから、社会全体で少しでもフォローするために、善意の事業者が割引サービスをしてくれている。

その割引サービスを受けるのは強制ではないので、受けたくないならば受けなければいいだけです。勝手にサービス提供側の意図を想像して「障害者が健常者と同じように楽しめる社会が遠のいた」という発想は違うんじゃないかなと思います。

忘れてはいけないのが、事業者もまた、国や自治体に強制されて割引しているわけではないのです。まぁもちろん事業者も100%の善意ではないかもしれないけど、そもそも100%の善意である必要もない。逆に割引サービスが事業者にも少しでもメリットがあるなら、それはそれでWIN-WINでいいじゃんね。

私はこれからも素直に有り難く割引サービスを使います。事業者が私のお出掛けのハードルを下げて、社会での楽しみの幅を広げてくれている。難聴でコンサートに行かなくなって、その分字幕付きの映画を映画館でたくさん観るようになった。

与えられたサービスを前に、どう捉え、どう楽しむかは私次第。


少しくどくなりましたが今回書きたかったことはおしまいです。この前購入したnoteに対して、アンチテーゼ的に私はそうは思いませんよと書いておきたかっただけです。スキして貰えたらとっても嬉しいです。

読んでいただきありがとうございました。

#難聴 #聴覚障害 #障害者 #障害者手帳 #東京ディズニーリゾート #ディズニー #障害者割引 #エッセイ #アンチテーゼ

東京ディズニーリゾートのパーク運営の基本理念は下記の公式サイトから引用しました。


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