見出し画像

第5回カレリア語【リッヴィ方言】 独学記録-母音調和

---
カレリア語のうち、リッヴィ方言(オロネツ方言)を学ぶページです。
方言分類に関してはこちらの記事をご参照ください。
---

VOKALISOBU/母音調和

カレリア語リッヴィ方言には a, e, i, o, u, y, ä, ö の8つの母音があります。
※アルファベットに関しては以下の記事をご参照ください

カレリア語には、あるグループの母音と別のグループの母音は同じ語の中に出てきてはいけないという約束があり、これを「母音調和」と呼んでいます。8つの母音は以下のように3つのグループに分かれます。

画像1

カレリア語の母音調和は、『前母音 vs 後母音』の対立にもとづく『舌の調和』です。
① のグループに属する y, ö, ä という音と、③ のグループに属する u, o, a という音は、一つの語に一緒に出てくることはありません。
例えば、tyttö (娘)という単語はありますが、tytto という単語はありえません。同様に mandžoi (イチゴ)という単語はありますが、mändžoi という単語はありえません。

② のグループに属する i と e は母音調和には関与しない中間的な立場にありますので、① と③ どちらのグループの母音とも一緒に使われます。
例えば、kirju (本)という単語もありますし、piä (頭)という単語もあります。

この母音調和の約束は、単語に格語尾や人称語尾をつけるときに非常に重要になってきます。
例えば piä (頭)という単語に分格語尾(-a/-ä, -o/-ő,-u/-y, -du/-dy等, ここでは-du/-dy)をつける場合は、辞書形には①の前母音である ä が含まれていますので -dy をつけて piä-dy とします。piä-du とはなりません。(分格語尾は種類も多数あり、かなり複雑なので、後でしっかり学びましょう。)

リッヴィ方言では、名詞の格語尾に母音を含む格は限られており、よく使うのは上記で例に挙げた分格くらいで、名詞の格変化の際にはそこまで母音調和を気にすることはないかもしれません。今度は動詞の人称変化を例に見てみましょう。

例えば eliä(住む, 暮らす)という動詞があります。詳しくは後に学びますが、この動詞の現在語幹は elä- となり、この後ろに人称語尾をつけて変化させます。ここに1人称複数 myö「私たち」の人称語尾 -mmo/-mmö をつけると、elämmö (私たちは暮らしている)となります。elämmo とはなり得ませんのでご注意を。

また、もし単語の中に②のグループである i, e しかない場合には、①の前母音を含む語尾をつけます。
例えば tie (道)という単語に分格語尾 (-du/-dy)をつける場合は、tie-dy となります。

全体的なイメージを下図で確認しておきましょう。

画像2


学習後のつぶやき

母音調和の考え方はフィンランド語、カレリア語ヴィエナ方言と同じです。が、リッヴィ方言では名詞の格語尾に母音が含まれるものが少ないので、名詞の格変化の際に、母音調和を意識することがそもそもあまりなさそうです(複数形になればどうしても必要になってきますが)。

格語尾に母音が含まれるものが少ない、と書きました。例えばヴィエナ方言では -šša/-ššä となる内格語尾、リッヴィ方言では -s のみです。接格(奪格)は -lla/-llä だったものが、リッヴィ方言では -l のみ。語尾の子音にかなり耳を澄ませないと、格の判別が難しそうですね…。

格の紹介とそれぞれの格語尾については後ほど。

>> カレリア語【リッヴィ方言】 独学記録 - もくじ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?