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第26回カレリア語【ヴィエナ方言】 独学記録 - 第3不定詞

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カレリア語のうち、本カレリア方言-ヴィエナ方言を学ぶページです。
方言分類に関してはこちらの記事をご参照ください。
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第3不定詞

本来 動詞には格はつきませんが、第3不定詞と呼ばれる語形にすることで動詞も内格・入格・出格・接格などに変化させることができます。

第3不定詞の印は -ma/-mä で、これを現在語幹につけますが、タイプ①の動詞で階程交替がある場合には強階程語幹につけます。さらに、語幹の最後の母音が -e の場合には、-o/ö に変化します。さいごに -ma/-mä をつけると第3不定詞の語幹が出来上がります。

ただしタイプ②の動詞で -ija で終わる語は、不定詞から -ja を取り除いた形が第3不定詞語幹となります(現在語幹は -ičče- となりました)。

第3不定詞の語幹

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第3不定詞の種類

第3不定詞には内格、出格、入格、接格、欠格があり、これらの形にそれぞれの格語尾をつけます。各第3不定詞形と主な意味は以下のとおりです。

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第3不定詞は単独では使えず、助動詞のように主となる動詞に付随する形で使用します。

Myö mänemmä šyö-mäh. 私たちは食事(をするため)に行く
Hiän on šyö-mäššä. 彼/彼女は食事(をしている最)中だ

それでは、それぞれの格ごとの用法を確認していきましょう。

① 第3不定詞・内格( -mašša / mäššä)

この形は olla-動詞と結びつくのが最も一般的で、「~しているところだ、~している途中だ、~しようとしている」というような意味を持ちます。

Hiän on šyömäššä. 彼は食事(をしている最)中だ
Hiän on lukomašša. 彼女は読書(をしている最)中だ

また、olla 動詞の第3不定詞内格形を用い、 olla olemašša 「存在する、実在する」という意味の表現もよく使われます。

Onko muumitrolli olemašša? ムーミントロールは実在するだろうか?

その他、「座っている、経っている」などのように静止している状態を表す動詞と結びついて「~しながら、~して」というような意味を表します。

Mie iššun kirjaštošša lukomašša. 私は図書館で座って読書している
Hyö šeisotah kaččomašša televiisorie. 彼らは立ってテレビを見ている

② 第3不定詞・出格( -mašta / mäštä)

動きを表す動詞と結びついて「~してから、~し終えてから」という意味を表します。

Hiän tulou šyömäštä ravintolašta. 彼は食事を終えてレストランから来る
Hiän tulou ruttoh oštamašta. 彼/彼女はまもなく買い物から戻って来る

③ 第3不定詞・入格( -mah / mäh)

動きを表す動詞と結びついて「~しに、~するために」という意味を表します。

Myö mänemmä ravintolah šyömäh. 私たちはレストランに食事に行く
Hiän lähtöy oštamah. 彼女は買い物へ出かける 

また、状態を表す形容詞と結びついて、何に関してその状態なのかを表します。

Olen huono laulamah. 私は歌を歌うのが下手だ
Hiän on hyvä uimah. 彼/彼女は泳ぐのが上手だ
Olen valmis lähtömäh Piiterih. 私はサンクトペテルブルクに出発する準備が出来ている

④ 第3不定詞・接格( -malla / mällä)

この形は「~することによって」という意味で、方法や手段を表します。

Hiän tulou kouluh kävelömällä. 彼は学校に歩いて来る
Työ opaššutta äijän lukomalla. あなた方は読むことによって多くを学ぶ

⑤ 第3不定詞・欠格( -matta / mättä)

名詞の欠格という格についてはまだ触れていませんが、-tta/ttä という語尾「~なしで」という意味を持つ格です。第3不定詞形では「~せずに」という意味を表します。

Hiän lähtöy šyömättä puavosnua. 彼女は昼食を食べずに出かける
On mukava olla koissa ruatamatta työtä. 仕事をせずに家にいるのは快適だ

⑥ 格支配と第3不定詞

目的語あるいは補語として結びつく格の形を語彙そのものが要求するとき、この語は特定の格を支配すると表現されます。これを格支配と呼んでいます。

カレリア語でも格を支配する語彙は多く、ときにある動詞が後ろに第3不定詞の特定の格の形を要求することがあります。ここでは第3不定詞入格を伴ういくつかの代表例を挙げておきましょう。

動詞+第3不定詞入格

opaštuo(学ぶ)
 Lapši opaštuu kävelömäh. 子どもが歩けるようになる 
joutuo(陥る)
 Myö jouvumma šeisomah jonošša. 私たちは列に並ぶ羽目になる
tottuo(慣れる)
 Olen tottun lukomah yötä vaššen. 私は夜中に読書するのに慣れている
jiähä(残る)
 Anni jäi kotih šiivuomah. アンニは掃除のため家に残ることになった
piässä(ある状態になる, 行きあたる)
 Piäsin lomalla levähtelömäh. 私は休暇で羽を伸ばした
ryhtyö(~し始める)
 Ihmiset ruvettih nakramah. 人々は笑い始めた
ruveta(~し始める)
 Lapši rupei itkömäh. 子どもは泣き始めた
alkua(~し始まる)
 Koira alkou tuas haukkumah. 犬がふたたび吠え始めた

例文

Olen meččäššä keryämäššä marjua. 私は森でベリー摘みをしている
Mitä olet kantamašša? あなたは何を運んでいるところですか?
Mie kävin eččimäššä kissua. 私は猫を探しているところだ
Hiän tulou kaupašta oštamašta leipyä. 彼女はお店からパンを買ってきた
Työ noušetta rannalta uimašta. あなた方は岸辺から泳いだ後上がってきた
Mie mänen kirjaštoh lukomah. 私は図書館に本を読みに行く
Hiän lähtöy pankkih laškuja makšamah. 彼は銀行に支払をしに行く
Kieltä opaššetah pakajamalla, lukomalla ta kirjuttamalla. 言語は話し、読み、書くことによって学ぶことができる
Myö piäsemmä perillä kysymälla tietä. 私たちは道を尋ねて到着する
Mie piäsen perillä kysymättä tietä. 私は道を尋ねずに到着する
Emmä voinun olla nakramatta. 私たちは笑わずにはいられなかった

応用

Enši šuovattana mie lähen kinoteatterih kaččomah uutta kinuo. Še nimi on "Tove". Še on šuomalaini kino. Tove on naisen nimi, ken kirjutin Muumitrollin šarja.

Huomenekšella mie mänen Tokion ašemalla vaštuamah šuomalaista ystävie. Mänemmä enšin oštamah vuatteita ta šiitä lähemmä syömäh ravintolah puavosnua. Kun olemma syömässä, višših me juomma viinua. Myö jutelemma pakajamalla šuomekši. Šiitä tulemma kinoteatterih syömästä, kaččomma kinuo. Kinon jälkeh myö tuas jutelemma kinošta.

次の土曜日に、私は新しい映画を見に映画館に行きます。タイトルは”トーヴェ”です。それはフィンランド映画です。トーヴェとは、ムーミントロールのシリーズを書いた女性の名前です。

朝、私は東京駅に行き、フィンランド人の友だちに会います。まず私たちは洋服を買いに行き、それからレストランにランチを食べに行きます。食事中、おそらく私たちはワインを飲むでしょう。私たちはフィンランド語を話しておしゃべりします。そして食べ終わってから映画館へやって来て、映画を見ます。映画の後、私たちはふたたび映画についておしゃべりするでしょう。

学習後のつぶやき

応用文は適当に書いた未来日記ですが、こんな女の子らしい休日を過ごしたのは昔々、学生時代くらいなものです。。文法説明の例文でムーミンを持ち出したので、公開中の映画「TOVE」の存在を思い出して書いてみました。

ムーミントロールの「トロール」はフィンランド語で peikko、リッヴィ方言のカレリア語では peigoi です。ヴィエナ方言でも似たような語があるかと探したのですが、見つかりませんでした。代わりに、カレワラ村で「ムーミン谷の彗星(Muumitrolli ta häntätähti)」の展示が行われたという記事を、カレリア語の新聞 OMA MUA紙のヴィエナ方言・バックナンバーから発見したのでこちらを使っています。

応用文中に関係代名詞文を使ってみました。近々、関係代名詞文についても学びましょう。

>> カレリア語【ヴィエナ方言】 独学記録 - もく

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