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『追憶の烏』感想


阿部智里さんの最新刊、『追憶の烏』八咫烏シリーズ第2部2作目。

このシリーズに出会ったのは高校の図書館。シリーズ1作目の『烏に単は似合わない』だった。読んでいた本の近くにあり、表紙に惹かれて手に取ったのがきっかけだった。展開が読めないのと世界観のおもしろさにどんどんのめり込み、気づけばシリーズすべてを集め、今では10冊目を手にしているが、今後の展開は読めないでいる。

今作は前作の『楽園の烏』では描かれなかった山内側のお話が描かれている。雪哉が博陸侯雪斎になるまでの経緯を知ることができた。個人的にこのシリーズにおいて奈月彦は最後まで生存している重要人物だと思っていた。今まで色々な視点で描かれてきたが、このシリーズにおいての鍵となるのは雪哉なのだ。『烏は主を選ばない』で雪哉に大きな影響を与えた奈月彦がまたしても雪哉に違う影響を与えた。『烏は主を選ばない』というタイトルに疑問を抱いていたが納得した。不知火の見える断崖で雪哉は気づかないうちに奈月彦を選ばなかった。いや、上司の理念に共感して忠誠を誓ったのに、上司は個人として見てほしかったは幼稚すぎないか。浜木綿も良い印象だったのに愚かさというか人間らしさが出てきて、個人的に失望を感じずにはいられない。作者様の描く人物は綺麗な部分も汚い部分もあり、すべてが意味あるものとして描かれていて見やすい。
闇堕ち必須だった今作で一番の悲しみは明留の死。最後まで良い人だった。茂丸といい、どうして良い人ばかりが亡くなってしまうのか。本当に先が読めない。このシリーズの終着点はどこなのか。毎度思うが次が待ちきれない。

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