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【2019年版】元金融営業マンが語るIT営業マンのレベルの低さとその対処方法

きっかけ

私はIT業界に入る前は営業職をやっていました。
過去に営業したものはプロパンガスの契約、マイライン契約、コピー機やファックスなどのOA機器、金融商品などです。
売ることができなければ将来どんなビジネスに携わったとしてもお金を稼ぐことはできないと考えていたので最初の職種は営業マンを選びました。
その後、24歳でIT業界に転職してきて10年ほど経ちますが営業マンのレベルが低すぎて愕然としました。この記事はなぜレベルが低いのかを明らかにするのと共に、その対処を紹介したいと思います。
該当しない営業マンにとっては価値のない記事です。


営業として勉強する=知識を身につける…のはずが…

私はプロパンガスの営業マンをやっていた時にはガス工場に見学させてもらったり、販売会社の内部研修資料をお借りしたり、周辺機器であるガス器具についての知識もつけるためガス器具メーカーさんの資料をお借りして勉強していました。
マイライン、OA機器、金融商品についても同じように勉強し、知識として身に付けられるものは何でも学べということを覚えました。
それでも先輩や上司から「もっと勉強しろ」と常に怒られていたと思います。帰宅する前に同僚と一緒にファミレスや喫茶店で勉強していたのは今は良い思い出です。

一方でIT業界に10年ほど在籍していますが、営業職がITの技術について勉強しているところに遭遇することは非常に稀で、AWSサミットのような大きなカンファレンスでもスーツ姿で寝ているのを目撃すると何で来たんだろうと疑問に思います。
大きな企業は内部研修を行なっていると思いますが、現場で出会っても本当にITの営業か?と疑ってしまうくらいに知識がありません。
理由は簡単かつ明確で彼らは勉強をしないから知識がないのです。


ITの営業マンが勉強しない理由4選

1. 商品のことを知らず、商品を触らない(個人に関する問題)

私がOA機器の営業だった頃にコピー機やファックス機のエンジニアさんから「自分の売ってるものくらいは知識をつけろ」とよく怒られていました。
故障したコピー機の前でエンジニアさんがお客様に「これはもう買い換えた方が良いです。理由は〜」と説明していると、ほぼ100%に近い確率で買い換えのご契約がいただけました。
これに憧れた私は自分でも機械内部の壊れてるところを発見できるようにエンジニアさんに教わりながら知識を身につけて営業してみたところ、ほぼ100%に近い確率でご契約いただけました。
OA機器のエンジニアさん達からは「俺らが営業すればお前たちなんか要らないんだ」と、冗談であって欲しい叱咤激励をたくさん頂いてきました。

IT業界での営業はエンジニアを連れ回して、お客様と引き合わせることが大半で営業自身がシステムを触ったり、手を動かすことはほぼありません。
昔と違いパソコンはコピー機のように特殊な機械ではなくなったはずなのに、なぜ目の前にあるのに手を動かして学ぼうとしないのか私は未だに疑問なのです。
我々が作ったシステムに対して勝手に作業されても困ることはあるのですが、軽微なバグを修正したことのある営業は少数派でしょう。私がOAの営業だった時はコピー機やFAXの簡単な掃除や部品交換程度なら行なっていました(もちろんエンジニアさんに許可を貰ってです)
経験上、営業が自分から勉強している姿を見ないので学ぶことをしていないのだと思います。
git使いまくってる営業に出会ったらこの考えが変わるのかもしれませんが。

2. 市場の需要と供給が逆転している(環境に関する問題)

日本のIT業界は国内の他産業と違って需要に対して供給が追いついてません。現在は市場全体でエンジニアが不足しているので、営業をしなくてもエンジニア派遣などのサービスが売れてしまうのです。
結果として営業スキルが評価されるのではなく、契約書類を作成できる事務能力や、お客様のスケジュールを補助できる秘書能力の方が評価されてしまうのです。

プロパンガスや金融商品を売っていた時にお客様の要望やレビューを商品開発部にフィードバックすると、会社は新しい商品やサービスに力が入りました。お客様のご要望にはかなり無茶も含まれることも多いのですが、社内で上申し、調整をしてお客様のご要望を叶えることができた時の「できると思わなかった、ありがとう」という言葉の価値は他のものに変えることはできません。

私の営業スキルはお客様のご要望を引き出すことに特化していったと思います。私よりも優秀な人は何人もいましたので「あの人のやり方は頭いいな、今度真似してみよう」と他の人のスキルを身につけようと努力してたことは何度もあります。
現在のIT市場はお客様のご要望を引き出すことをしなくても「(良い)エンジニアいない?」ということが明確になっていますので、正直スキルが伸びにくいです。
営業しなくても売れてしまうのですから学習する機会がありません。

3. 分業が招く悲劇(チームに関する問題)

OAや金融と違いIT業界はエンジニアが営業することは稀です。
セールスエンジニアという職種もあるにはあるのですが、これだけ早い技術更新の時代ですから、営業しながら技術をキャッチアップしていくことはかなりのヒューマンスキルに依存してしまいます。

こうなると負荷分散を考えて組織やチームとしては営業とエンジニアリングを分業をすることになりますが、これが多くの悲劇を生み出すことになる要因のひとつとなっています。
お客様と常に接することが少ないエンジニアは営業=お客様のご意見という構図を作り出してしまうのです。これでは正しいお客様の姿を見ることができません。

「エンジニアリング組織論への招待」によるとエンジニアリングは実現の科学ですから、正しくない情報により実現することは大変難しいこととなってしまいます。
営業がお客様の情報を常に正しく、迅速なスピードで届ける情報伝達機能を有さなければこの分業には限界があるのです。
たいていの問題はお客様が飲み込むか、エンジニアがなんとかしているので営業や会社組織で構造上の欠陥に気づくことがないのです。
営業がこの問題に気づくことも稀なので学習することは無いと言っても過言ではありません。

4. 使ってはいけない言葉を多用する(個人の問題)

仕掛かり中の案件がうまくいかなかったときに、他社の営業さんからよくこんな言葉を聞きます。

「お客様のご都合により…」
「お客様のご判断で…」

「お客様のせいにするな」と思います。
なぜお客様がそう考えるに至ったのか?なぜお客様がそう思われたのか?なぜお客様が?と考えれば思考に終わりがありませんが、はっきりと申し上げるとこんな営業は絶対にダメです。
自分たちの商品のためにもなりませんし、お客様への価値の提示もできず、己で振り返ることもしない。
お付き合いを続けても1円の得もしませんので、弊社ではさっさとブラックリストに入れて出禁です。このような営業に出会ったら時間の無駄だと判断して、はっきりとNOを突きつけてさっさと離れましょう。

各社の経営者の方々についてはこんな営業が会社の看板背負って出歩いてることに危機感を持たないことが私には不思議でなりません。
こんな営業は反省することや振り返りをすることがありませんので学習どころか成長することがありません。業界にとっては時間とお金の無駄なので邪魔です。


問題に対する対処法3選

1. エンジニアが営業スキルを身につける

シンプルに効果的なのがこれです。OA機器のエンジニアさん達が言ってた通りです。エンジニアが営業すれば営業職が不要になります。
エンジニアの方々は営業スキルを身につけましょう。
そうすることで今の仕事が楽になったり、収入や報酬が上がることが多くなります。
技術を売るということは労働集約型になりやすいです、製品やサービスを売ることができるよう労働をシフトチェンジしていきましょう。

2. 営業にエンジニアリングを学ばせる

自分が売ってる商品のことを知らないのはダメです。買う側に勉強させる前に売る側が勉強してください。
また他の営業はほぼ勉強していないと言っても過言ではありませんので、ちょっと勉強するだけで圧倒的にデキる営業と思われる効果はあります。
最近はスクールが乱立してるし、オンラインの学習サービスもいくらでもありますのでお金払ってでも教えてもらってください。

なぜサーバが動くのか、TCP/IPプロトコルやWEBサービスを支える技術、各開発言語の特徴と開発環境、gitの使い方、AWSとAzureの違いくらいはIT業界のマナー研修にしても良いくらいです。ただし、この対処法は過去実績からして効果的ではないことが証明されてしまっています。期待値は低くしましょう。

3. 経営者は自社の営業と一緒にお客様のところや開発現場に行く

何がダメなのか、何をしたら良いのかは現場にしか答えはありません。
自社の会議室でいくら吠えても、飲み会の席で騒いでも事実を知らなければ対処はできません。
今すぐ自分の会社の営業がどんな営業をしているのかを見に行きましょう。
問題が発生した時にしか対応しないのはマネジメントではありません。
あなた達がサボるツケを関係者にバラまかないようにしてください。
また自社の営業マンへの教育ですが、これは他産業の営業マンにご指導をお願いしましょう。同じIT業界から営業連れてきても学びが少ないことの方が多いと思います。


まとめ

私は24歳からIT業界に身を投じ、中小SIerで会社員、個人事業主で独立、法人成りで会社経営と様々な立場でIT業界に触れてきましたが、営業弱すぎ問題は国内IT産業にとって税制度と同じくらい早急かつ効果的に対応が必要だと思います。

自分が営業から育ってきたからかもしれませんが、低レベルの営業にお金を払わないといけないということが非常に苦痛です。よく中間搾取が話題になる業界ではありますが、この話はそんな構造上のことではなくもっと低レベルな話だと思います。

会社を営むにあたって営業は必要不可欠な行為であり、営業が強ければ会社は安定します。経営者は自社の技術力を嘆くよりも前にお客様が直接対面する自社の営業にこそ力を入れてください。事実を知って改善することや商品・サービスの見直しができるので無駄なことがありません。

他人を変えることは非常に難しいため、エンジニアは自衛のために営業スキルを身につけましょう。営業はどんな商売にでも必ず必要なことですし、うまく営業スキルを身につけると金銭面で困ることが少なくなります。

長くなってしまったので営業についてどんなスキルを身につけたら良いのかは別途記事を書いてみようと思います。
直接聞いてみたいという方はぜひ毎週土曜日に開催しているTokyoUppersBoostにいらしてください。


2022年3月追記

続編その1として「経営者」観点からの記事を書きました

続編その2「IT営業として身に着け推奨スキル」を書く予定です

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