中国史、漢までで諦める説。ややこしい中国史を現代史まで進める方法
イントロ モチベーション
中国史は面白い。
でも、問題があります。
「中国、三千年の歴史♫」とあるとおり、その歴史は日本とは比較にならないほどに長いです。その長さたるや、殷、周、秦、漢、ここまででお腹いっぱいになってしまいます。イタリア史でも同様に、ローマ帝国史だけで「ごちそうさま」になりますよね。とくに周~春秋・戦国時代は、歴史事実に加えて、諸子百家の思想が出てくるため、読むべき本がこの時代だけでも膨大になります。それぞれが面白いのが、重ねて悩ましいです。たとえば、
この2冊は、比較的新しい学術研究が反映されており、古めの中国史で勉強された方は必読です。殷(商) 紂王で知られる「酒池肉林」は史実ではないだろうとされています。司馬遷「史記」による歴史観が、現代の発掘調査により、いくつか覆されているようです。このようなRe-installすべき事項がこの2冊で取り上げられています。
この2冊の引き続きで、次もあります。これも良書なんですよね。
宮城谷昌光さんの著書は多くが周~春秋・戦国時代です。
「太公望」「重耳」「孟嘗君」などなど。
といった感じです。諸子百家を入れなくとも、このように読みたい本が重なっていきます。
中国思想史は YouTube 陽明書院さん がおすすめです。
※ これについては、あらためて記事を書きます。
そこで、わたしからの提案
中国史、ひとまず一周しませんか?
個々に興味があることに触れていくと、「木を見て森を見ず」状態なってしまいます。森だけをまずは見ましょう。
まずは、マンガで。
をイッキ読みします。この記事の読者さんは、社会人かと思われます。「大人なのに漫画で歴史?」という方、侮るなかれ。この「マンガ 中国の歴史」で現代中国までたどり着けます。それだけで大きな成果ではありませんか。ただ、マンガとはいえ、「キングダム」や「蒼天航路」のような少年マンガ的な熱さはなく、ぎりぎり読めるだけの面白さ、という点にご注意ください。繰り返しますが、まずは森を見ます。
次に通史
深堀りしない程度に通史に入っていきます。
ここで登場するのが岡本隆司先生です。多くの本を書かれており、どれを選ぶが迷うはずです。いっそ大人買いしてみてください。それぞれ本は、趣旨が異なるので、3冊とも読んでも損をしません。
読むオススメ順です。
民族、宗教、文化、国民性といった"中国のお国柄"視点から通史を描いています。なぜそのような歴史になったのか、背景・原因がわかりやすく、俯瞰的な中国史観を育むことができます。
同じく「教養として」シリーズの福井憲彦『教養としての「フランス史」の読み方』(2019)は、フランス史の本として珠玉の出来です。福井憲彦「歴史学入門 新版 (岩波テキストブックス)」(2019)のエッセンスが盛り込まれています。各国史でフランス編を読んでも腑に落ちない点が、この本で一掃されました。
史実を歴史順に書き連ねる、いわゆるよくある通史です。この本は、岡本隆司先生の著作ではなく、先生は監修を担当されています。ライターさん(奥付に銘記あり)が書かれています。比較的柔らかな文章で、読みやすく、わかりやすいです。大学入試対策としても使える程度に深い内容です。
「もういちど読む 山川 世界史 アジア編」(2022)もありです。こちらは、いかにも山川の教科書的な記述です。「詳説世界史研究」を再編集・分冊化した本です。中国史はおそらく岸本美緒先生が担当されたのではないでしょうか。中国史だけをピックアップした、岸本先生「中国の歴史」(ちくま学芸文庫,2015)もあります。これら2冊は、少し固めの文章です。
世界システム論的な視点で書かれています。「教養としての「中国史」の読み方」以上に、合理的に"歴史のなぜ"に答えてくれる内容です。この本を読めば、自然・経済・地政学といった総合的な視点から中国史を捉えられるようになります。
世界システム論とは、ウォーラーステイン(Wikipedia)が唱えた「近代の歴史は、世界の諸地域が世界的な経済分業システムとして関連しあいながら成立していった」という説です。いまでは、世界史の主流の考え方になっています。
最後に
もっと書きたい、のですが、今回はこの辺りで。
その先は。
この記事で挙げた本を終えられた方は、宮崎市定先生の「中国史,岩波文庫,上 下」「大唐帝国-中国の中世 (中公文庫プレミアム)」など著作に進むのもあり、全集モノの中国史シリーズに挑むのもあり、木を見るそれぞれの各論に進むのもありです。
中国歴史シリーズとして、お手軽なのは以下の新書・文庫シリーズです。
もう一つ。
中国史を学ぶと同時に、こちらの小説を読まれるのもいいかと思います。近代中国の荒波を中国の方がどのように生きてきたのかが描かれています。小説として圧巻の出来でもあり、「三体」シリーズでも感じた、今後は中国が文化面で世界を席捲していくのだろう兆しが、そこに厳然とあります。
見出し画像のネタを、ここでやっと回収できました。
この小説での舞台を映像で見たい方は、次の動画を強くオススメします。お金(220円)を払っても十分にもとが取れます。90分と長丁場なドキュメンタリですが、本では得られない、中国の近代~現代のリアルを見ることができます。NHKに抵抗がない方はどうぞ。
世界史の勉強法をこちらにも書きました。加えて参考にいただければと思います。こちらの記事では問題集をピックアップしています。
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