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[大学]物理の人でも役に立つ化学の教科書,熱力学,量子力学,群論ヘルプな方向け

イントロ モチベーション

わたしは物理学科出身です。
物理・数学がいまでも大好きです。
大型書店にいけば、数学と物理の書棚に寄ってしまいます。

その"数学と物理"の隣には、化学コーナーがあります。
最近まで、この隣接する化学コーナーへ行ったことがありませんでした。

というのも、化学が嫌いでした。

もともと、学生時期は化学が苦手でしたし、興味を持てませんでした。社会人になって、学び直しをしてからは、「化学もありだな」と考えるようになりました。むしろ、いまでは面白いと感じます。
※ 後日記事を書く予定です。

こんな、"物理と数学"ざんまいのわたしですが、
化学もみておけばよかった教科書をセレクトしてみます

というのも、物理のわたしからみて、使える化学の教科書はたくさんあるのです。失礼な言い方申し訳ありません。化学の人は、化学というメインの専攻があるわけですし、"物理と数学"にそれほど注力できる余裕はありません。そのため、化学のための"物理と数学"をちょうどいい塩梅でつまみ食いしているんです。このつまみ食いが、意外に"迷える物理学徒"にも美味しいのです。

量子化学

「量子力学」あらため量子化学です。量子化学は、物理化学の1分野として扱われることがあります。量子化学とは、辞書的に述べれば、次のとおりです。

量子力学の諸原理を化学の諸問題に適用し、原子と電子の振る舞いから分子構造や物性あるいは反応性を理論的に説明づける学問分野である

Wikipedia「量子化学」

物理学の言葉でいえば、

  • 中心力場の問題(水素原子モデル)

  • ハートリー・フォック近似

に重点をおいた量子力学です。
物理の方で、このどちらも苦手にしている人は多いのではないでしょうか。

「だって、計算が面倒なんだもの」

ここで、化学の教科書が使えます。

物理の教科書でも、丁寧な本は多くあります。ただ、化学はその丁寧さが、物理とは比べ物になりません。もともと、化学専攻では、大学で数学に多く時間を割いていません。その状況で、量子力学の中でも、計算が面倒な分野を扱うのですから、丁寧に記述するしかありません。この本は、ホント丁寧です。

量子化学の有効利用法は、これだけではありません。

分子軌道法があります。

物理学では、問題を解く、方法論とその数理に焦点をあてて、実世界(現象)への適用をおろそかにしがちです。(というか、忘れているだけ?)
化学では、量子力学的問題を、原子や分子に適用させて、現象の理解へと発展させています。

を読んでいると、特に後半から、

「せっかく物理で原子レベルを解析できるようになっていたのに、まったくその問題を考えていませんでした。」

と感じると思います。一読をオススメします。
固体物理学への理解も深まります。

化学は、理論物理学以上に分子構造を決定する手法を進化させてきました。

物理化学

物理の人からいうと、熱力学、統計力学、量子力学を化学向けに必要な所だけまとめた分野です。

繰り返しますが、化学専攻では、大学で数学に多く時間を割いていません。物理化学には、物理の人にとって、美味しい箇所が多くあります。

化学熱力学

熱力学の本といえば、日本では2冊、ここで挙げるまでもない有名な本があります。物理の熱力学では、公理性が重視され、理論を数理的に丁寧に構築していきます。この側面では、実用的ではありません。ところが、化学熱力学はかなり実用的です。早めにエンタルピーや自由エネルギーに進み、相平衡や化学ポテンシャルと、化学で取り扱いたい問題へと進みます。物理の人からみると化学熱力学は「熱力学」ダイジェストなのです。

物理の人で、熱力学が何をモチベーションとしているのか迷った時に、この本は助けになるはずです。
物理の人でも面白い化学熱力学の本は多くあります。いずれも薄い本ですので、副読本として使えます。

物理化学

物理化学は、化学で使う物理をまとめた分野でした。物理化学では、全般的に、物理学目線では入っていなかった・忘れていた側面に注目されており、物理の人にとっては、とても新鮮に感じるはずです。

物理化学でしっかり書かれている本は、翻訳の物理化学の本になってしまいます。その翻訳系物理化学の本、非常にぶ厚いです。その分、扱われている項目は多く、量子化学や化学熱力学も含まれています。

上級とされるアトキンス(Wikipedia)の物理化学です。アトキンス先生は、物理学者とも思えなくありませんが、ほとんど物理な内容です。物理の人からすると、比較的丁寧な論理展開がされており、物理学書としても示唆を受ける本です。アトキンス先生はつぎのような読み物も書かれています。

「アトキンス物理化学」で発生した物理化学難民の救いの書、マッカーリ

「アトキンス物理化学」は、使用する数学の説明がなされていません。「マッカーリ物理化学」では数学の準備を整えて、各論に入っていきます。

わたしの好みは「アトキンス物理化学」です。

なお、

こちらは「アトキンス物理化学」の要約版です。まとめすぎで、端折りすぎて、理解しにくいです。
※ 化学の専門書は、要約版もあり、また、それぞれが多く版がでており、分かりにくいんですよね。

群論

化学でも群論を使います。分子構造は対称操作によって分類ができます。分子は現象論的には、さまざまな角度で存在しており、回転や鏡像などにより、同一視できるかを検討しなければなりません。

群論に苦手意識を持っている方には、この本は参考になるはずです。並進操作のない点群が主になりますが、群の表現論まで扱われています。学生のときに、この本をやっておけばと、この本の存在に気付かなかったことを後悔しています。

最後に

これでシリーズのいったん終了です。
途中で分けるのが難しく、長めの記事になってしまいました。
何か思い出しましたら、また、記事を書きます。


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