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目の前の言葉と向き合う〜中学校ABD2023その①

今年も始まっています、中学校でのABD授業。
今年も総合学習の枠をお借りして、全9回の授業を予定し、異学年の16名の生徒と一緒にABDを行っています。夏休みを迎えた現在、授業としては4回を終えて、前半が終了といったところです。

今回は初回から第2回までのレポート。今回も経験者はほんの少しいるものの、ほとんどが初めてのABD。最初の慣れない様子から、少しご紹介したいと思います。
ABDをご存知ない方は、こちらのページをご覧ください。


はじめてのABD

初回の授業は自己紹介等で終わってしまうので、いつも実際にABDをやるのは第2回からです。今年のスタート、最初の本は『冒険の書』でした。

なぜこの本になったかというと、いつも初回授業分の本は事前に決めていくのですが、私が当日までイマイチ決め切れなかったのが発端です。
初回の授業でカバンに入っていた本を、むしろこれでいいのでは・・・?と思い、生徒たちに提案してみたところ、かなり興味がありそうな反応が返ってきたので、じゃあやってみよう、と決めました。

とにかく書く!コ・サマライズ

最初は「本を読んで内容を要約する」というコ・サマライズから開始します。
実際のところこちらの本は、368ページもある大人向けの本。語るように書かれた読み口とはいえ、出てくる概念や歴史的背景、カタカナ言葉などは、正直、高校生以上のレベルかと思います。
このため一度で全部読むのではなく、一人10ページ前後で、読める範囲でまとめてもらいました。それでも結構、生徒たちには難しかったに違いないと思います。

当初は20分の予定が、時間をちょっとずつ延長することに。初回ということもあってみんな気合が入っており、できるだけたくさんの情報を落とし込もうと、B5サイズの用紙にたくさんの文章を書いていました。

毎回、ABDの流れを説明するのに使っているイラスト。

とにかく喋る!リレープレゼン

要約が終わったら、次は読んだ内容を発表してもらう「リレー・プレゼン」。
基本的に読んだ段階では前後の脈絡がわからず、どうプレゼンしていいかも難しいところがあります。

昨年度読んだ「あなたを閉じ込める『ずるい言葉』」なんかは、章ごとに内容が完結していたので、ある程度文脈がわからなくても説明しやすい本でした。しかし今回は、前の章と内容や文脈が繋がっている。前の章で紹介された「難しい言葉」は、次の章では改めて詳しく解説されない。
しかも、わからないところを「飛ばす」という行為もかなり高度な技術です。

もちろん、他人の発表を聞いて、自分の発表に関連づけられた子もいました。しかし、基本的には発表の時点では、わからないのが普通です。
それでも、精一杯自分の描いたところを紹介すると、分かる範囲でも内容を受け取って、みんなのリアクションがちょっと返ってきます。発表後、気になったところ、共感したところにシールをつけてもらうと、結構たくさんのシールが全体的に貼られ、どう内容を受け取ったのかがおぼろげにわかってきました。

第2回の写真を撮り忘れ、こちらは第3回の授業のもの。発表後に、興味のあるところに丸シールを貼ってもらいました。

で、どうだった?ダイアローグ

正直今回は、私が選んだ本がちょっと難しかった。みんなの様子を見ていると、一部理解できなくてモヤモヤした箇所もあったように思います。
ここにきて、本を読んで感じたことを話してもらう「ダイアローグ」のフェーズがきました。
いつもは、事前に用意した問いに沿ってグループごとに対話してもらいます。今回も元々は「納得できたところと、できなかったところ」を聞こうとしていました。でも、どこがわからないかを説明するのも、結構大変なことです。
このためこの日は問いを変更し「本の内容でどこがわかったか、共感できたか」に絞ってふせんに書いてもらいました。

すると、一枚のふせんへびっしり感想を書く子が多数。とにかく、想いが強い。もともと「冒険の書」のテーマが「なぜ勉強するのか、なぜ学校へ行くのか」といった内容だったためか、本の内容への関心の高さが伺えました。
しかし、コ・サマライズで時間が押してしまったので、ダイアローグに使える時間が減ってしまい、たくさん書いてもらった彼らの学校への思いを全部受け止める時間が足りないという結果に…。これは、本当にファシリテーターの設計ミスでした。生徒のみんなごめんなさい。

いろいろ大変だった、でも・・・

改めて思ったのは、本を読むことの難しさはページ数だけじゃない、ということ。書かれている概念、それを読むタイミングにも左右される。今回の本は、とても1回じゃ「分かる」というレベルには達せなかった。
それは本をどのように読むか設計しきれなかった私の反省でした。

その中でも、達成できたことはありました。

今回は、個人の中に浮かんだ感想に焦点を当てる練習ができた。
内容が全部わかんなくてOK。全部書ききれなくて当然。そもそも、今回は1冊読みきってない。一度で内容を全部把握することがこのABDの目的ではない。
そういった「完璧」を一旦脇に置いて考えると、それでも「読んでどう思ったか?」という感想が浮かんできました。その点に関して、みんな一生懸命取り組んだおかげで、かなり「濃い」感想が出てきたと思います。それが、一人一人がちゃんと本に向き合った証拠でした。

で、この授業の後、現時点でさらに2回授業をやっているわけですが。
だんだんと授業をしているうちに、今年の子どもたちの特性がわかってきました。

その2へ続きます↓ (2023.08.05更新)

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