見出し画像

Web制作会社の人材採用について、離職率30%を経て、10年ぶりにアップデートした考え。

会社を立ち上げて19年。これまで数え切れないほどの求職者に会い、リクルート活動を続けてきました。何人採用して、何人辞めていったのか、と数えるのは少し怖いですが、今のスタッフ数は90名です。

人材採用を取り巻く環境として、WEB制作現場のマネージメント層の世代も30代後半から40代、20代とのジェネレーションギャップなどを感じてる方も多くいると思います。

私の経験からいうと、30代後半より上の世代は、量をこなすことでスキルを磨き、質のよいものを生み出すことができた世代ですが、今はそれができない時代です。リクルート活動では、上の世代と同じ市場で戦える若い世代をどう獲得していくかが重要になっています。

また社内においても、将来のある20代のスタッフが順調にスキルを伸ばしていけるように、人材育成計画をきちんと立てなければなりません。リモートワークなどで働く環境が大きく変わっているので、密にコミュニケーションを取れるような仕組みを整える必要もあります。

採用に関わる方なら皆さん同じように、人材獲得や採用方針、人材育成についての悩みを抱えていると思います。そこで今回はWeb制作会社の人材採用について書きます。

・・・

1. コロナ以前、“王道”の採用活動で感じていた違和感

昨今はWeb制作会社だけではなくどこの業界でも人材難だと思います。厳しい状況を打破するため、人材獲得に大きなコストをかけてる会社は多いと思います。

弊社では長らく大手求人媒体に掲載させていただいて、リクルート活動をしてきました。

大手求人媒体を利用した採用活動では、条件が第一です。求職者に「他社と比べてどうなのか」という相対評価で選ばれる必要があります。応募者数を増やすには、いかに給与が高くて労働時間が短く、働きやすい環境かということを魅力的にアピールできるか、そして、上位に表示されるために費用が高い枠を購入して、いかに母集団を集めるかが大事でした。

そうして、応募いただいた方の経歴やスキルを見て書類選考。面接では会社の方向性や考え方、評価基準などをお話しして、みたいな流れで、王道の採用活動をずっと行ってきました。

求人媒体にかかる費用だけで考えても獲得コストは80~90万程度。頑張って採用しても3割程度は1年以内に退職・・・・・・。ここ3年ぐらいは「この採用でいいのかな?」と感じることが増え、年々費用対効果が悪くなっていましたが、「やるしかない」と続けてました。

それが、コロナで大きく変わったのです。

2. コロナ渦に起きた人材流出の危機で、大切な「気づき」を得る

テンプレート – 20

コロナによる社会的・経済的影響は深刻なものです。
弊社でもこの2年のうちに、いろんなところにたまっていた歪みが露呈し、たくさんの社員が離職する事態になりました。一気にしわ寄せが来たような感じで、2021年3、4、5月ぐらいの離職率は脅威の30%。その結果、クライアントからお叱りを受けることも多くありました。
エムハンド始まって以来の危機で、まったく想像もしていなかったことでした。

この緊急事態を人や社会のせいにすることもできたかもしれません。何事もなかったかのように、「次、頑張ろう」と流すこともできたかもしれませんが、やはり経営者としては見過ごすことはできませんでした。「何かを根本的に変えないとまた同じようなことが起きるんじゃないか」と強い危機感を覚え、真剣にこの有事に向き合いました。

そして、気づいたのです。たいして条件も待遇もよくないのに、表面的なことだけアピールして採用するのは辞めようと。

弊社が求めるのは、同じ目線、同じ熱量で仕事できる人、会社の仕組みに共感してもらえる人、クライアントワークが好きな人です。言葉にしたら当たり前ですが、これがマストの要素であるという、大切な「気づき」を得ることができました。それから、今頑張ってくれているスタッフに対するありがたみを改めて感じることができました。

3. 思い立ったが吉日。採用方針・社内体制を見直して即実行

テンプレート – 21

気づきを得たらあとはスピードで勝負です。ここ数年ギモンに感じていた採用方法などを見直し、弊社の実態に合っていないところを抽出して、どんどん方針を変えていきました。以前noteに書いた「ビジョン・ミッション・バリュー」も現場で活かせる内容に策定。リクルートサイトをはじめ、コーポレートサイト、サービスサイトも、すべてリニューアルしWeb制作に対するスタンスを明確にしました。

同時に、社内体制も見直して一つひとつ整備していきました。リモート時代の会社組織でなにが大切かを考え、終礼や情報の伝達方法、制作進行のルールを整えるなど、社内の「コミュニケーション設計」も行いました。

多様性の時代で、同じ会社の中にも世代の異なるスタッフが混在します。それぞれ考え方も価値観も違うので、自由と尊重はあるべきです。ただ100人近い人が一緒に仕事をするわけですから、同じ制作物に対して、温度差があってはいけません。社歴の長い社員も新入社員も、皆が同じゴールを見て突き進むには、基本ルールを作っておくことが不可欠です。

このような、採用方針の転換や社内ルールを策定したことによる成果は、確実に現れてきていると思っています。

4. 終わりに

今想えば、この10年間、採用に対する考えをバージョンアップできてなかったと強く反省しています。

Web制作会社なのだから、過去の実績(制作物)を見せるだけで会社の輪郭が求職者に伝わっているはずだと勘違いしていました。対クライアントの場合は、制作物を見せて「いくらでこれ作ってます」と伝えれば話が進み、できる・できないの判断基準として活用できていました。ただ、採用ではそうはいきません。

採用で重要なことは、給与などの条件的なこと以上に、制作に対する想いや姿勢のような価値観、エムハンドという会社の輪郭を明確に伝えないと、共感して「この会社で働きたい」と志望してはもらえません。今の時代それができないと、とくにWeb業界は先が無いのではないかと思ってます。

経営者としてスタッフの離職は非常にツライ出来事ですが、きちんと向き合って改善することで、大きな気づきを得ることができます。弊社も今回の経験を経て、Web制作会社としての今後10年の基盤ができたと思ってます。




▼前回の記事はこちら

▼エムハンドを知る

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?