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商人と海。あと亀とエルフとレールガン #2

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「戻ったぞ。こいつが新しい仲間、カメお(仮)だ」
「ネーミングダッサ! あ、岩塩2ケース追加で」
相変わらず息を吐くように口の悪い奴だ。仕入れを続けるコマい小僧の横に飛び降りると、仕入れリストを頭越しに眺めながら長い耳をビロビロと引っ張ってやる。
「俺は誰だ? 荒野でノビてたお前の命を救ったのは?」
「アイダダー! それ禁止。それと……それを言われたら何も言い返せないじゃない、旦那さん」
その通りだ。

「うーん、この精霊結晶はもう一声負けられないか。その代り量を増やすから」
「そう言われると弱いなあ……装甲板も引き取ってくれるかい」
「いいともいいとも。荷台は大きいからな。……で、それも安くでいいんだよな?」
「廃材だからタダでいいんだが、払ってくれるなら喜んで頂戴するぜ」
「あッ、この野郎廃品押し付けやがったな」
小僧が積荷を運ぶ指示をしている間、俺は馴染みの卸商と最後の詰めを進める。

「ところで、どこまでいくんだい」
「こいつなら”海”を走れるからな、ハインドシティまで行けるよ」
「いくらなんでも遠すぎだろ。今は軍人崩れも多いからあまり街道から離れんほうが良いぞ」
「あー……そうだ。外付けの武装が入り用なんだが、その商いは知らないか? エクステリアなんかも扱ってると、尚良い」
それなら……と指さしたのは街の外縁部沿いに四半周ほど行った一角。確かに精霊騎が居並ぶ様子が遠目に見えている。
「旦那さん、荷積みは完了したよ」
「よし、次はあっちだ」
うーい。と気の抜けた声で応じる小僧を荷台に押し上げ、俺はカメお(仮)を方向転換させ件の商いの方へ向かう。
「相変わらず仲いいねえあんたら」
なんだか不本意な声が聞こえたが、無視することとする。

「おい小僧」
「はい?」
続けて【そうびやフラット】とやらに着いた途端、俺と入れ替わりに操縦席に座り込んだ小僧にそう呼びかけると、システム画面を一心に見つめながら声だけで応じた。
「その席どうだ? 小さいか大きいか」
「んー、ちょうどいいくらいですけど」
「ケツだけはいっちょまえか……サイズM2をくれ。今あるのをガンナー席にやって、これを操縦席に頼む」
「ンなッ!? 何いってんですかヘンタイ! あと少し余裕はあるくらいですけど!」
うっさいぞ。

あとは3型サェル・マシンキャノン……丈夫で強くて安い……とその触媒。虎の子の魔弾・スティッグと、いちいち乗るときに手を貸すのも面倒なので外付けのバー。そのほか諸々を購入。そして、装着。
余裕のある時じゃないととても出す気になれない金額だが、今は有るので出す!
これでようやく出発できる準備が揃った。

「で、名前どうする」
「製造ナンバーはJ-Q-65みたい。だから、ジェイクでどう?」
「じゃ、それで」
キュウン!
ジェイクもそれで良いそうだ。

いざ、お隣のウィンディコロニー。その先も荷があれば、ディアボレアス街道を通ってその次のコクーンシティにでも行こうか。

俺と従業員2人(?)は、街と街の間に広がる茫漠たる砂と岩の荒野……大砂海へと踏み出した。

【続く】

資料費(書籍購入、映像鑑賞、旅費)に使います。