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メンバーのメンタル不調にいち早く気づけるキャリコン+産業保健師の連携パワー

こんにちは。産業保健師の小林智美です。

以前、キャリアコンサルタントの東公成さんがシリーズで書かれたテレワークの記事 ▼▼

【シリーズ】
テレワーク中の会社でキャリア面談をおこなうと?
①メンバー編
②マネジャー編
③報告・改善編

ざっくり振り返ると、これまでとは異なる在宅環境でのマネジメントにストレスを感じている上司が、リーダー職の女性・照森さんにミーティングのたびにキツくあたっている。そんな中、メンバー全員とキャリアコンサルタントのオンライン面談が会社主導でスタートして…といった内容でした。

これを読んだときに私が感じたのは、
「このままでは、照森さんは心身の健康を崩される可能性があるなと」ということでした(もちろん、このお話はフィクションですが)。

産業保健師であれば、そんなリスクを感じたときに、「働く人の健康を守る」という視点と、「健康管理によって生産性を維持する」という視点を持って支援することができます。

ですから会社側は、キャリアコンサルタントから産業保健スタッフへの連携がいつでも取れるような体制を整えておく。
ほかにも、産業医や社会保険労務士、労働安全衛生分野の専門機関など、多様な専門家と会社側がワンストップでつながり、従業員が適切なケアを適切なタイミングで受けられるようにしておくことは、このコロナ禍でますます重要になってきていると考えています。

今回は、上記テレワークシリーズの物語に登場した照森さんが、キャリアコンサルタントと産業保健師の連携のもと、ストレス過多な状況になった際、どのような支援が受られるのかをシミュレーションしてみたいと思います。

キャリア面談ではサポートできないサイン

まず前提条件ですが、ある専門家が従業員のケアにあたる際、その専門領域を超えた知識やスキルが必要と判断すれば、適切な専門家や専門機関と状況を共有し、支援を引き継ぐことができます。

これを「リファー」と言います。

これから登場する保健師の大久保さんも、メザメエンジニアリングでキャリア面談をおこなったキャリアコンサルタントの多聞さんからリファーを受けた。そんな想定で、お話を進めていきます。

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キャリアコンサルタントの多聞さんから引き継ぎを受けた保健師の大久保さんは、照森さんとオンラインで保健師面談を行うことになりました。

時間になって、テレビ会議ツールに入室してきた照森さんは、無造作に束ねただけの髪にノーメイクという姿でした。顔には吹き出物が多く、一見して生気が感じられないのが気になります。

「初めまして。保健師の大久保です。照森さんですか?」とたずねると、
「はいそうです」と小さな声で返事がありました。

大久保さんは、キャリアコンサルタントと同様、保健師にも守秘義務があり、照森さんの同意なしに面談内容を誰かにお話することはないと伝えたうえで面談をはじめました。

「先日、キャリア面談を受けていただいたとき、眠れないし何もしたくない気分だとおっしゃっていたようですが、今はいかがですか?」

そう質問した大久保さんの声に、やはり小さな声で応える照森さんの声。話すスピードも、ゆっくりというよりはノロノロという感じです。

「この前と同じでやっぱり寝つきが悪いです…。あの…最近は、夜中にもよく目が覚めます。そのせいか、朝起きてもずっとだるくて…」

会話の中で保健師の大久保さんは、面談者の照森さんについて次のようなことを把握しました。

*照森さんは8歳と6歳の子どもの母。
*子どもの学校は再開したが、夫もテレワークで家族の誰かしらが一日中家にいる。
*今はベッドに入ってもなかなか眠れない。夜中にもたびたび目が覚め、熟眠感はない。
*仕事では上司に進捗の遅れをたびたび責められストレスを感じている。
*遅れを取り戻すために休日も仕事をしてしまうため、子どもにはゲームや動画ばかりを与えてしまい、罪悪感を感じている。
*仕事が遅れているのにやる気が出せない自分に嫌気がさしている。

ただ、上記のような生活環境以上に大久保さんが気になったのは、照森さんの印象や話し方でした。

「しんどい」「だるい」といった頻繁に出てくるネガティブワードを裏付けるように、照森さんは会話の受け答え自体もときどき要領を得なくなり、話が堂々めぐりになってしまう場面がありました。

*身だしなみが崩れてている
*話がどうどうめぐりになる
*睡眠状態が良くない
*意欲がない、やる気がわかない
*ネガティブな発言が多い

以上のような照森さんにも見られる状態は、うつ症状におちいっている人によく見られます。

保健師という立場上、医師のように診断することはできませんが、照森さんがうつ状態である可能性を踏まえながら、大久保さんは残りの時間の面談を進めまることにしました。

大久保
「照森さん、今の話、ご家族や同僚など、誰かにお話しされましたか?」

照森
「キャリア面談のとき以外は誰にも話していません。キャリアコンサルタントの方と面談したときは、気持ちを吐き出してスッキリできた気がしたのですが、そのうちまたしんどくなってしまって…」

大久保
「誰にも話さず、自分だけで抱えると辛いですよね。誰かに話を聴いてもらうだけでも、スッキリします。気持ちが軽くなると睡眠の質も良くなって、ココロもカラダも楽になりますよね」

照森
「でも今は、眠りたくても眠れないのでどうしたらいいかわからないんです。テレワークになって同僚と話す機会も減ってしまったし、仕事の話を夫にしても…と思いますし」

大久保
「そうだったんですね。それはおつらかったですね」

照森
「実は、心療内科に行こうかとも思ったんですが、新型コロナの感染も怖くて…。睡眠薬を使うのも怖いし…。どうしたらいいんでしょう?」

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大久保さんは、受診を視野に入れる必要はあるものの、現時点では照森さんが受診に消極的なことを踏まえて、下記のような提案をしました。

【提案1】今の心境や体調について夫に相談する
【提案2】受診を希望しないなら、まずできる方法で睡眠を改善する

照森さんは、「病院に行くように言われると思っていたので、ホッとしました」と、この日の面談がはじまってから初めて、少し安心した表情をのぞかせました。

「いきなり病院に行くのは嫌なので、まずはできることをやってみたいと思います…」

そこで大久保さんは、以下のように照森さんに伝えました。

【提案1】今の心境や体調について夫に相談する

夫に仕事の詳細な話をしても、理解は十分には得られないかもしれません。けれど、まずは今のつらい思いを知ってもらうことが大切です。

身近な人に状況を知ってもらえれば気持ちも落ち着きますし、家事や育児が今までと同じようにできない理由を受け入れてもらうことで、協力を仰ぎやすくなります。

体調の変化にも気づいてもらうことができ、受診のタイミングを逃さずに済む確率が高くなります。

【提案2】自分でできる方法で睡眠を改善する

うつ病になる原因のひとつに、「セロトニン」という脳内物質の減少が考えられています。セロトニンは夜暗くなると「メラトニン」という物質になって眠気を引き起こす役割をするため、このメラトニンをきちんと分泌させることも、うつ症状の改善には重要なのです。

大久保さんは、日常生活の中でセロトニンを増やす方法や、メラトニンの分泌をさまたげない方法について、照森さんに具体的に伝えました。

【関連記事】
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外部の専門家のチカラを借りることが、さまざまな問題の早期発見につながります

キャリアコンサルタントからのリファーを受けておこなった保健師面談。

保健師の大久保さんは、今後の状況次第では照森さんに産業医との面談をセッティングしたり、専門機関での受診を勧める必要もでてくるだろうと考え、継続的なフォローを提案してみました。

「照森さん、今日はお話しいただきありがとうございました。ご自身でできるいろいろな方法を、ぜひ試してみてくださいね。
ただ、保健師として、照森さんの状態を心配しています。2週間後くらいに、改めてお時間をちょうだいし、様子をお聞かせ願えませんか?」

照森さんは快諾され、次回の日程を決めて面談は終了しました。

まだ不安を感じるところもありますが、今回はキャリアコンサルタントとの連係プレーによって、照森さんのメンタル不調にタイムリーに対応することができ、本当に良かったと思います。

テレワークの環境下では、相談する人がいなかったり、タイミングがなかったりして、ひとりで悩みを抱えてしまいががちですよすね。そのまま放置していると、悩みやストレスがメンタル不調につながってしまう可能性も高くなります。

違和感を感じることがあればぜひ専門家に相談してほしいですし、企業の経営者や人事担当の方には相談窓口の設置やこうした体制の整備にぜひとも努めていただきたいと思います。

ちなみに、私たちの提供している“mezame”は、はたらく女性の健康とキャリアをサポートするプログラム。
第三者であるキャリアコンサルタントが、同僚や上司には打ち明けにくいメンバーの本音に耳を傾けて組織の現状を明らかにし、必要とあれば産業保健師や産業医と連携することも可能なサービスです。

専門家による従業員サポートの必要性を感じられたら、ぜひ“mezame”にお問い合わせください。

■ 文/小林智美(こばやし・ともみ)
産業保健師、メンタルケア心理士、アンガマネージメントコンサルタント叱り方トレーナー


“mezame”ははたらく女性の健康とキャリアをサポートするプログラムです

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女性特有の体調の周期的な変化、年齢やライフステージごとに変わって行く役割、体調、かかりやすい病気…。ウィメンズヘルスをふまえて“はたらく”を考えれば、女性従業員のパフォーマンスは今以上に向上し、女性自身もなりたい自分、叶えたい人生に近づくことができます。

さんぎょうい株式会社が提供する“mezame”は、専任の産業保健師とキャリアコンサルタント(国家資格)がタッグを組み、健康知識とキャリアプランニングの基礎研修に加え、個別のキャリア面談によるモチベーションアップ、ライフステージ別・職級別の健康とキャリアを考えるセミナー等をおこなうプログラムです。

労働損失が5000億円にも迫ると算出されている月経随伴症状。職場全体がヘルスリテラシーを高め、女性の健康に配慮することで労働生産性もあがり、相互理解が促進されることで離職率の低い職場風土を醸成できます。

女性活躍推進施策、健康経営施策の第一歩としても最適です。経営者のみなさん、人事・HRご担当のみなさん、ぜひ一度、ご相談ください!


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